セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

※こちらはアーカイブ記事です。

 ホームへ戻る

 

文字サイズ
活動のご紹介

ドイツ研修奮闘記 連載-第11回- 市民力の育み方3〜ファンドレイジング〜

→バックナンバー

 第3回目のコラムでBUNDについてご紹介した際、BUNDの年間収益は約1,200万Euro(約21億円:1Euro=164円)もあるという話しをさせてもらいました。市民団体が何故これほどまでに多くの資金を得ることができるのか、本当に不思議でしたよね。そこで、今回はこの疑問に答えるべく、ドイツにおけるファンドレイジング(資金調達活動:Fundraising)についてご紹介しようと思います。

海外研修
トーマス・クロイツァー氏 の講義の様子
(写真提供:小野さん)

海外研修
リッタース・ホーファー氏 の講義の様子
(写真提供:山本)

  ファンドレイジングとは、アメリカで長年に渡り検討されてきた手法だそうですが、日本でも寄付金、企業のスポンサー、グッズの売上、会費など資金集めの手法としてすでに浸透しているものもあります。しかし、私たち一般市民にとっては、まだまだ馴染み深い手法とは言えないでしょう。

 近年、ドイツでは、連邦、州政府の財政悪化、不況による企業の経営悪化に伴い、教会や市民団体が、寄付による活動資金の獲得に苦労するようになってきました。そのため、ファンドレイジングがこれまで以上に重視されるようになったそうです。今回、私たちは、こうした背景をうけ1993年に資金確保活動の人材育成を行なう学校として設立された「ファンドレイジングアカデミー」を訪問し、ドイツにおけるファンドレイジングの手法について学んできました。
 このアカデミーでは、社会の変化に対応できるよう、各市民団体の中にファンドレイジングができる人材を育てること目的としたカリキュラムが組まれていました。その内容は、リーダーの育成、コミュニケーション能力の向上、資金調達についてなどでしたが、中でもリーダーの育成に重点を置いているとのことでした。『環境ボランティア研修制度』でも感じたことですが、「人を育てる」ということを本当に大切にしているようでした。

 ドイツの現状をみると、市民団体は約56万団体あり、およそ200万人がそれらの団体で働いているそうです。また、ファンドレイジングに関わっている団体が、2,600団体ほどあるようです。こうした中、ドイツでは、連邦や州政府からの支援を受け難い状況になってきているため、各市民団体が自分たちの手で収入を得なければならない状態になりつつあるのだそうです。つまり、これからの市民活動は、政府に依存するのではなく市民団体自ら市場を確保し、自立した経済を持たなければならないとのことでした。一方、現在の市民団体の収入の内訳をみると、寄付が占める割合はドイツでも3%しかないのが現状とのことでした(日本はさらに低い2%!)。しかし、政府からの援助が減ってきている現状を考えると、今後は市民活動を支えるものとして、寄付が収入全体の10〜20%程度を占める可能性があるとのお話でした。

海外研修
日本とドイツにおけるNPO収入の内訳
(資料作成:草野さん)


< ドイツの市民団体を取り巻く状況 >





活動経費の増大
競争の激化(福祉、災害救助、教育、研究開発、文化、政治等の他分野との競合)
グローバル化の進展(インターネットの発達に伴う情報の多様化)
寄付の動機付けに必要な本質的情報の必要性
私たちが出会った女性の研修先は、母親たちの手で設立された3歳から6歳までの子供たちを対象とした私立幼稚園。

< ドイツ人はなぜ寄付するか >


個人的な幸せ感や満足感を得るため
他人を助けたいという思いがあるから
非常時には助けるのが当然のことだから

< ドイツにおける寄付対象の分野 >


社会福祉分野
芸術・文化、動物愛護、環境分野
教育、博物館などの分野
・・・
・・・
・・・
75%
それぞれ4%
12%の激化(福祉、災害救助、教育、研究開発、文化、政治等の他分野との競合)

さて、より多くの寄付をもらうために、ドイツではどのような手法がとられているのでしょうか。
収入の額と成長率の関係をまとめた図をみて下さい。ドイツでは、遺産相続による収入が最も多く、また一番伸びているようです。次いで、スポンサー、チャリティグッズの販売となっています。会費は金額的には中間くらいの位置ですが、成長率はあまり期待されていないようです。一方、インターネットやイベントについては、若者の参加率が高いので、今は収入額が小さいけれど、今後成長率が伸びると予想されていました(※ただし、イベントなどは収入も多いが支出も多い)。

海外研修
手法別の収入の額と成長率について
(資料作成:草野さん)


 ところで、この図には、罰金や遺産相続など、日本では馴染がない項目も見受けられますね。ここでいう、「罰金」とは、交通違反や税金支払い洩れなどによって科せられた高額の罰金から、数%分が割り当てられた寄付金のことでした。一方、「遺産相続」については、遺産総額が、2005〜2010年の間に約11,487億Euro(約183.8兆円)にもなると見積もられており、大きな市場として注目されていました。個人の遺産が市民活動に寄付されるなんて、日本ではなかなかイメージし難いことですよね。もちろん、ドイツでも遺産という高額な寄付を受けることは、一朝一夕のことではないようです。
海外研修
ピラミッド形式で表された寄付者の段階
(写真提供:草野さん)

 遺産を寄付してもらうまでに、『興味を持っている人>興味を持つ>小額の寄付>継続支援>遺産を寄付』というピラミッド形式の長い道のりがあるとのことでした。そして、なんとなく関心がある人に、どうやって継続的に関わってもらうのか、その第一歩のためには、地域の課題をくみ取り、興味を持ってもらえるプロジェクトを企画し、個人的な信頼関係を得るという一連のプロセスがあるようでした。また、ファンドレイジングを行なう人は、寄付者と市民団体を結ぶ存在となるわけですが、専門家としての意識を持ち、『聞き取り>調査・分析・解析>目標>目標に向かって企画を立てる>実行する>活動結果の公表>コントロール』という一連の流れをもって活動しなければならないとのお話でした。

 なお、このアカデミーでは、本来なら何ヶ月もかけてファンドレイジングの手法を教えているのだそうです。私たちは、短期間で概要のみを教えて頂いたので、事例に沿った具体的な手法までは教えて頂くことができませんでした。しかし、ファンドレイジングの基本は、やはり『人と人とのつながり』であり、それを念頭においた下記の取り組みが重要であることを教えて頂くことができました。私は、日々の活動でも応用できそうだと感じたのですが、皆さんはいかがでしょうか?

海外研修
アカデミーでの研修の様子
(写真提供:小野さん)
  • 寄付をしてくれる方が、何を望んでいるか(何に対して寄付をしているのか)を理解することが重要である。
  • 寄付されたお金が、いつ、どこで、どのように使われる計画なのか(使われたのか)、常に示せる状況にしておかなければならない。
  • イベントで大切なことは、その日だけの付き合いで終わらせず、個人データを収集し、その後のケアに活かすことである。
  • 寄付者とのつながりができた場合、個人のつながりを重視し、こまめなメンテナンスを行なわなければならない(誕生日や記念日にメッセージカードを送るなど)。




このページの先頭へ
ご利用にあたってプライバシーポリシー
Copyright(C) 2000-2019 Seven-Eleven Foundation All Rights Reserved.