セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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活動のご紹介

環境ボランティアリーダー海外研修

2007年(平成19年)第10回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 宇都宮市役所
三浦正宏 さん

この研修での目標

日本は,世界でも特に環境に感心の高い国です。全国各地で環境を守る活動が進んでいます。今回の研修では,積極的に環境保全活動を行う市民をどのようにして増やして行くのかを学ぶことが目的です。
 また,地球温暖化問題をはじめ,地球規模の環境問題に対する取組み方法も多様化しており,施策の優先順位など,行政のみでは政策判断が難しくなっているため,市民,事業者,行政の連携により,各々が主体的に取組むことが求められているため,環境先進国と呼ばれるドイツの現状を学ぶことが目的です。


ドイツにおける環境保全活動の背景

 ドイツの地に降りたって実感したことは,本当に平坦で広大な土地だということです。移動の電車,バスの車窓から見る都市,郊外,農村に至るまで平坦にうねった土地が続きます。緩やかな丘の頂から教会を中心に,独特な朱色い屋根と白い壁の伝統的な町並み,ふもとには一面の葡萄畑と手入れされた森が広がります。民家には奇麗にガーデニングされた庭に大輪のバラが咲きそろっていました。最近の取組みで,確かに高速道路沿いには発電用の巨大風車が各所で見られ環境先進国の片鱗が見られますます。
 ただし,一見綺麗なこの景色ですが,ほぼ100%人の手が入っています。
 18世紀,農業の生産性をあげるため多くの草原が焼き払われ,森の木が次々と切り倒されました。1899年に野鳥保護のため野鳥の会が結成されました。この野鳥の会がNABUの前進となります。日本との違いは,野鳥保護にとどまらず,自然全部を守ろうという,懐の深い考えに発展していったことです。1990年に東西ドイツが統合し,野鳥の会も統合しました。東ドイツの5支部からの提案によって,野鳥だけでなく野鳥の住める自然を守り将来に引き継ぐことを目的に,NABUを新たに結成しました。今回は,準備不足で検証できませんでしたが,東西ドイツの経済的、特に工業化によって引き起こされた森林などの自然破壊が東ドイツでは深刻になっていたことが推測されます。
 また,ドイツと日本の町並みで大きく違うのは,ドイツに中小河川がほとんど見られないことです。その代わり,ドイツの父なる川と呼ばれる湖のように広大なライン川が流れています。多くの町や村はこのライン川沿いに点在しています。ドイツでも,1970年代まで工場廃水,生活雑排水が未処理のまま流されていたそうです。1971年の夏に突然大量の魚類が死に,まさしく死の川となったそうです。このことをきっかけに自然及び環境の保護に市民の多くが関心を持ち,連邦法である自然保護法が制定されました。
 州が道路等の公共工事を行う際は,自然保護法の規定により州が申請した団体を審査し,許可された団体に公聴することを義務化しています。
 今回研修したドイツの最大規模のNABU,BUNDはこの公聴許可団体です。
州が公共工事を行う際,これらの許可団体に対して公聴を行わなかった場合は,州が罰金 を払わなければなりません。
 NPOが働きかけたことで,ここまで行政が踏み込んでいることも,ドイツが環境先進国と言われる理由のひとつでしょう。
 しかし,本当にドイツが環境先進国と呼ばれる理由は,それ以外にあることを実感できたのが今回の研修での大きな成果です。その理由は次の通りです。

  1. 行政の説明責任能力が高い
     今回訪れたRP州の環境情報センターのホーン氏によると,ドイツ人は①「効率性」②「安定性」③「満足度」を重視して物事を考えるそうです。エネルギー問題を例に挙げ,「①は天然資源がないのでエネルギーを節約する。②は原点に立ち返り唯一のエネルギー源である太陽エネルギーと風力をはじめとする再生可能エネルギーを開発する。③は地球のエネルギーは有限なので限度を知って,今の生活水準に満足する。」と力説していました。
     また,ごみ問題は解決したと言いきってしまうのも日本の行政では困難です。
    実際に解決したのかは別として,行政担当者が理論的に説明し,毅然とした態度で,環境を守る強い意思とメッセージを発信していることに大きな違いを感じました。

  2. 大規模な環境NPOの役割
     ドイツではNABUやBUNDといった日本に見られない,規模の大きな組織化されたNPOが根付いています。このような組織は,行政や企業と対等に向き合えることが大きな違いです。
    例として,総延長の長いライン川の自然を守ることは,地域グループだけでは困難です。少なくとも州単位の具体的な取組みが必要です。運河として深くて直線的な川となってしまったライン川を,運河として利用可能なまま,可能な限り元の砂浜や島の多い川へと回復することが目的です。元どおり復元することはできなくとも,より自然に近い状態に戻すことで,元来そこに住んでいた鳥や虫,動植物などが帰ってきて,その土地独特の生態系が回復します。このような大規模な取組みは,州と対等に交渉する必要があります。専門的な調査分析,プレゼンテーションを行わなければなりません。そのために人,物,金を充実させています。

  3. ドイツ人の意識の高さ
     環境への意識が高いだけでなく大規模環境NPOや行政の姿勢が違いました。大規模環境NPOでの意思決定は,問題意識を持った地域のグループからの提案を持ち寄って,州ごとに多数決により優性順位をつけ,確実に取組むのです。その取組みは実践を一番に考え,多様な固有生物がいる生態系を保護・回復し,自然と共生することを目指しています。明確な達成期間と目標を設定した事業計画が提案され,事業を実行する為に大規模環境NPOが行政,事業者と可能な限り連携し,資金調達をはじめ可能なすべての手段を講じていることです。
     また,それを将来の世代に引き継いで行くために.FOJ研修制度が設けられ青年層が1年間環境関係の最前線に派遣され,実践の中で学べる仕組みが整備されています。ただし,これは環境に限ったことでなく社会福祉の分野で同様の制度が維持されており,近年,国が存続するために重要となった環境分野についても整備されたものです。制度で強制されたものでなく,将来を担う若者が自発的意思で環境を学ぶ機会が与えられています。
     実行可能な計画を自ら提案し決定し,無理なく達成することに意識の高さを感じました。


日本とドイツの比較およびビジョン

 地域での環境保全活動では,日本の現状も,ドイツのとひけ劣らないほど活発に行われています。また,太陽電池をはじめとする環境保全技術は世界一の水準です。
 ドイツとの大きな違いは,地域の環境NPO等が連携し大きな流れとなって社会を動かすまでにいたっていないことです。環境問題が複雑で難解なことが原因の一つです。
 環境NPO等が多くの人が共感できる明確で印象的な取組みを,ドイツのように提案実行することで,日本は環境先進国の仲間入りができるでしょう。
 今回,研修に参加するため全国から6人の環境リーダーがg参加しました。研修も10回目で50名近くの方が参加しているそうです。地域の環境保全活動を支える,志を同じくする環境リーダーが環境の大切さと,実際にどんな取組みが必要なのかを,市民や行政に今より上手く提案することができるようになれば,近い将来,日本が世界に向けて環境の大切さをさらに発信できる国となるでしょう。


日本に導入可能な活動やマネジメント

 日本で今すぐ,環境団体が連携し大きなプロジェクトを実行することは難しいでしょう。
まずは,組織の強化が重要です。組織強化の為に重要なのは,PRだと思いました。
 ドイツで魅力的なパンフレット類を多数目の当たりにしました。また,ドイツでは深刻なテーマはポスターにしないなど,広告物によるPRの手法まで研究されていました。
 団体の使命や事業の意義を,強く訴えるパンフレットの作成が必要です。日本でも良くできたパンフレットは皆さん作っていますが,絵を一目見ただけで引き付けられるポスターやパンフレットにはさらに磨きをかけることができます。特に今回ドイツ語が読めなくても写真や絵で全て何を言っているのかは伝わりました。広告の専門業者に依頼するのが良いかもしれませんが,環境への関心が高いデザイナーを増やすため,教育的効果も考え,デザイン専門学校の学生を対象としたグループを結成して,世界の広告物を研究し,全国の環境団体からデザイン依頼を受ける活動を提案します。 
 この取組みはすでに始まっているのかもしれませんが,僕のアンテナにはかかっていないので,ドイツで行われていたお祭りやイベントでの環境情報スタンドに各団体が取組みを進めることを提案します。
 そのためにもお互い顔の見える環境団体のネットワークはどんな仕組みであれ必要不可欠なので,まずは地区でのネットワークづくりを進めることを提案します。


日本の環境ボランティアを支援する新たな仕組み

 日本の環境保全活動の最前線で活躍している環境リーダーの皆さん達と研修を供にすごし感じたことは,ドイツのように市民活動に長い歴史がないので,設立から携わっているリーダーと既存活動に参加したリーダーと言ったように,各リーダーによっておかれた状況が違っているため,悩みや課題も大きく違っていることです。
 活動の中核を担うリーダーに事務的な負担が大きく,組織目標の再確認などを日常的に行うことが難しいのではないかと感じました。
 組織の外部に対話相手がいることで,精神的にも余裕が生まれたり,発想の転換がはかれることを実感しました。
 議論と対話と共感が活動継続につながると思いますので,格段体感の連携をひろめ,各団体の魅力を多くの人に知ってもらうために,やはり,プロジェクトのコンペを行うことを提案します。
 各団体・個人が自由課題で1ページの簡単な企画書を,1ページの団体・個人の紹介を作成し,持ち寄って雑誌とし企業や自然食品販売店,大学生協で配布します。読んだ人の中で,この企画に賛同してもらった人に,投票と寄付を依頼するのはどうでしょうか。投票で企画に順位をつけますが,記載したプロジェクトを実施は当面目標としません。目的は,この試みを通じて企画書を作成した環境リーダーが活動の原点を再発見できたり,全国の仲間のビジョンに互いに共感したり,広告のスキルアップができたりといった効果を期待しているので,支援のための新しい仕組みとして提案します。


研修全体を通じて感じたこと

 今回,私は行政の立場として参加しました。環境法令や行政の環境保全事業が,意識が高く活動もしている環境リーダーにあまり理解されていないことを実感しました。
 説明責任を果たすことの難しさを痛感すると共に,環境分野では一般の市民に分かりやすく十分な情報を広報しなければならないのは,行政も環境団体も立場は変わらないことを再認識しました。お互いの情報を積極的に出して,特に活動していない一般の人が共感してくれる事業を実施することが重要だと感じました。
 私にとってこの研修で,実際に行政と環境ボランティアリーダーが対話し,成果を生み出すための課題を整理することがもう一つのテーマでした。はじめはやはり,基本的知識分野の食い違いから,上手くコミュニケーションがとれませんでした。研修を終了した今,それなりに打ち解けて対話が出来るようになったのではないかと思います。実際の対話では,コミュニケーション能力の向上以上に,8日間行動を共にして共通のテーマに取組んだ事実が良い結果につながるものだと実感しました。
 単なる意見交換をしても,円滑なコミュニケーションとはなりません。環境NPOと直接対話する機会を増やすことが最も大切だと気づきました。
 そのことを年頭に,自身の環境法令についてのインタープリテーション向上と,対話の相手に対する事前の情報収集が大切であることに気がつきました。
 最後に,私達の社会の為に環境への取組みは欠かせません。ただし,取組みが一般へ十分に普及していないのも事実です。無理無く一歩一歩課題を解決していくためには,今後も、企業や環境以外のNPO組織の戦略などを引き続きとり入れて行くよう対話を進めて行きたいと思います。



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