セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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「ドイツ環境なるほど紀行」 連載-第2回- 地域の環境活動<1>  〜緑の教室〜

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地域長のコンラッドさん
(写真提供:小野さん)

研修初日のテーマは「地域の環境活動」である。日本に届くドイツのニュースでは、国の環境政策や大きな環境NPOの活動を知る機会はあるが、なかなか地域活動やボランティア事情を知るチャンスは少ない。地域でどのような活動が展開されているのか、期待が膨らむ。
マインツ市から南西へ車で30分ほど走ると、ヴェールシュタットという人口7500人の小さな町に到着した。今日はここで活動するアジェンダ・BUNDを訪問するのだ。アジェンダ・BUNDはドイツ最大規模の環境NPOであるBUND(ドイツ環境保護連盟)の会員を中心とする市民ネットワークで、ローカルアジェンダ* 推進に向け2000年につくられた。メンバーは20〜25名ほどで全員ボランティア。水、環境、文化など、6つのグループに分かれて活動している。今日は、その中の「人と自然」グループの活動である緑の教室を見せていただくことになっている。


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今日のために仕事を休んで集まってくださったアジェンダ・BUNDメンバーのみなさんと
(写真提供:小野さん)

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収穫時期を迎えたワイン醸造用のブドウ。驚くほど甘い
(写真提供:阪本)

まずはアジェンダ・BUND事務所で地域長のコンラッドさんから行政との協力関係についてお話を伺った。その中で驚いたのが、アジェンダ・BUNDは自分たちがやりたい活動の企画書を行政に出す権利があり、行政はそれを審議する義務があるということだ。「こういった権利を認めているのは、他の地域ではまだありません。とても挑戦的な取り組みです。」とのこと。「ドイツ環境街道をゆく」を読み、行政による自然開発事業に対してドイツの環境NPOが公に意見を声明できる権利が保証されていることに驚いたが、地域レベルでも市民団体の意見が権利として保障されていることに更に驚く。
覚えたてのドイツ語らしき言語と身振り手振りで懇談した後、いよいよ緑の教室へ移動。いったいどんな教室なのかな?と想像を膨らませながら現地に向かう。ブドウ畑を歩きながら、もぎたてのブドウをいただいた。甘い!糖度がとても高く、手がすぐベトベトになるほどだ。
到着した場所は、ぶどう畑の丘の上。横に、でこぼこした小さな土地があり、ぱらぱらと木が植わっている。ここが、緑の教室・・・?

「ここは6つある緑の教室の中で一番最近できた場所です」と「人と自然」グループ共同代表のフォルカさんが説明してくれる。元ブドウ畑であった土地を買い取り、伝統的な自然景観を取り戻し、子ども達が自然体験できる場を提供しているのだ。ワインの名産地であるこの地域では、大型の機械を使う集約的農業でのブドウ栽培が盛んである。「虫が住む雑草もない土地で、子ども達は蝶々も見ないで大きくなります。子どもたちに本来の自然の姿を見せたい、感じさせたい。それによって失われていることがわかるから。」というメンバーの言葉から、この地域が面している課題を感じることができた。
7000㎡の土地の一部では、ワイン畑が作られる前の植物群を再生しようと、散在果樹園も進行中だ。梨や林檎などドイツの在来種をパラパラと植え、雑草も抜かず、農薬を使わないことで、様々な動物の餌や生き物の住処となる。またその傍らには、自然の滑り台や転んだりできるくぼ地など、柔軟で変化にとんだ場所を子ども達の遊び場として残している。確かに子どものエネルギーは、平面にとどまらないものだ。私だって丘があれば駆け上がりたくなるし、斜面があればゴロゴロと転がり落ちたくなる。日本の学校のグラウンドは必ずと言っていいほど平らだが、大人の規制概念から平らにしていたのではないだろうか・・・?

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一番最近できた「緑の教室」
(写真提供:阪本)

散在果樹園。草刈は年に一度だけ
(写真提供:阪本)

自然の滑り台や転んだりできるくぼ地。確かに滑りたくなる
(写真提供:阪本)

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「人と自然」グループ共同代表のフォルカさん
(写真提供:大林さん)

「緑の教室」では特別なプログラムを用意するわけではないという。「私たちはぶどう畑を買い取り、場所を提供し、そして子ども達がどんなリアクションをするのか注意深く見ます。子どもたちは子どもたちの感性で発見や遊びがあるのです。私たちは子どもだけでなく、親や市民のニーズをすいとり、一緒に考え、新しい形へと変化していきます。その方が自然に沿ったものができるからです。」今まで環境教育というと、大人が用意したプログラムをイメージしていた私にとって、これは大きな感動だった。大人のフィルターを通して自然を子どもに伝えるよりも、子ども達が自然から直接学ぶことの方が遥かに大きい。そして子どもや市民のニーズに合った環境活動こそ、地域で根付いていくものなのだ。自分の中に新しい風がふっと流れたような気がした。

* 「アジェンダ21」は1992年にブラジルで開かれた国連環境開発会議で採択された、21世紀に向けた持続可能な開発のための具体的な行動計画のこと。「ローカルアジェンダ21」とは、地域ごとの行動計画で、地方自治体が主体となりながら地域住民・NGO・民間企業が協力していくことが求められている。





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