セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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活動のご紹介

がんばろう日本!〜ドイツから日本へ〜 連載-第5回- 環境意識のはぐくみ方〜キーワードは「自由意志(freiwillig)」〜「ドイツの自然と人から学ぶ」

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環境市民の合言葉 
〜すべては自由意志(freiwillig)から〜
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自由に体と心を使って遊び、学ぶ子どもたち。

NPOで活動する人の手の中にある「自由意志」
若者が環境施設で研修をしたいと希望するときの「自由意志」
森の幼稚園が育くむ「自由意志」

 今回の研修の中で、ほぼ全ての講師が口にした単語、それが『自由意志(freiwillig) 』でした。自由意志という感覚、みなさんはピンときますか?
 環境ボランティアやNPO活動を始めようとする「意志」というのは、どんなふうに育つのでしょう。それはきっと、家族や職場、地域での問題意識や、すでに取り組んでいる人の姿などが、日常の中で積み重なって「想い」となり、そして「意志」になっていくのだと思います。ドイツでは、その一人一人に芽生える「意志」をとても大切にしていました。 
 たとえば、NPOや環境施設での研修制度に参加するとき、会員として活動するときの要件として「自由意志を持っているかどうかが大事だ」と、どの団体でも施設でもお話が出てきました。誰かに言われて参加します、なにか見返りがほしいからやりますということでは、継続しないし、他の活動をしている人の妨げにもなりかねないということなのでしょう。活動をするも、しないも自由意志。自分の中から湧き上がる意志から全てが始まります。

 日本で「自由意志」を持って生活をしている人がどれだけいるかと考えたときに、あまり多くの人を思い浮かべることができないのがちょっと残念なところです。その差はどこからくるものなのか? と自分なりに考えてみると、「教育」というところなのかなと思います。
 森の幼稚園での教育は、まさに「自由意志を育てる教育」なのだと感じました。毎日の活動の内容を自分たちで決め、自分の発言に責任をもち、ちゃんと行動に移していくという日々の訓練の姿がありました。それは、集団の中の一人としての自分を確認し、また集団に貢献をしていくという基本なのだと思います。また、ドイツの学校教育についてお話を伺った時にも、教科を教え込むのではなく、子どもたち自身がテーマをもってそれを探求していくという日本とは違う学習のプロセスがあるようでした。ドイツでは、個の意志を大事にした教育が土台にあるからこそ、「自由意志」を基本にボランティアやNPOが成り立っているのかもしれません。

市民とともにつくる環境政策 
〜環境行政のボトムアッププロセス〜

 研修の初日に訪れたのは、ヘッセン州とラインランドファルツ州の環境省でした。特に、具体的な環境政策についてお話を伺ったヘッセン州では、前項の「自由意志」というお話がとても印象的で、今もその話を聞いたときの空気感を思い出すことができるほどです。
 行政が市民と共に環境政策をつくっていくときに大切にする「自由意志」とはどんなものか? 行政が市民とともにつくる環境政策についてご紹介したいと思います。

 ヘッセン州では、京都議定書に定められたCO2削減目標を明確に意識しながら、市民との具体的なアクションプランの作成がなされています。100の自治体、100の企業、100の学校、10000人の住民によるアクションプランを募集し、審査を経て、CO2削減1トン当たり25〜100ユーロの補助金を州が出すというものです。また、無料で専門家の派遣や、学習キットなどのツールの無料貸し出しなどもあります。自治体の取り組み例として、電気自動車・自転車の導入やソーラー電灯の設置、地域暖房の導入などのハード面の導入プランがあるそうです。

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ボトムアッププロセスについてお話しくださった、ヘンポート氏

 この方式を「ボトムアッププロセス」とよび、行政側が作ったモデルプランをそのまま実行するのではなく、市民の「自由意志」を尊重して、市民の中から意見や行動を引き出していくことを大切にしていました。「市民を説得させるというよりは、市民が納得できるような進め方をするのが大事です」「CO2削減というのはとても難しいこと、わかりにくいことですが、そのわからなさを取り除くのが仕事だと思っているのですよ」という言葉には、思わず大きくうなずいてしまいました。日本でこんな風に市民と共に歩もうという意識をもつ行政マンがどれだけいるのかなと思うと、ちょっと心もとない気がします。
 行政の政策策定の場面でもやはり大切にされていた一人一人の「自由意志」。上から下へというトップダウンではなく、下から上へというボトムアップの方法をとるというドイツのやり方から、「良いところを伸ばしていこう」という価値観を感じます。また、CO2削減に向けて具体的な数値目標を掲げることで、ゴールを明確にすること、また達成率をしっかりと分析しているところが、ボトムアップでも成果を出すカギなのだろうなと思いました。

楽しく、わかりやすく、親しみやすく 
〜日本の環境ボランティアを元気にする“自由意志”を育む場づくり〜
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「キノコ」がテーマのインフォカフェの様子

 ドイツ市民の環境意識を支えている「自由意志」について紹介をしてきましたが、このままでは、「ドイツはすごい!」でも日本では…、と思う方もいるかもしれません。でも、日本でも取り組まれている環境ボランティア、NPO活動にちょっとアイディアを加えれば、広く多くの市民の「自由意志」を引き出す場づくりはもちろん可能!ドイツでもらったその活動のアイディアをご紹介します。
 一つ目は、NABUラインナウアーセンターでの取り組みです。ラインナウアーセンターでは、年間70のプロジェクト、350の催しに約8000人が参加します。幼稚園児の自然体験教室から、動植物保護の専門家とのディスカッションまで年齢もテーマも様々です。
 多くのプロジェクトの中でも好評なのが「インフォカフェ」。年に5回開催され、週末をはさんだ9日間行われます。ボランティア5〜6人とFOJの研修生、職員とでミーティングをし、州支部から提案されたテーマを元に、自分たちがやりたいテーマを選んで(これも自由意志!)企画を考えます。例えば、キノコがテーマであれば、ありとあらゆるキノコを並べて、どれが食べられる? 食べられない?という生活の視点でキノコに触れてもらう展示や、解説を行っています。コウモリであれば、実際に自然の中にトンネルをつくり、コウモリが好む環境を再現したりと、企画側もユーモアとアイディアたっぷりに準備を楽しみます。そして名前の通り「カフェ」なので、ボランティアの方々が、手作りのケーキや飲み物を用意して待っています。自然に深い興味がなくても、散歩の途中にちょっとよっていこうかなという気軽さを大切にしています。専門的なインフォメーションではなく、わかりやすく、親しみやすく、多くの人に自然に関わってもらう間口を大きくするためのイベントです。NABUの会員が増え続けているのも、実際に環境活動に深くかかわる人たちだけではない、広い層にも参加してもらえる工夫があるからだと感じました。

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予約制でオープンする環境センター

 二つ目は、NABUヘッセン州支部でお聞きしたアイディアです。私が、「子どもたちに、このようなインフォセンターに足を運んでもらうきっかけはどのようにつくっていますか?」と質問した時の回答でした。 「小学校低学年ぐらいまでの子どもたちはよくお誕生会をしますよね。そのお誕生会の多くはどこでやると思いますか? それは…マクドナルド(笑)マクドナルドではなく、森でお誕生会をしませんか? と提案するのはどうでしょう。来てほしい、参加してほしいと思う人の求めること、行動をよく観察するとそこにヒントがありますよ」とのこと。目からうろこ!の発想でした。 環境に関心を持ってくれない、イベントをしても足を運んでくれないと嘆いているばかりではなく、いったい誰に足を運んでもらいたくて、その人たちはどんな生活パターンを持っているか分析すること。そして、相手のニーズにあう「場」をそっと選択肢の一つとして提案することで、環境市民を育てる種まきをすることができるようになるのだと思います。このように開かれた「場づくり」が、一人一人の自由意志を育む土壌となり、やがて芽生え、環境市民が一人また一人と増えていくのだと思います。 すでに日本ではたくさんの環境活動が活発に行われています。ちょっとした工夫や見直しで、もっと環境活動の担い手を増やすことができると思うのです。ドイツに負けず、日本の環境活動をもっと広げ盛り上げていきましょう!

「環境意識の育み方」ということで、ドイツの事例を踏まえながらご紹介をしました。皆さんの活動のちょっとしたアイディアとして活用していただけたら嬉しいです。





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