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わが街の環境マイスター
わが街の環境マイスター
企業経営で培った組織のマネジメント
内田 幸一さん
信州型自然保育認定園「野あそび保育みっけ」園長

内田さんは日本における「森のようちえん」の第一人者。大規模な園舎を持たず、1日の大半を自然の中で過ごす幼児教育を30年以上前から実践してきた。


自然の中で輝く子どもを見て
 

 信州型自然保育認定園「野あそび保育みっけ」があるのは、標高1000mほどの山が市街地を取り囲む長野県飯田市。園舎にしている民家から車を走らせれば、どの方向へ向かっても30分もあれば山にぶつかる。

「子どもたちと森に入るときに動物を見かけることはめったにありませんが、糞や足跡などその痕跡はよく見つけます。飯田市は豊かな自然が残る地域ですが、幼児期には自然に触れる機会や環境はありません。都心に住む人たちのほうがその機会が多いくらいではないでしょうか」

「野あそび保育みっけ」は、もともとは地域のお母さんたちの自主保育団体だった。安定して運営できるよう内田さんが引き継ぎ、2013年から現在のような「森のようちえん」となった。

「森のようちえん」は、1950年代にヨーロッパで始まった自然の中でおこなう幼児教育。「野あそび保育みっけ」へ通う子どもたちも多くの時間を森や林で過ごす。服装は、長袖長ズボンに長靴。基本的に禁止事項はなく気のおもむくままに遊ぶため、全身泥だらけになっている子もいる。

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園長の内田さんは子どもからも保護者からも「うっちゃん」の愛称で呼ばれている

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絵本の読み聞かせをすることもあるが、参加するかどうかは子どもたちの自由だ
 

 内田さんは1983年に長野県飯綱高原に日本で初めての「森のようちえん」を設立した。もともとは写真家志望だったが、学生時代に被写体について学ぶため幼稚園で働いた経験がきっかけとなり、保育者を目指した。

「東京・日野市の幼児教室で保育のサポートをおこなっていたのですが、そこがいまの『森のようちえん』に近いスタイルの幼児教育をしていたんです。多摩の丘陵地帯に毎日散歩に出掛けていました。自然の中には季節の移り変わりがありますから、同じ場所を通っても毎日が新しい発見にあふれています。子どもたちのキラキラする顔をみて、こんな環境をもっとつくっていきたいと思いました」


外国の真似事はしない
 

 幼児教育の面白さに気づいた内田さんは大学でも保育に役立つ科目を履修し、知識を深めていった。実習では一般的な幼稚園に行っていたこともあるそうだが、そこの教育には魅力を感じなかった。子どもを徹底した管理のもとに置くスタイルでは、自主性が育ちにくいと思ったのだという。

 大学卒業後は友人の実家が経営する幼稚園の勤務を経て、自分の理想とする幼稚園の設立へ向けて動いた。コンセプトは「自然×生活×子ども」。ヨーロッパのスタイルを真似するのではなく、地域資源や環境を活かした幼児教育、いまの日本の子どもたちが置かれている状況を踏まえて自然の摂理・秩序を身体で感じ、自然の中での生活を軸にした教育を目指した。

天気が悪い日は園舎の敷地内で過ごす。子どもたちのお気に入りは泥遊び
 

「大きくなってから『自然は大切だ』と頭を使って学習するのと、幼児のうちに『自然は居心地がよくて楽しい』と体感するのとでは、自然に対する感覚が異なります。後者は無意識のうちにも自然を大切にする選択をするようになります」

 

 理屈ではなく感覚的に自然を大切に思う子どもを育てることで、数十年後には環境を大事にする大人が増える。自然と共存するためのサイクルが育つ。


増えてきた「森のようちえん」
 

 内田さんはコンセプトに沿った幼稚園を設立するために、各地を調査した。園児が集まるだけの人口があって、なおかつ自然が厳しすぎず四季の移ろいを感じられる場所――見つけ出した地域が長野県の飯綱高原だった。東京で生まれ育った内田さんには縁もゆかりもない土地だ。

「当時はいまよりも地方が元気でした。自治体が若い人を呼び込むような活動をしている時代ではなかったので、IターンやUターン、移住という言葉もない。町の人からは大変珍しがられました。『東京で悪さでもして、逃げてきたのか』といわれたこともありましたよ」

 

 できるだけ自然に近い環境をつくろうと、園舎は内田さんの手作り。信州に多いカラマツは建材には向かないといわれたが、当時利用価値が低かったので、あえて使うことにした。

 開園してしばらくは「森のようちえん」というものがほとんど知られていなかったが、5年ほどで賛同者が増えてきた。2005年に認可幼稚園になると、内田さんは運営を妻に任せて、その後、拠点を飯田市の「野あそび保育みっけ」に移した。


四季の変化が豊かな飯田市では、夏は川遊び、冬は雪遊びを楽しめる
 

 現在、内田さんは「森のようちえん全国ネットワーク」連盟の理事長を務めている。この10年で「森のようちえん」は増えてきたが、それぞれが手探りで運営しており、保育や運営のノウハウの共有がなされていなかった。ネットワークでは蓄積したノウハウを理論化し、これから開園したいと考えている人にも情報を提供している。毎年定期的に「森のようちえん全国交流フォーラム」を開催し(2015年よりセブン‐イレブン記念財団が支援している)、「森のようちえん」の理解を深める普及啓発をおこなっている。

「いま私が進めているのは、認定こども園での『森のようちえん』の運営です。認定こども園になれば、保育時間が長くなり共働き世帯の子どもたちも受け入れられる。子どもを自然の中で育てたいと考える多くの保護者の手助けができます」

CONTENTS
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コンテンツ
・自然を大切にする人を育てる幼児教育 内田 幸一さん 信州型自然保育認定園「野あそび保育みっけ」 園長
・企業経営で培った組織のマネジメント 秋山 孝二さん 認定NPO法人 北海道市民環境ネットワーク 理事長
・移住者の視点で森の町の課題に挑む 麻生 翼さん NPO法人 森の生活 代表理事
・生ごみの堆肥化で循環社会を創る たいら由以子さん NPO法人 循環生活研究所 理事長
・「地球の消費者」から「地球の生産者」へ 加藤大吾さん NPO法人 都留環境フォーラム 代表理事
・干潟に子供たちの歓声を取り戻す 足利由紀子さん NPO法人 水辺に遊ぶ会 理事長
・日本型の環境教育を求めて 新田章伸さん NPO法人 里山倶楽部 副代表理事
・カメラに託した「水」への熱き思い 豊田直之さん 写真家
・「月に一度は山仕事!」のすすめ 山本 博さん NPO法人 日本森林ボランティア協会 事務局長
・奥能登の昔ながらの暮らしを“再発見” 萩野由紀さん まるやま組主宰
・北海道から広げる自然教育ネットワーク 髙木晴光さん NPO法人 ねおす 理事長
・「森のようちえん」は毎日が冒険 原淳一さん NPO法人 アキハロハスアクション 理事長
・東北に国産材のサイクルを築く 大場隆博さん NPO法人 日本の森バイオマスネットワーク 副理事長
・魚食復活をめざし、本日も全力疾走 上田勝彦さん 魚食復興集団 Re-Fish 代表
・「竹害」との戦いにかけた第二の人生 松原幸孝さん NPO法人 かいろう基山 事務局
・ニッポンバラタナゴの楽園を守る 加納義彦さん NPO法人 ニッポンバラタナゴ高安研究会 代表理事
・雁の里から発信「ふゆみずたんぼ」 岩渕成紀さん NPO法人 田んぼ 理事長
・「夢」は最高のエネルギー 杉浦嘉雄さん 日本文理大学 教授
・宮沢賢治に導かれて山村へ 吉成信夫さん NPO法人 岩手子ども環境研究所 理事長
・「海のゆりかご」再生にかける 工藤孝浩さん 神奈川県水産技術センター 主任研究員
・お金に換えられない価値を知る 澁澤寿一さん NPO法人「樹木・環境ネットワーク協会」理事長
・自然界に学ぶ最先端の技術 仲津英治さん 「地球に謙虚に運動」代表
・豊かな森を人づくりに活かす 萩原喜之さん NPO法人「地域の未来・支援センター」理事長
・自然が先生──生きる力を育てる 広瀬敏通さん NPO法人「日本エコツーリズムセンター」代表理事
・ホタルに託した鎮魂の思い 冨工妙子さん ながさきホタルの会・伊良林小学校ホタルの会 会長
・人とトキのかけはしになる 高野毅さん 生椿(はえつばき)の自然を守る会 会長
・民間の力で都立公園の緑を守る 佐藤留美さん NPO法人 NPO birth 事務局長
・花の湿原を守る肝っ玉かあさん 三膳時子さん 認定NPO法人 霧多布湿原トラスト 理事長
・干潟を拠点に人と自然をつなぐ 立山芳輝さん NPO法人 くすの木自然館 理事長
・子どもたちの冒険に寄り添う 佐々木豊志さん NPO法人 くりこま高原・地球の暮らしと自然教育研究所 理事長
・北海道にシマフクロウを呼び戻す 菅野正巳さん NPO法人 シマフクロウ・エイド
・ふるさと新城をもう一度桜の名所に 松井章泰さん 「100万本の桜」プロジェクト発起人
・1960年代の武蔵野の自然を取り戻す 佐藤方博さん NPO法人 生態工房
・緑ふたたび──三宅島に苗木と元気を! 宗村秀夫さん NPO法人 「園芸アグリセンター」 理事長
・冬の山中湖を彩るキャンドル 渡辺長敬さん NPO法人 富士山自然学校 代表
・年に10万匹のホタルを育てる 坂井弘司さん 旭川市西神楽ホタルの会 事務局長
・築230年の古民家に生きる 時松和宏さん 大分県九重町 農家民宿「おわて」 主人

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