セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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活動のご紹介

環境ボランティアリーダー海外研修

2007年(平成19年)第10回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 川崎フューチャー・ネットワーク
三枝 信子 さん

訪問団体の活動やマネジメントなど、どの部分を日本のボランティアリーダーとして生かせるか

 今回、ドイツに研修に来て、いくつもの気づきがありました。まだ、頭の中だけのことで、整理できてはいませんが、私自身の今後の活動に生かせそうなことだけでなく、他の団体でも参考になるのではないかということが多々ありましたので、ぜひ、それらを自分の団体だけでなく、各地域へも知らせていきたいと考えています。何を始めるにしろ、まず、知ることからしか始まりません。実際に環境を良くしていくためにも、実行力ある団体になるためにも、また、そういう団体を増やしていくためにも、まずは同じ情報を共有し、目標を明確にし、大変困難ではありますが合意形成を行うことが必要です。

 今回のドイツ研修で一番強く感じたことは、本気で何かを変えようと思ったら、発言力を身につけるようにならなければならない、ということでした。そのためには、自分たちの意見の論理性や伝え方はもちろんのこと、ある程度の裏づけとなる同意してくれるメンバーの数といったパブリシティの力が必要になってきます。それは数の論理によって、少数意見を封じ込めるといったことではなく、あくまでも民主主義に基づいた正当な発言力を持つということです。今後は、そういった一歩進んだ意識を持った仲間作りをすることが、日本の課題の一つであると考えています。

 今回、学んだドイツで行われている環境を中心とした団体の活動のポイントは、おおまかに言うと以下のことでした。

1. 人と人とのつながり。
 活動を支えてくれるアクティブな会員とつながりを持ち続けるためには、細かに、直接、声をかけあうこと。長い時間をかけ、また信頼を得るように努力すること。モチベーションを維持するには、自分が必要とされていると感じることや手応えを感じることも大事なので、必要なものがある時や手伝って欲しい時などは、目的や経緯を明確にし、直接、声をかけるのも大切。インターネットやメールだけではなく、時には電話も有効。

2. 資金を得るための、あの手この手。
 NPOといえども、まったくの無給で活動は維持できない。ことに、自然破壊を食い止めるのに有効な手段の一つは、その土地を購入することだ。そのためにも、資金を得ることが必要。ドイツでは、フクロウの営巣に使われる一本の古いリンゴの木を守るために、そのリンゴから作ったジュースを販売するための(また、イメージ戦略も含めて)有限会社を設立し、リンゴジュースの販売も行っている。
 また、今、着目されているのが「遺産の寄付」だ。生前からの活動の支援を、その後も支援につなげてもらうために、そういった広報も積極的に行っていくべきだとの考え方が試みられつつある。これについても、死後の財産を狙うというものではなく、もともと活動に理解をしてくれていて、サポートをしてくれている人たちの気持ちを汲むアプローチとして考えられていて、要は人と人との繋がりから始まっているというのが、ドイツの考え方だ。
 NPOも活動の目標達成のためには組織を維持する必要があるから、今後は資金調達の方法として、日本ももっと経済活動へのアプローチを考えていく必要があるだろう。

3. 政治的にも力を持つ。
 日本では、政治に関する話はタブー視されがちだが、上記の遺産譲与のこと一つとっても、法律を変えていかなければ成立しないことを思うと、立法府に対して働きかけることは、今後、欠くことができないアプローチだと思う。ドイツでは、たとえば自然破壊を生む可能性のある工事を行う際などには、特定の環境団体を公聴会に招待して意見を聞かねばならないということが条例に明記されており、それを行わなかった場合は罰金を設けることまで決められている。こうして抑止力を行使できる仕組みがある。
 たとえ公共工事といえども、変えるべきことについては、他団体とも協力の上、しかるべき発言権を持つこと。また発言力を得るために、目的を同じくする人と繋がり、専門家とも繋がり、検証能力に磨きをかける。準備が整ったら、勇気を出して声を上げることが大事。

4. 地域の課題は地域で解決する。
 地域の課題に一番詳しいのは、その地域に住む住人である。地域、州、連邦の考えるべきことは、それぞれ課題が違う。ドイツでは、地域の課題が州に上げられ、中央で討議された上で決定される。連邦で決めた活動については、合意すれば地域でも行うが、合意が得られなければ(地域の優先順位などから)活動しなくても良いという、完全に地域が独立した組織として機能することを認められている。

5. 人材を育てるのは、現場で。
 若い人材を育てる仕組みという意味で、若者を現場で受け入れる仕組みがある。セミナーなどで理論を学ぶのではなく、実際に現場に飛び込ませ、現場を体験させながら仕事を覚えていく、いわばOn the Job Systemの仕組みがFSY、FOJなどによって何十年も前からあって、それがさまざまな活動の場において根付いている。若者が社会に出ることに対し、社会全体で受け入れることが合意事項になっており、フォローも手厚い。

6. 会員獲得、資金獲得のためにも、企画力が必要
 会員を獲得することは、継続的な会費を獲得することにも繋がるし、支援してくれる人を増やすということは、その団体の発言力の許可にも繋がっていく。積極的なアプローチと、きめ細やかなフォローが、ますます重視されていくだろう。


研修を通して、日本の環境ボランティアリーダーを支援するために、どのような仕組みが考えられるか

 ドイツを訪れる前から、ずっと気になっていたことは、どうして日本では取り組みが具体的に進んでいかないのだろうかということでした。企画や提案は行われ、計画も立てられ、立派なローカル・アジェンダもあるのに、課題が解決された、前に進んだという手応えもなければ成果も上がってきません。翻ってヨーロッパ諸国を見ると、CO2削減にしても、具体的な目標を掲げ、しかもそれが掛け声だけで終わらず、しっかりと成果を上げる仕組みがあり、実績を上げ始めています。日本でも、企業などは研究能力や技術力もあり、地方行政やNPOなどにも意欲のあるキーパーソンがあちこちにいて、頑張ってくださっているのですが、日本全体として「変わった」と言えるだけの実感が沸かず、実際に成果は上がらない状態が続いており、真剣に活動を行っている方々の苛立ちや焦りが増すばかりという事例が多く見られ、歯がゆく感じていました。その違いが、どこから来るのか、その違いが一番、私がドイツで知りたかったことでした。
 実際にドイツに来てみて思うことは、ドイツで行われている事例は、実際、日本のあちこちでも行われていること、という場合が多いということです。それぞれの特性により細かな違いはあるものの、その仕組みや事例は日本でも行われていると思うことが、しばしばでした。しかし、国全体、地域全体で上げている成果には大きく違いが出てしまっています。それは、なぜなのでしょうか。

 ドイツにおける環境活動の効率的かつ有効なことは、「地域の課題は、地域で」という考え方が、どのレベルにおいてもしっかりと根付き、システムとしても徹底しており、それが実際に行われていることです。どんなに大きな団体であっても、地域グループの意志を損なって活動を強要することはできず、それは行政府においても同じことです。地方自治が守られ、意志が尊重されています。
 残念ながら、日本のシステムは上意下達の一方通行の傾向が強く、地域が独立した力を持つことが、ドイツよりもはるかに少ないことは否めません。地域が活性化し、地域としての魅力を持って、生き生きと活動するためには、その地域のことを、一番良く知っている地域の方々の力を活かすことが一番なはずなのに、どういうわけか、日本では、なかなかそれが行われていないのが現状のような気がします。

 地域の課題を解決できる人は、地域のことを一番良く知っている、その地域の中にいます。地域の課題を解決する本当に一番良い方法も、やはり地域の中にしかないのではないでしょうか。まず、小さなことからでも良いので、この改革を行えるようになっていかなければならないのではないかと、強く感じました。
 「アジェンダ」のもともとの意味は、「やらなければならないこと」だと、ドイツのローカル・アジェンダ21の担当者は言い切りました。そのための「行動計画」なのだと。実現できてこそのアジェンダです。そんな当たり前のことが、日本で具体的にならず、実効性を持たないのはなぜなのでしょうか。ドイツで、さまざまな団体や行政の担当者と会い、実例や考え方や取り組みを聞くうちに、それは、地域に地に足をつけた計画になっていないからではないかと考えました。行政府の上の組織から、いくら立派なアジェンダが下りてこようとも、それが地域に合うとは限りません。それぞれの地域で、それぞれの地域に合う形にしてこそ、アジェンダが生きるのです。
 地域のことを一番良く知っている地域の人たちをつないで、知恵を出し合って、本当の意味での実現可能な「ローカル・アジェンダ21」を編みなおす必要があります。たとえば、50年後の未来に、どんな地域に住んでいたいのか、子どもたちにどんな未来を残したいのか、本気で議論しあう「場」を作っていく事例を作ってみたいと考えています。川崎フューチャー・ネットワークでは、設立の際から、『未来創造プロジェクト』と名づけて、川崎市が「環境都市」になるためのアイデア募集と合意形成の「場」づくりを行うことも目的の一つと位置づけていますが、その方向性に間違いはないとの確信を強くすると共に、いよいよ、近い将来のどこかで、そんなことの具体化も求められる日がくるのかもしれないと、あらためて気持ちを引き締めています。


全体を通しての感想

 ドイツという国を考えた時、訪問前から思っていたのは、仕組みつくりがうまい国なのだろうな、ということでした。ですから、環境立国として名高いドイツの取り組みについて学び、実際に現場を見る機会をいただいたからには、ぜひ、何としても何らかの知識や経験を学び取って、日本に戻って伝えなければと思っていました。出発前から、いくつかの課題とテーマを自分なりに考えて、研修に望みました。
 今、研修を終えて思い返すと、その中のいくつかには確信や答えを得られましたが、いくつかは、更なる課題をいただいた気持ちです。

 ドイツの環境問題は、ライン川の上流で化学工場から汚染廃液が流され、大変な汚染が起こった時に端を発しているとのことでしたので、私の地元・川崎も同じような状況だったと思います。しかし、川崎はいまだに環境汚染の渦から抜け出せきれていないように感じられ、そこのどこが違うのかを探す旅でもあったかもしれません。

 ドイツは間違いなく仕組みづくりが上手で、環境立国の名にふさわしいとは思いますが、でも日本も負けないくらい頑張っていて、企業や行政を初め、地方でもさまざまな取り組みが行われています。ただ、うまくいっていないのは、市民の一生懸命な気持ちと、制度などの仕組みづくりが、うまく噛み合っていないからだろうと思っています。
 たとえば、組織の仕組みが、上から下への一方通行であること。現場の意見が、上位意志決定者へ届きにくいこと。これらのことから、結果的に判断が遅れ、環境の悪化に対応しきれず手遅れになったり、スタートが遅れて、回復のために著しく労力を必要とする事態を招いたりするケースが上げられます。これらの仕組みを改善しない限り、自然に対する破壊は歯止めが効かず、解決に大変な苦労をしなければならなくなりかねません。
 ことに地球温暖化のことについては、緊急の課題であるにも関わらず、具体的な解決策や有効手段が出てこないのは問題です。一刻も早く、国の行動指針を出してもらうのも大切ですが、国の政策を待たなくても、地域でできる行動は、地域から始めるようにしていかなければならないと思います。変革を起こせるとしたら、中央からではなく、地域からなのだ、地元を愛する地域に活躍する人たちの力があってこそなのだと、ドイツの現地を見て回って、強く感じています。

 それとともに、あらためて考えさせられたのは、日本の政治に対するある種の無垢さでした。日本は先だっての選挙の投票率を見ても、まだまだ政治的に幼く、民主主義の恩恵を享受するところに達していません。投票したところで、日本は変わらない、と思ってしまっていることも大きな問題です。もっと一人ひとりが自覚をして、行動に移していく強い意志が必要です。
 こういった政治などの取り組みも含めて、一歩ずつ対応し、やがて大きな力になれればと願っています。

 最後になりましたが、今回の研修で、志を同じにする各地域の仲間と出会い、夜中過ぎまで意見を言い合い、次の日の議論に備えたり、お互いの悩みを語り合いました。毎日、大いに笑い合える明るいメンバーだったと思います。気持ちが重なり合う刺激的な9日間でした。女性の参加者は一人だけということで、みなさまにも気を使っていただいた面もあったと思っております。本当に感謝します。また、それぞれの地域で頑張っていける仲間たちだと思っています。私も頑張ります。時々は、声をかけあって、励ましあっていきましょう。
ありがとうございました。

Prima!




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