セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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ドイツで感じた、日本の環境NPOの道標(みちしるべ) 連載-第3回- 2大NPO BUND・NABUとは 〜1%の市民の力〜

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 私たち研修生が訪問した全12カ所のうちの5カ所が、ドイツの2大環境NPOに関連した組織であった。2大環境NPOとは、「BUND」(ドイツ環境保護連盟)と「NABU」(ドイツ自然保護連盟)のことである。今回の研修では、BUNDに1カ所、NABUに4カ所訪問した。12カ所中の5カ所だから、その比率の高さはおわかりいただけるだろう。それだけ、ドイツの環境市民活動を知ろうと思ったときに、避けては通れないNPOであると言える。
 BUNDとNABUについては過去の研修生のコラムでも詳しく述べられているので、そちらのほうを参照していただきたい。(BUNDについては第9回のこちらや第10回のこちらのコラム、NABUについては第9回のこちらや第10回のこちらのコラムなど。)
国民の1%が環境NPOの会員
 私がBUNDやNABUの訪問先で、「またか!」と感じていたことがひとつあった。それは、「その地域の人口における会員数の比率」である。つまり、「人口の何%の人が会員であるか」ということである。
 ドイツは、日本の約95%の国土に8175万人(2010年)が生活している。BUNDの会員がドイツ全体で48万人。NABUの会員が45万人。もちろん両団体の会員となっている人もいるが、2団体合わせてざっと90万人強!! ドイツの人口の1%を超える人数である。日本に置き換えると、1200万人(東京都の人口と同じ)が環境NPOの会員になっているということだ。
どの地域も共通して1%
 私たちが訪問したBUNDのバーテンブルグ州支部で会員数を聞いたところ、人口1000万人の人口に対して会員数が8万人であった。人口の0.8%の会員だ。バーテンブルグ州での活動は1973年に開始されたことを考えると、わずか37年で8万人の会員を組織していることのすごさは感じてもらえると思う。
海外研修
BUNDバーテンブルグ州支部ベルトフォールド・フリエス事務局長を囲んで
 一方、NABUのラインランド・ファルツ州支部では、州の人口400万人の人口のうち、0.82%にあたる3万3000人が会員であることがわかった。ここでは、1%の4万人を目標に掲げていた。NABUのラインランド・ファルツ州支部が設立されたのは1939年。71年の歴史がある。
 NABUのラインヘッセン地域の団体を訪問したときも、地域の人口の1%にあたる1200人が会員であると聞いたし、ヘッセン州支部の地域でも人口60万人のうちの6000人〜7000人が会員であると話していた。
 どこでも共通して、人口のうちの0.8%〜1%がBUNDやNABUの会員になっているのだ。この比率の高さに驚かされたと同時に、どの地域でも同じくらいの比率であることに感心した。
1%の人がお金を出してまで応援している
 1%とは、100人に1人。この数を多いと思うか少ないと思うかは人それぞれだが、それだけの人が年間数千円を環境NPOに会費として支払っているのだ。
 BUNDは、収入の8割が寄付金や会費だ。設立当初から寄付や会費による収入を8割と決め、戦略的に収入を上げてきた経緯がある。寄付や会費を支払うということは、当然BUNDの活動を応援しているということだ。
海外研修
NABUラインランド・ファルツ州支部での研修の様子
 BUNDは、どこの政党にも属さないが政治的な団体だ。州議会議員選挙が近づいてくれば候補者にアンケートを行いネット上で回答を掲載する。政治家や専門家との話し合いの場も常に設け、それを一般公開している。環境大臣や企業のトップへのロビー活動も欠かさない。BUNDの理事長が行う記者会見は、8割の国民がその信憑性が高いと認めている。そこまでやってくれるから、市民はお金を払い応援するのだ。
 一方、政治活動よりも地域の自然保護活動をメインに取り組んでいるNABU。自発的に活動に参加する会員は1割程度で、残りの9割はお金や物で支援をしている。BUNDほどの政策提言は行っていないが、それでも、45万人も会員がいることから、政策提言の原動力だと話す。これだけの会員数がいれば、政治にとっても無視できない存在なのだ。
1%はあくまでも顕在化している数字
 1%という数字についてはこう考える。あくまでも年間数千円を払って活動を応援している人が1%なのだ。ということは、会員になるほどではないが活動を応援している人もいる。家族の誰かが会員だという人もいるだろう。折を見て会員になろうと考えている人もいるかもしれない。環境問題には関心があるが、すでに他の団体で活動している人もいるはずだ。とするとだ。BUNDやNABUを応援している人は1%どころではなく、2〜3%、ひょっとすると5%くらいいるかもしれない。他の団体で活動している人、そのいずれでもないが、日頃から環境問題に関心を持っている人を合わせたら・・・。ドイツ国民の10%以上が環境問題に関心を持ち、何らかの活動や支援をしているということになるのではないか。顕在化しているわずか1%から、こうして潜在的な10%までをもうかがい知ることができる。日本ではどうだろう?
1%の市民の力
 1%の市民の力。それは政治にとって無視できない存在だということだ。この市民の声によって法律ができている経緯もあるそうだ。微力は無力ではない。わずか1%の国民が意思を持って環境NPOを支援していることが、国の政策をも動かす声の束となるのだ。そこが日本とドイツの環境NPOの大きな違いだと感じた。
 何のために会員を増やしているのか。どうして会員が増えているのか。その根本的な認識を日本のNPOも改めていく必要があるのかもしれない。
海外研修
NABUのラインヘッセン地域で活動する人たちと記念撮影
 ひとつのNPOだけで会員数を飛躍的に増やすことが難しいようであれば、NPO同士でネットワークを組む、または複数のNPOをコーディネートすることで、政策提言に向けて協働を進める。日本でもそういった形で市民の力を束にしていくことができるのではないか。
 会員が増えることは、国や行政への政策提言力が増すだけでなく、会費収入を増やし活動の幅を広げることも可能になる。安定した収入を得ながら活動を広げていくことができれば、それもまた会員増につながるに違いない。そうした好循環に移行していくことが、日本のNPOにも求められていることかもしれない。




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