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ドイツ研修奮闘記 連載-第4回- 「ドイツの街を見て」

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 日本国内で海外業務や数々の国との国際交流は行ってきましたが、初めての海外へ。しかも観光や視察ではなく研修のため、緊張とどれだけの発見と学びを得られるかワクワクしながらの参加でした。研修中の移動時間と空間の中からドイツの街を見て感じた環境の取組について書いてみました。
日本にあって、ドイツにないもの
 ドイツの町を歩いて気づいた事は自動販売機がないということ。
 煙草の小さな自動販売機はいくつか見ましたが、飲み物の販売機は見つけることが出来ませんでした。海外では販売機は少なく、あっても故障していることが多いとは聞いていましたが、1台もないとは思いませんでした。ドイツではリターナブルが政令で規制されており、使い捨て飲料容器の氾濫は制限されています。そのことが街角にも現れているのですね。
 自動販売機はいつでもどこでも購入できるのでゴミの増加につながり、省エネ体制の下、悪者扱いを受けたりしていますが、震災時に帰宅困難者が水分や暖を取る一助となったとも聞いています。ライフライン切断時に無料で提供する災害対応型自動販売機もありますし、日本においては適正な台数を適切な場所に設置することも必要かと思います。
 自動販売機だけでなくコンビニもありませんでした。そもそもドイツでは“閉店法”という法律により、24時間営業や日曜日の営業が規制されています。(地域によって多少の緩和あり)あえて言うならガソリンスタンドがコンビニ的な役割を担っているとのことですが、数も少なく、日本ほど依存していないそうです。
 もうひとつは側溝です。L字型や浅い溝らしきものはありましたが、日本のような30cm幅の側溝はありませんでした。それもそのはず、ドイツの年間平均降水量は600mm程度。東京の年間平均降水量が1,500mm程度ですから、流れをコントロールしなければいけないほど雨が降らないのです。ドイツでは飲料水は7割が地下水、3割が表流水利用とのことなので、日本とは正反対です(日本は表流水7割、地下水3割)。川の水質浄化の目的が自然環境の復元だと聞きましたが、こういった水利用の背景によるものなのでしょう。
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修復工事中の聖堂
 ドイツは地震がほとんどないため石造りの建築物が残り、ヨーロッパ特有の街並みを形成しています。新しいビルなどは柱が細く、柱というよりは板状であったり。日本の重厚長大な構造物を見慣れていると頼りない感じも受けますが、繊細なフォルムを持つ美しい鋼構造物を多く見かけるのも地震がないからでしょう。
 またドイツではリノベーションが盛んで改修している石造りの建物を何度も見ましたし、マインツ市内の聖堂では修復工事など行っていました。ただし、どの工事現場も足場にカバーがかかっていないので、高所で作業する人が丸見えです。
 見てる方も怖いけれど、作業する人は怖くないのだろうかと信じられない気持ちで見上げたものです。
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リノベーション中の建物
 日本では落下物や作業者の落下防止、防音、塗料等の飛散防止のため法律で工事現場を覆うよう義務付けられており、労働者の安全はもとより、周辺住民の生活環境を保全する対策が取られているのは狭いエリアに密集して住んでいるせいもあるのでしょう。
 少し街を見ただけでも、地震や水害など自然災害と戦い続けている日本から見ればなんと安全な国土だろうとため息が出ます。自然災害の有無というのは街づくりのデザインに影響を与えるものだと実感しました。
 しかし、ドイツでもライン川などの洪水が増加していることが問題になっているそうです。原因のひとつとして蛇行している川をショートカット直線化し、コンクリート護岸で固めたことが挙げられており、現在この蛇行を再生させる大プロジェクトも進行しているとのことでした。
 ゲリラ豪雨のように顕著な気候変動があるかどうか聞きましたが、まだ影響は見られないとのことでした。
トランジットモール
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マインツ駅
 私達が滞在した街・マインツ市の人口は約20万人。日本における同規模の都市としては松江市や甲府市があります。マインツ駅前はトランジットモール化され、鉄道、路面電車、公共車両が乗り入れており、交通網における環境負荷の低減がされていました。
 駅付近だけでなく街中のあちらこちらに自転車専用レーンや駐輪場があり、駅に自転車を入れやすい別入口が設けられ、電車には自転車専用の車両が装備されていたりと自転車での移動がしやすいインフラが整えられていました。
 マインツ駅は一見昔風の駅舎ですが、中には本屋、薬屋、雑貨店、花屋、お弁当屋などがあり、しかも朝早くから開店しているので便利でした。ただしどのお店も日本と同じような小売店ですが、商品を入れる袋はくれませんでした。いわゆるレジ袋というものがないことが徹底されていることを実感しました。
点字ブロック
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マインツ駅構内の点字ブロック
 日本の黄色い存在感のある点字ブロックと違い、ドイツは溝が筋状に加工されています。わずかな違いのようですが、歩いてみれば他の場所との違いは感じ取れますし、この形状の方が車椅子や杖やベビーカー、カートを利用している人もスムーズに歩行できます。ユニバーサルデザインというだけでなく見た目も美しく、何より長期間における破損が少ないのではないでしょうか。
街の中の緑
 道路の幅員が広いこともあり、街路樹は高く緑が多いように感じられました。ホテルの近くにある幹線道路の真ん中は公園になっており、遊具のゾーンやバラ園のゾーンに分けられ、札幌市の大通り公園みたいな感じでした。
 また壁面緑化を促すための蔦用の支柱設備などもあり、美しく紅葉した蔦が覆っている建物も見かけました。
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幹線道路の中心にある緑化帯
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街角の蔦植物用支柱
 緑化されているところを何度か注意深く見ましたが、日本では多く設置されている自動灌水装置は見かけませんでした。水が貴重な資源となっていることもあるでしょうが、気候に合わせ乾燥に強い在来種で緑化を形成しているからだと推察しました。
 私達がファンドレイジングの授業を受けた学校の裏は駐車場になっており、樹木や芝生など緑の多い所でした。その駐車場でウサギが飛び跳ねているのを見た時はびっくりしました。そんなに郊外でもないエリアに野ウサギがいたのです。ドイツでは珍しい事ではなく、リスなども見かけるそうです。ちなみにドイツ滞在中、野良猫は1匹も見かけませんでした。
街の中の動物
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バードストライクが施されたバス停のガラス
 ウサギの話が出たところで、他の動物のお話も。
 ドイツでは少し大きなガラス面やバスの停留所のガラス部分に鳥の絵が描かれています。バードストライク防止です。日本ではこれほど頻繁に見かけません。野鳥保護を活動の発端とするNABUが多数の会員を有する国だから、生活空間の中で鳥を保護することも当たり前といったところでしょうか。
 ドイツでは犬派と猫派どちらが多いですか? と聞いたところ、どっちが多いとも言えないとの答が返ってきました。ドイツ滞在中犬を散歩させている人をたくさん見かけ、犬好きが多いだろうと予想していたのでちょっと意外でした。レストランやカフェで食事が終わるのを足元で静かに待っている犬や混雑したデュッセルドルフ駅でパートナーに寄り添って買い物している犬などを見かけ、感心しました。他の犬とすれ違っても吼えたりしません。噂には聞いていましたがこれほど躾が行き届いているとは思いませんでした。
 そして犬種の偏りもありません。大きな犬も小さな犬も30匹以上は見かけましたが、本当にバラバラでした。犬に限らず、ドイツには“流行”はないですよと言われましたが納得しました。
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デュッセルドルフ駅構内に見かけた犬
 ほんのわずかな期間でしたが、ドイツの街から感じたことは消費型社会ではないということです。スーパーで出会った若くて可愛らしい女性がしていた手袋は人差し指部分に穴が開いていました。日本ではまず見られません。
 モノを大事に使うことが当たり前、自然が自然のままにあることが当たり前、未来にとって大切な事には関心を持つ、個々の価値観が干渉されない国がドイツでした。
 日本はいろいろな背景からスクラップアンドビルドを繰り返す大量消費と“上に倣え”の社会になってしまい、循環型社会の構築も自然環境の保護も誰かがやっている他人事な社会になってしまいました。
 大震災や原発の事故を経て、これ以上失うもののないよう日本はもっと一体感と未来への責任感を一人一人が持つべきだと、ドイツの国を通して強く感じました。




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