セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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環境ボランティアリーダー海外研修

2006年(平成18年)第9回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 特定非営利活動法人 地球の未来
樋口 克孝 さん

1 訪問団体のどの部分を日本のボランティアリーダーとして生かせるか。
  1. マネジメント力
     ドイツのNPOを見て学んだのは、彼らが多くの面で実績を上げているのは、当たり前のことを着実にやっているからだと分かった。
     組織のミッションを明確にし、それを実現するための具体的な目標や事業計画を定め、事業に必要な人・モノ・金を調達して投入し、達成状況に応じて事業を再構築していくという当たり前のことを、自分もただ実践するのみである。

  2. 政治力
     NABUやBUNDという2大環境NPOは、連邦レベルの事務局に専門スタッフを揃え、政府に対して高度な政策提言やロビー活動を行い、国民に向けた広報活動も行っている。その結果として、ごく一部の環境NPOが大規模な開発計画に対し意見を述べる権利や、開発事業の当事者でなくとも訴訟を提起できる権利を有するなど、有利な法的・政治的地位を獲得している。
     また、政治力の背景として、数十万人の会員−その中には社会的地位の高い人々も数多く含まれているでしょう−を抱していることも挙げられる。
     これらの実績は、NPOが成果を挙げるために、社会システムの変革を迫ることを明確に意識して、追求してきた成果だと思う。

  3. 民主的合意形成のシステムとリーダーシップを最大限に発揮するシステム
     NABUやBUNDは、数十万人の会員の自発的な意志をベースに、地域グループ・州組織・連邦組織という三層構造を積み上げる形態をとっている。そのため、合意形成に時間がかかったり、連邦組織の認識と地域グループの認識に乖離が生じるという欠点があるが、多数の国民の支持を得ているという背景が、政治力の背景となっている。
     これに対し、訪問先にはなかったが、グリーンピースのように、少数のリーダーの見識や能力を信用し権限を集中させることにより、迅速に先駆的な取り組みを続ける団体もある。
     自分のミッションと今の社会環境からして、所属団体である「地球の未来」と「地域再生機構」は、BUNDを目指すべきなのか、グリーンピースを目指すべきなのか、再検討したい。

2 研修を通して、日本の環境ボランティアリーダーを支援するために、どのようなしくみが考えられるか。

  1. 環境保全活動やマネジメントに関する情報・ノウハウ・習得機会の提供
     日本のNPOはあまりにも未熟な団体が多い。その原因の多くもリーダーの能力不足にあるので、リーダーを支援することが重要であることは言を待たないが、自らのミッションを明確化できないリーダーが、マネジメントの知識をつけたところで、NPOを向上させることや、社会に貢献することは期待出来ない。
     ただ、多くの日本人が、議論するという習慣をあまり持ってこなかった中で、自分のアイデアを言語化しきれずにいるリーダーも少なくない。そこで、セミナーなどにおいて、コンサルティング的に、彼らのミッションの明確化や、経営戦略の策定を支援するということが考えられる。その段階をクリアしたリーダーに対して、マネジメント能力の向上を目指すカリキュラムを実施すると効率が良い。
     また、NPO活動をめぐる、諸制度や社会全体の現状を認識して活動することで、他の組織やセクターとの連携の意味や重要性を理解し、NPO界全体の力の強化につながるはずである。

  2. 社会システムを整備・充実させるための広報・ロビー活動
     NPOの活動の障害となっている制度や、活動を発展させるために有益な制度などについて理解し、その制定改廃を政府や国民に対して働きかけていくことが必要である。その中核となるようなNPOか協議会組織が必要である。

  3. NPOのマネジメント機能の一部を代替・受託する事業体の育成
     小さな団体のリーダーに、全ての能力・知識を高いレベルで備えさせるのは不可能である。特に広報やファンドレージングなどの分野で複数の団体をまとめて面倒を見るような専門家や事業体が必要である。

  4. 以下は、前出の i 、iii を踏まえて具体的に考えた企画である。
    「資金あつめ実践講座」
     お金に困っているリーダーたちを集め、「自分たちが何を実現しようとしているのか」から考えさせ、経営戦略を立案させ、実践させる過程を通じて、マネジメントの確立を支援するセミナー兼コンサルティングである。
    (案)
    第1回 基礎編〜ファンドレージング戦略とは何か。
    ・ レクチャー&ワークショップ
    ・ 次回までに、所属団体の経営戦略と団体紹介のリーフレット等を提出
    第2回 応用編〜ファンドレージング戦略の立案
    ・ レクチャー&ワークショップ
    ・ 講師のコンサルティングを受けながら、所属団体の戦略を立案
    ・ 各団体は、戦略に沿って実践する。
    第3回 実践編〜取り組みの進捗状況を報告し講師から助言
    ・ プレゼンとコンサルティング
    「資金」という直接困っている課題を前面に出すことにより、「マネジメント講座」よりもリーダーたちの関心を集めやすい。
    ファンドレーザーを養成し、サービスを提供する事業体をつくることにより、団体によっては、リーダー自らがファンドレージングを実施するのではなく、外部委託を選択することも可能になる。

3 全体を通しての感想

  1. ドイツの国情について
    (国家制度〜連邦制)
     この研修に参加するまで、ドイツの連邦制に対しては、過度に理想的なイメージを抱いていたが、実際に見たのは、ドイツも悩みつつ揺れ動いているという現実だった。
    基本的には、連邦が法整備の主導権を持っており、連邦法の制定を受けて州レベルでも法整備の責任を負うことになる。最近は、EUが法整備や「指令」(EUでは法律化しないが、各国において法律化を求めるもの)を行い、それを受け、連邦レベルで法が定められ、さらに各州でも法整備が求められる事例が増えており、州政府の担当者がEU法を理解できなくなりつつある傾向も窺えるとのことであり、地方政府の自立性は縮小の傾向にあるという印象を受けた。
     他方で、国立公園内の様々な区域指定が州政府に一任されていること、また、自然保護法において、州が適用範囲などを拡大することが自由に出来るなど、連邦からの「一任」というよりは、初めから「地域のことは地域で決める」という前提が成り立っていることも窺うことが出来、NPOにしてみれば、問題があったときに州レベルで折衝し解決できることが多い。
    (市民の意識)
     ほんの10年前まで活動家が「環境」と言うと一般の人から「引かれる」ことが多かったというようなエピソードや、BUNDやNABUが、会員が活動に参加してくれないことを悩みの種にしていることを考えると、国民全般としては、とりたてて日本人よりも、NPOへの参加意識が高いとか、積極的だとまで言えないような感がある。ただし、「社会のために寄付をするという習慣は根付いています。」というセリフがサラリと出てくるあたりや、70年代以降、BUNDやNABUに数十万人の会員が集まったことなどを考えると、ドイツ人は、問題意識を持てば行動にも表す可能性が高いのに対して、日本人の場合は言動に表すまでにもハードルが高いのかもしれない。それは、NABUやBUNDやグリーンピースといった力のあるNPOが日本に存在しないことと、「鶏と卵の関係」かもしれないが、日本にも「卵」か「鶏」が生み出せるはずであり、自分も、それを生み出すつもりである。

  2. この研修のあり方について
    コストパフォーマンスを高める観点から、環境ボランティアリーダー海外派遣研修について検討してみた。
    (目的)
     あえて、日本を離れて、ドイツへ行って研修する意義を考えてみると、大きく次の3点が考えられる。目的を絞れば、対象者や実施方法を変更する余地は大きい。
    ① リーダーの資質向上
    この点については、あえてドイツで行う意義は薄い。2の(1)で述べた国内研修の充実で対応した方が、より多くのリーダーに対して相当の成長を促すことが出来るはずだと思う。ドイツに行く意味としては、「ドイツの傑出したリーダーと接することで、参加者が触発される効果や国境を越えた交流が進む効果」があると思うので、国内レベルの研修・交流でレベルアップしたリーダーに厳選して行ったほうが良い。
    ② 情報収集・調査
     日本で直面している課題について、国内のアイデアや能力では打開策を見出せない場合に、ドイツで成功している制度・取り組みについて、その有効性や導入の可能性について調査する。
     日本で直面している問題や取り組みの現状に詳しい者が厳選して派遣されるべきである。事前に出来る限りの情報を持っていたほうが良い。
    ③ 普及啓発
     主催者側が日本へ導入すべきだと考えているドイツの取り組みについて、導入のキーパーソンたちに、その取り組みの有効性や導入に当たっての留意点を深く認識してもらうため現地を視察する。事前に出来る限りの情報をもっていた方が良い。
    (「人材育成」について)
     今回「人材育成」について2日間を充てたことになるが、今改めて振り返ってみると、NPO側の関心〜活動の一線に立つリーダーの育成〜とはすれ違った面があったと思う。
     アイフェル国立公園は、日曜日という条件の中での精一杯の努力であり、これ以上の向上は困難かもしれないが、無理せずに、一日、ディスカッションにあてるという手もあるかと思う。
     また、環境ボランティア研修制度については、中長期的には環境NPOの人材確保に貢献するのは間違いないなく、また、インターン的にボランティアを受け入れる際の参考にはなったが、多くの団体の直接的な課題に応えるものではありません。
    この「人材育成」の課題については、NABUやBUNDの人材採用やトレーニングの方針があれば、それを参考にしたり、特に青年部組織の活動を通してどのように人材が育っていくのかを見たほうが良いように思った。

     この研修の実施形態についてはこのような私見を持っていますが、現在においても、単なる視察旅行では及びもつかない深い内容の質疑やディスカッションがなされていますし、現在この研修に参加できることが環境NPOの世界でステータスになりつつありますので、今後も是非続けて実施していただきたいと思います。
     また、我々受講生の今後の行動がステータスをさらに押し上げもすることも意識していきたいと思っています。

  3. 総括
     今回の研修を通じて自分が得たものは、何か目からうろこが落ちるような秘密兵器や得意技を得たというようなことではなく、これまで実践してきたことと、今後実践しようとしていることが、ドイツの先駆者たちの軌跡と比べても妥当なものであることが分かって、自信を深めたということです。
     勿論、具体的な作業レベルでは、出来ていないことが山のようにありますが、それを着実にこなしていく道こそが、自分のミッションが果たされる可能性が最も高い道であると確信しました。
     今回、このような研修の機会を得たことで、自分の活動に対する自信と共に、覚悟がより一層強くなったのを感じます。また、セブンイレブンのネットワークを通じて、全国の仲間とつながるチャンネルが増えたことも大きな財産となりました。
     参加させていただき、ありがとうございました。



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