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「自然」に魅せられて 「満天の星に魅せられて」小千田節男
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「一晩でいいから、宇宙の夢をみてもらいたい」。星への思いを語る小千田節男さん
世界一の天文台を自分の手でつくりたい──
子どもの頃の感動をそのままに、夢を追い続けて30年。
身体が不自由な人も、自然をまるごと楽しめるフィールドづくりへ、思いが広がる。

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観測ドーム内部。写真の20cm屈折式望遠鏡のほか、車椅子から星を見上げられる望遠鏡も置かれている。



── 
この「みかわ天文台」をつくるにあたって、用地探しに10年費やされたそうですが、なぜ、どのようにしてこの場所を選ばれたのですか?

小千田 
冬山で寝袋にくるまり、空を見上げて探しました。なぜ冬山かというと木に葉がないため、山おろし、山あがりの風がどのように吹くか見極めやすいからです。天体観測に必要なのは、気流が安定して、星の瞬きが少ないことと光害がないこと。その条件を満たす立地を探し歩いて、ようやくここ三川村に辿りつきました。周囲に高い山があり、冬は4mも雪が積もりますが、星を観るには最高の環境なんです。

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── 
たしかに空気が澄み切っていて、空がとても近くに感じられます。

小千田 
そうでしょう。とくに大気が安定している冬場は、星座がひとつひとつはっきり見えて、まさに降るような星空です。うまくすると、星が流れる「ひゅうん」という音まで聞こえるんですよ。ただ理想の場所は見つかったものの、建設計画は遅々として進みませんでした。土地を買う交渉だけで3年がかり。その後もブルドーザーでの開墾や伐採した木を使う山小屋づくりなど、すべてが手探りでしたから。


── 
それでも昨年の秋、ついに念願の観測ドームが完成しました。

小千田 
私の夢に賛同して手伝ってくれた仲間たちの、努力の結晶ですよ。ドームの入口は車椅子で入れるし、屋根は子どもの力でも開閉できます。身障者も健常者も、大人も子どもも、自然の中でゆっくり星を観測できる、それが私たちの天文台です。4月〜12月には「星見せ会」と名づけた星空観望会を催し、子どもたちに観察方法や望遠鏡の扱い方を指導しています。年間300人ぐらいが参加するんですよ。
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山のほぼ頂上に建つ星の観測ドーム

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木を組み立てた遊び場、通称“トム・
ソーヤーの家”を手づくり中
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山を開き、伐採した木で作った山小屋の室内(上)と、「星見せ会」用の寝袋(下)
── 
実際に、この「みかわ天文台」で星を観た子どもはどんな反応を見せますか?

小千田 
子どもだけでなく、付き添いの大人たちも童心に帰って大喜びですよ。当然「もっと観ていたい」となります。行政や研究機関の施設ではそうもいきませんが、うちは個人天文台だから、時間にしばられない。心ゆくまで、何度でも星を見せてあげることができるんです。以前、身障者の親御さんから電話をいただいたことがありました。ここで星を観て帰ったお子さんが家族を集めて土星の話をしたそうで、「初めて土産話をしてもらった」と泣いていらしたんです。ここに来た子どものなかから、宇宙飛行士や天文学者が生まれたらすばらしいけれど、そうでなくても、一晩でいいから宇宙の夢をみてもらいたい。今後さらにドームを4基増やし、図書館やビオトープなどもつくるつもりです。天体観測を中心に、子どもたちには自然を満喫して遊ぶ楽しさを知ってもらいたいですね。


── 
なぜそこまで星に惹かれるのですか?

小千田 
私は、両親が身障者だったこともあり、小さい頃から独りでいることの多い子どもでした。友だちといえば本、それも天体に関する本でした。星の話を読み、夜空を見上げると、星が心を包んでくれました。その頃、アマチュア天文家の池谷薫さんが彗星を発見したという記事が新聞に載り、私もひと目見たいと、朝3時から父と一緒に待ち構えました。朝焼けの空に赤い尾を引く彗星が現れたとき、私は驚きと感動で、思わず父の足にしがみついていました。そして、自分もいつか彗星を見つけるぞと、老眼鏡のレンズで手製の望遠鏡を作り、観測をはじめたんです。その後、池谷さんや京都大学の宮本正太郎先生にも助言を受ける機会があり、月のクレーターや土星のリングまで見えるようになりました。その感動が、世界一の天文台をつくりたいという夢を膨らませていったのです。
── 
ご苦労も多かったのでは。

小千田 
何をどうすればいいか、最初はまったくわかりませんでしたが、宮本先生のご厚意で、日本では手に入らないレンズを海外で作ってもらえることになりました。しかもその製作を、私の夢に共感してくれた英国の職人が本来の十分の一ほどの費用で請け負ってくれたのです。ただ格安とはいえ、個人にとっては大金ですから、そのレンズ代を稼ぐために、私は会社勤めのほかに、皿洗い、パン屋、喫茶店とほとんど徹夜で働きました。そしてそんな生活を10年ほど続けるかたわら、身体の不自由な子どもたちに星を見せるというボランティアもしていました。たしかに大変でしたが、どの星にも負けない、子どもたちの瞳の輝きにずいぶん励まされましたね。
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4〜12月に行われる「星見せ会」。一所懸命、星を眺める子どもたち

Profile

こせんだ・せつお
1955年新潟県生まれ。87年、会社勤めをしながら新潟・三川村に天文台建設用地を購入。2002年にNPO法人「みかわ天文台」を発足、理事長に。05年天文台完成。ボランティアや有志と共に活動中。

CONTENTS
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コンテンツ
・タカの渡りを追う 久野 公啓(写真家、渡り鳥研究家)
・微生物が創り出す極上ワイン 中村 雅量(奥野田葡萄酒醸造株式会社 代表取締役)
・「海藻の森づくり」で海も人も健康に 佐々木 久雄(NPO法人 環境生態工学研究所理事)
・大学をニホンイシガメの繁殖地に 楠田 哲士(岐阜大学応用生物科学部准教授)
・面白くて、おいしい「キッチン火山実験」 林 信太郎(秋田大学教授、秋田大学附属小学校校長)
・世界で唯一、エビとカニの水族館 森 拓也(すさみ町立エビとカニの水族館館長)
・都会の真ん中に“山”をつくる 田瀬 理夫(造園家、プランタゴ代表)
・一粒万倍 美味しい野菜はタネが違う 野口 勲(野口のタネ/野口種苗研究所代表)
・都市の里山に宿る神々 ケビン・ショート(ナチュラリスト、東京情報大学教授)
・ムササビ先生、今夜も大滑空観察中 岡崎 弘幸(中央大学附属中学校・高等学校教諭)
・保津川下り400年─清流を守る船頭の心意気 森田 孝義(船士)
・小笠原の「希少種を襲うノネコ」引っ越し大作 小松 泰史(獣医師)
・チリモンを探せ! 藤田 吉広(きしわだ自然資料館専門員)
・スズメバチハンター走る! 松丸 雅一(養蜂家)
・東京湾のサンゴを見つめて 竹内 聖一(NPO法人 たてやま・海辺の鑑定団理事長)
・芝とシカのふしぎな関係 片山 一平(京都府立桂高校教諭)
・ドブ池ドブ川奇跡の復活炭博士が行く 小島 昭(群馬工業高等専門学校特命教授)
・「木一本、鰤(ぶり)千本」─豊かな海を育んだ海底湧水の秘密 張 勁(富山大学教授)
・わくわくドキドキ! 夏の夜の生きもの探し 佐々木洋(プロ・ナチュラリスト)
・かわいい変顔 虫目で見つけた! 鈴木海花(フォトエッセイスト)
・癒しの森でいのちを洗う 降矢英成(心療内科医)
・ブナの山が育てた神の魚 杉山秀樹(秋田県立大学客員教授)
・自然と調和する酪農郷 二瓶 昭(酪農家、NPO法人えんの森理事長)
・漁師が見た琵琶湖 戸田直弘(漁師)
・田んぼの恵みはお米だけじゃない 石塚美津夫(NPO法人「食農ネットささかみ」理事長)
・「結」の心を伝えたい 和田利治(屋根葺き技術士)
・多摩川復活の夢 山崎充哲(淡水魚類・魚道研究家)
・モイヤー博士の愛した島 中村宏治(水中カメラマン)
・白神山地が育む奇跡の菌 高橋慶太郎(秋田県総合食品研究センター主席研究員)
・ありがとう、ハチゴロウ 佐竹節夫(コウノトリ湿地ネット代表)
・ヤイロチョウの森の守り人 中村滝男(生態系トラスト協会会長)
・水辺って、こんなに面白い! 井上大輔(福岡県立北九州高等学校教諭)
・地熱染め 色彩の魔術 高橋一行(地熱染色作家)
・里山っ子ばんざい! 宮崎栄樹(木更津社会館保育園園長)
・金沢和傘の伝統を引き継ぐ 間島 円(和傘職人)
・「竹のこころ」を伝えたい ジョン・海山・ネプチューン
・クマのクーちゃん 人工冬眠大作戦! 小宮輝之(上野動物園 園長)
・まつたけ十字軍がゆく 吉村文彦(まつたけ十字軍運動代表)
・氷の匠──冬に育む夏の美味 阿左美哲男(天然氷蔵元)
・日本でただひとりのカエル捕り名人 大内一夫(カエル販売業)
・「村の鍛冶屋」の火を守る 野口廣男(鍛冶職人)
・杉線香づくり100年 駒村道廣(線香職人)
・空師(そらし)──伐って活かす巨木のいのち 熊倉純一
・日本ミツバチに学んだこと 藤原誠太
・満天の星に魅せられて 小千田節男
・ブドウ畑に実る夢 ブルース・ガットラヴ
・タゲリ舞う里を描いて 森上義孝
・ホタル博士、水辺を想う 大場信義
・左官は「風景」を生み出す職人 挟土秀平
・僕は「SATOYAMA」の応援団長 柳生 博
ムツカケ名人に学ぶ──豊穣の海に伝わる神業漁法 岡本忠好
・イチローの バットを作った男 久保田五十一(バットマイスター)

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