セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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活動のご紹介

環境ボランティアリーダー海外研修

2009年(平成21年)第12回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 NPO法人 コドモ・ワカモノまちing
中鉢 妙子 さん

I.今回の研修のミッション

 NPO法人コドモ・ワカモノまちing(以下、まちing)を設立して一年半、チームで心を合わせて、質量共にある程度の成果を生み出すことができた。そして、次のフェーズに成長していくために、今何をすべきか、これが私の大課題である。今回の研修で得たヒントや目印を洞察し、具体的な解決案を見出し、実行していく。 そのうちの中課題として二つあり

(1)事務局基盤の強化(ファンドレイジング)
 事業が増えるごとに日々の業務が肥大化。事業費用のほとんどを助成金から捻出しているため、事務局人件費が十分に確保できず、本来マネジメントに集中すべきであるとわかっていながらも、日々オペレーション業務に追われていた。助成金や補助金は、利用用途の科目などが限定され、おもに固定費が例外となる傾向があるため、事務局の基盤を強固にするためには、ファンドレイジングが必要。しかし、ファンドレイジングを実行するコスト、マンパワーが捻出できず事務局体制が拡大できない、事務局体制が拡大できず事業を拡大できない、という悪循環が続いている。このスパイラルを脱するには、どうしたらいいのか。小さな市民団体からスタートし、国政にまで影響を与えられるほどの大組織に成長したNABUやBUNDだが、雪だるまのように自然に組織が大きくなったのではなく、何度かビックバンのような成長点があったに違いない。その具体的な施策を洞察し、まちingの最初のビックバンを起こしたい。

(2)事業基盤の強化(人材育成、リクルーティング)
 まちingの事業遂行の上で、ボランティアスタッフの存在は欠かすことができない。イベントやワークショップなど、多くの若者たちがそれぞれの個性を生かして活躍してくれている。優秀な人材に支えられ、行政や企業などあらゆる協働依頼が増えている一方、マンパワーが足りず、せっかくのチャンスを逃すことも増えてきた。現在のクオリティを下げることなく、マンパワー数を増やすことはできないだろうか。

(3)組織基盤の強化(経営戦略)
 寄付文化の発達しているドイツでは、ドイツ市民の40-50%が常に何らかの形で寄付をしている。日本ではまだ普及が浅いが、ファンドレイジングアカデミーにおいて学んだような遺産寄付や誕生日、結婚式などの寄付などへの働きかけのひとつとして、企業の設立○年記念日をチェックし、そこに向けてこちらから働きかけるという工夫も必要だということを学んだ。
 業務が積もる中、どうしても多くの会員に情報を発信するとき、効率性を優先した結果手を抜きがちで、同じような文言の案内を毎回送ってしまったりしてしまいがちだが、敢えてここには時間と労力をかけ、単なる活動資源を得るための会費獲得ではなく、「あなたにしかこれはできないことだから、協力してもらいたい」「あなたの協力に団体として心から感謝している」という気持ちを持ち、対応する環境づくりを行う必要がある。すべてに手書きを添える、名前を個別で書く、誕生日の際に一言添えて個別の会員の特典をつくる等、時間的、人数的制約があるなかで、そうした一つ一つのきめ細やかな配慮を活動の随所に取り入れているかどうかを把握しながら業務を遂行するとともに、常に自身で実践し続けてそれを見せることにスタッフ自身もそういう動きができるような組織の雰囲気や意識付けを図ることは地味ながらとても重要なことだと感じている。
 また、プロジェクトにスポンサーとして協力いただいた団体であるということを、さまざまなシーンで発信する働きかけには細心の注意を払うことも忘れてはならない。


U.ミッションに対する洞察

(1)事務局基盤の強化(ファンドレイジング)
ステークホルダーがNPOに求める要素:先駆性、市民への啓発力、モデル事業として広域の波及効果、社会的意義、計画実行性
企業スポンサーを獲得していく上で、ロゴのマークや企業の成り立ちの背景など、小さな共通点、糸口も見逃さずにアンテナをひろげていく。
自分たちの行動を常に社会に発信し続けることの大切さ(プレスリリース、ステークホルダーへの報告)
会員へのアカウンタビリティ→当団体は会員数が少なく、顔の見える関係の会員ばかりで、顔を合わせる機会も多く、つい甘えから、説明責任を怠っている。年次報告書も、最低限の情報しか掲載せず、親切な資料とはいえない。今後は「ありがとう」の気持ちをこめたプレゼントづくり、という気持ちで作成する!

会員属性のデータマイニングが重要→社会的信頼、説得力を裏付ける。協力者の発掘。
さまざまな手法がある中で、政治や経済情勢に左右されることなく、安定した資金調達をするべく、まちingとしては、企業との商品開発に力を入れていきたい。ファンドレイジングのターゲットには、大きく分けて個人・企業の二通りあるが、情緒に左右されやすい個人ではなく、企業に重点をおく。そして同じ企業でも、目的によって費用のねん出先が、コストセンター(CSRやPR・広告)とベネフィットセンター(商品開発)の二種ある。前者は企業にとって業績が悪化した際に最初に削られる部分であり、後者は逆に、業績回復に向けてより一層注力される部分だ。そのため、コモディティ商品などを中心に、チャリティ機能付き商品開発や、ギフト市場においての商品開発を行っていきたい。今回の研修では、会費や寄付の重要性を学び、そのさまざまな手法はとても参考になった。しかし、やはり、寄付文化や税制、国民性などの違いを考えると、今の日本国内において、会費や寄付金に依存した組織経営は危ういように感じた。また、まちingの事業特性を考えると、事業自体の価値に対価を支払ってもらうことで、資金を調達していきたい。
NABUにて、「参加費無料のプログラムより、有料の方が参加率がいい」という言葉に驚いた。資金源として、寄付や会費に依存する前に、プログラムからの事業収入を上げることに注力する。有料でも参加したいと市民に思われるクオリティの高いプログラムを多く提供すればいい。商品開発をする視点で、プログラムを見直していきたい。

(2)事業基盤の強化(人材育成・リクルーティング)
組織規模が小さい時には、他団体とのコラボでアクションを起こせばいい→これまで、小規模な団体を束ねて、イベントを行うことが多かったが、企画運営の責任をすべて自分の団体でもっていたが、今後は、ある程度業務を仕分けて、任せられる団体に分配するようにしていく。そうすることで、各団体への自立支援にもなる。
プロジェクトに対して、スポンサーを付けるべく企業への営業を強化しなければ、とは以前から思っていたが、実際問題、企業へのメリットが創造できず、自分が企業の立場だったらお金は出さないだろうな、と半ばあきらめつつ、営業活動を後手に回してきた。しかし「御社とでなければできないのです」という価値や裏付け、背景などを揃えることで、実現の可能性はぐんと高まる。具体的に、どのようなアプローチで、どのように提案していけばいいかが、明確に見えた!あとは実行あるのみ!
会員獲得の訪問販売に、人材派遣へ代行したり、販売方法のトレーニングすら存在する→ここまではするつもりはないが、「うちのNPOらしさ」を的確にに語れるボランティアスタッフを増やしたいと以前から考えていたので、ロールプレイングの手法を取り入れてみたい。
FEOT制度を参考に、民間発のFEOTを日本で普及させたい。高校卒業後に進学・就職をすることが当たり前で、空白の一年を過ごすことが非常識な文化をもつ日本では、ドイツのFEOT制度をまるごと輸入しても機能しないが、大学生をターゲットにすえて、特定のボランティア活動に従事すると単位が取得できる仕組みの充実、大学との提携でNPO実習のための一年間の休学、費用免除などの制度を確立していきたい。

(3)組織基盤の強化(経営戦略)
各分野の専門家を会員や執行メンバーに獲得していく。→説得力
NPO法人の経営は、企業経営と同じようにマーケティング、マネジメントが必須。研修を終え、今回の研修での気づきやヒントを整理してみて、それらのほとんどがマーケティングや企業経営の基礎の基礎であることに気づかされ、はっとした。前職が経営コンサルタントであったにも関わらず、運営業務にとらわれて、「木を見て森を見ず」の状態に陥っていた。研修のはじめに、「企業とNPO法人は違う。NPO法人としての成長の仕方があるはずで、今回の研修では底を学び取りたい」とメンバーにシェアした際、小野さん(みどりの基金)に「NPO法人と企業は、何も変わらない。企業経営と同じ視点、緊張感で挑むべきだ」との意見をいただいた。それでもなお、その時は、実際にNPO法人を設立してみて、企業のやり方が通用しない場面に何度も遭遇してきたので、企業とNPO法人は違う、という反論をもっていた。しかし、研修を通じて、この一年で知らずに蓄積された既成概念やあきらめという垢がごっそり落とすことができた。確かに相違点はあるが、組織を経営していくという視点や感性においては、企業経営と同様の厳しさが必要であると、実感している。
会員数=現金収入としてだけでなく「民意の声」「社会への影響力」の裏付けでもある。
「今のうちの規模ではまだ早い、まだできない」部分を、やりぬく!
自分に必要な答えはドイツにも仲間にもない。自分の中にある。
既成概念の打破、「やれること」ではなく「やりたいことをやり抜く」
廃校利活用の指定管理者受託に向け動いているが、構想を練り上げる上で、今回の環境学習センターは非常に参考になった。自然の削れた土地に、客土をし、草花をおい茂らせて自然を回復させるという発想は、なかなかできそうでできない。廃校利活用のハード面においては、「行政を納得させるのが面倒、莫大な費用がかかる」などの理由から、無意識に、既存のもの(校庭、建物)を維持することを前提に構想していた。しかし、まず「自分たちが本来めざしている理想像」ありきで、ゼロベースで考え直すべき、と気づいた。本当に必要なことならば、できないことなどなく、また、「やれること」ではなく「やりたいこと、やるべきこと」を成し遂げるのがNPOだ!と実感した。



W.その他(気づき・ヒント)

「行政の勇気」
市民とは個人ばかりでなく、政治的にはあらゆる利害関係をもった団体組織であることが多い。新たな環境政策を立法するまでに、さまざまな抵抗勢力と向き合いながらも、正しい決断を遂行していく、という果敢な勇気に感動した。ホーン氏の熱のこもった言葉(無限なものなど何もない、エモーションが原動力だ、経済のサークルが全世界を支配するというのは錯覚だ)は、どれも行政マンの口からこぼれるものとは思えず、現場を知り、真実を知り、使命のままに翻弄するNPOの人のようだった。ドイツの行政は市民の啓発を、とやっきになっているが、逆に日本においては、行政の啓発が必要だと改めて感じた。否定や批判ではなく、理解や共生を前提に、行政の人たちになげかけていきたい(→ロビー活動)
あらゆる政党への積極的なロビー活動
行政とNPOは対等であるべき。そのためには市民・NPOがプロフェッショナルになること。
担当部署のキーパーソンを抑えるだけでなく、部署としては無関係でも真に環境への思いがある人をどう動かすか(例:経済省の熱い人が、環境省にプレッシャーを与えて、採決された)
義務感からではなく「好きだから」という動機は、より持続性、クオリティを強固にする。
ゆとり、オンオフの切り替えの豊かさからくる、視点や世界観の広さ、柔軟性。日本では、都市部に住む人間にとって「自然」は遠い存在だが、ドイツでは森が暮らしの一部にあり、自然の楽しさ、大切さを、子どもから大人まで知っている。環境活動に従事している人の動機が「自然が好きだから」というシンプルな出発点であることで、新規参画者のハードルが低いことも、組織拡大の一因ではないだろうか。
ボランティア活動をしている人がみな、お日様のように素敵な顔をしている。自ら進んで誰かのために、何かのために活動できる人たちは、やはり美しい人。世界中にこういった人達が沢山いるのかと思うと、心強い同士のようで、励みになる。
ドイツにおいても、行政の不理解やスピードの遅さ、政権交代による政策の振り幅、産業界からの圧力などが存在する。「環境大国ドイツ」では、政治が環境に対しての意識や理解が高いのかと思っていたが、同じである。肝心なのは、ねばり強さと情熱。



X.感想

 私のメインテーマが有機農業や食であるため、自然保護や森林保全など、テーマの偏りを若干感じた。物理的に訪問可能なエリアで適切な研修先がないか調べて、提案していこうと思う。
 事務局の小野さんの「空気を作る力、キープする力」に感銘を受けた。同じ訪問先を訪れ、同じだけの時間を過ごしたとしても、研修生各自のベースとなる心構え、緊張感、アンテナの感度などが鈍ければ、なんの収穫も得られない。私たち研修生が、限られた時間・条件の中、最大限の学びや気づきを得られるよう、小野さんが常に凛とした空気をつくってくれたおかげで、私たちは一生の財産となる学びや感性を得ることができた。
 また、今回共に過ごした5人の研修生と出あえた奇跡にも、心から感謝している。この先もずっと共に学びあい、協働していける仲間を得ることができた。




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