セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

※こちらはアーカイブ記事です。

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環境ボランティアリーダー海外研修

2009年(平成21年)第12回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 社団法人 まちづくり国際交流センター
吉田 浩巳 さん

行政の取り組み

 ラインランド・ファルツ州 州環境情報センターでは、自主規制から義務化をしてきたこと、行政の責任分野を明確にしてきたこと、縦割りではなく、環境省は全ての省と調整して政策を実施していること、環境に関する審議会にNGOや企業が入っていることなどが私の気づきでした。

1970年代に大きな事件が起こり、国民が環境に関して真剣に考えるようになった。
数十年間経済界、産業界を中心に政治が回っていた。
これを変えようとした時、産業界からのコストがかかるということで猛反発が起こった。
文明の一部が産業に過ぎないので、産業界が全体を牛耳る発言をするのはおかしいという国民感情が出てきた。
この声を政治に反映するために、一番大きな役割を果たしたが緑の政党の結成。
緑の党が立法にも深く結びついた。今日では、全ての政党が環境問題を重要政策と考えている。
国の発展は一国のみの力だけではなく、他国から様々なものを得て発展してきた。
地球はひとつしかないので、エネルギー源の奪い合いは避けるべきである。
今は、将来の世代に負担を残さないような政策実現に取り組んでいる。
継続的政策を上から言っても充分に理解されず実行されていないことも多い。
解決策として、環境NGOが力をつけてきた。
学校でも環境学習が行われ、授業の一環として外に出て行く場面も出てきた。
法整備により義務化も進んできた。
今後の方向性として物事を経済で捉えないような風土の構築を目指している。

『ドイツの環境政策』

 ヘッセン州環境相の政策担当者である Mr. Diehlから『ドイツの環境政策』 についての話を聞きました。
 「持続可能な社会」の実現には、三本柱の調和が重要なファクターになります。
(1)エコロジーに配慮した社会システムの構築、
(2)適度な経済成長、
(3)充実した社会保障システムに基づく社会の安定化
 ドイツは連邦制になっており、市町村レベルにおいても各地域で特徴があるので、連邦政府で決定した政策を地域の州ごとに決定しています。このシステムは日本とは違います。

 ヘッセン州環境省は、プロジェクトを実行していくためには実際に活動してくれる方との対話が必要だと考え、まず専門家を集め、次に現場の方、市民団体、企業に協力を求めました。審議会や理事会では、政治家や産業界の代表、市民の代表などが入り、資金調達などの重要なことを審議します。監査役は、環境庁長官と専門官が、主なメンバーには環境援助団体代表、環境保護の財団代表、WWFの代表、地域の電力会社の代表などが就任します。
 また、他の州と違って、青少年活動の課があるのも特徴です。常に専門のコーディネーターが戦略を練って活動しています。特筆すべき事項としては、プロジェクトの実行にあたっては全ての省と連携して行っており、日本のような縦割りシステムではないことです。
 2008年のプロジェクトをスタートさせる前には、事業の実行における優先順位を3000の企業やグループにアンケートを取りました。このように、市民が政策に関わっています。

 ドイツの自然保護は林業から始まりました。林業と自然保護は相反するようですが、ひとつの課で行っています。ヘッセン州も森に覆われており、自然のままの原始林が残っています。州の40%を森が占めており、その森の約75%を公共が所有しています。
 残りは民間所有ですが、これは、昔の貴族の子孫が持っているのが殆どで、民間所有の森にも規制が敷かれ、森のシステムが破壊されないことが記載されています。
 また、広い地域にわたる伐採は許可されず、伐採した面積と同じ面積を植林したところも、人工的に植林したように見せないよう工夫されています。
 農薬は、害虫の問題もありますが、例外的に許可されるものを除き基本的に禁止されています。
 林業は、州の収入になるので経済面でも続けていかなければなりませんが、環境面でのバランスを壊さないように努力しています。森林管理局は、見守っていく重要な役割を担っており、林業をしながら自然を保護していくことをコンセプトに取り組んでいます。同時に約20%の自然保護地区を維持していくためのマネジメントと、公園管理の研究開発もこの州政府の役割のひとつです。
 自然保護地域で活躍しているのが、ボランティアの協力者で、8つのNGOが協力しています。ドイツのNGOは、自然保護と景観保護で大きな発言権を持っています。

 今後の重点政策としては、持続可能な社会のために政策を出し続けていき、プロジェクトに多くの市民に参加していただきます。エネルギーに関しては、将来の課題として位置づけています。


ドイツの環境活動支援

 ラインランド・ファルツ州自然環境財団のヨハン・クレービュール氏(元NRW 州環境及び開発財団 環境担当官)から話を聞きました。

 財団の予算は200万ユーロで、独自事業として実施しています。財源はEUが50%、州が25%、自然環境財団が25%出資しています。
 NGOへの事業委託は、景観保護の手入れから大規模なプロジェクトまで大小さまざまで1000以上にも上ります。NGOの選定は、下記の3事項を基に規模に応じた組織が選ばれ、背景を吟味して金額を検討し、1年〜3年を期間としています。
(1)NGOであることを証明できるかどうか
(2)環境教育を知っているメンバーがそろっているかどうか
(3)土地を買って持ち込んだトラスト活動団体

 また、依頼を受けて、できないことも多々ありますが、新しい事業はできるだけ実施するようにしています。従来は自然保護のテーマについての事業展開をしてきましたが、自然保護だけでは時代に遅れていくという危機感を持っています。再生可能エネルギーやエコロジー農業など、今後はもっと幅広く展開していきたいそうです。

 NABUの代表であるロバート・エーゲリング氏及び、今年の初めから専従職員として環境教育及び水辺のプロジェクトを担当しているマコルフスキーさんから話を聞きました。

 このビンゲン地域周辺には1700人のNABU会員がいます。自然保護センターは25年前に、ライン川が氾濫したときに水に浸かっても大丈夫なように設計された建物で、ヨーロッパの自然保護地域にあり、人々の憩いの場ともなっています。このセンターの役割は、いかに自然が残っているかを皆さんに知ってもらい、再認識をしてもらうことです。そのための手法として、1年中子どもから大人まで参加できるさまざまなイベントを開催し、年間8000人が訪れます。「この地域にすむ爬虫類」というテーマのイベントには、12000人が来場しました。約70名の専従職員が、何らかのプロジェクトのリーダーを務めています。また、州の環境省の委託事業には、リタイヤされた多くの方に手伝っていただいています。
 企業の協力者を求める努力は常にしています。自然保護センターの事業の協力者は、フロシュという蛙のマークの洗剤メーカーです。ある冬突然蛙が現れ、しかもドイツでもまれな木に登る蛙でした。これに驚いた洗剤メーカーは、この蛙を守らなければならないと、蛙がすめる池を要望しました。こういう場所を作ったことにより、こういった地域にこういう珍しい生物がすんでいるということを広く広報しました。これに協力者も現れ、湿地帯も同時に作ることができました。

 グーゼンハイムのごみの埋め立て場では、コウノトリがエサをあさってました。今は埋立地に生ごみを処分することは法律で禁止されているので、エサになる生ごみはありません。NABUは、本来のコウノトリのエサとなるような生きものがいる場所を購入し、コウノトリのエサを確保しました。購入地は、本来のコウノトリのエサである毛虫も多く生息するようになりました。
 ドイツでは、70年代に大きな事件が起こりました。きっかけは、ライン川の汚染で、スイスの化学薬品会社が有毒なものを川に流したことが発端となって、市民団体が結束し、行政と対等なまでの組織を作り上げてきたといえます。
 浄水場の設置を義務づけたり、規制する法律を勝ち取り、現在ではラインランドファルツ州では98%が浄水場を通して流れています。ここ20年で水質はかなり綺麗になりました。


NGOの取り組み

 また、日本においては河川工事など行政が行うのが当然ですが、協定を結んでNGOが実施する場合があります。公共という概念自体が日本とは違いました。
 NGOも会員数が40万位を超えるような団体がいくつかあり、行政と協働を推進するNGOもあれば行政との協働は一切なく、行政に対して訴訟を積極的に起こして変えていこうという団体までさまざまな団体が行政と対等な立場を確保して活動している実態に驚きました。

 NGOもさまざまな角度から調査分析し、戦略を持って活動しています。イベントにおいても参加者数を下一桁まで正確に機関紙等で報告することにより信頼性を得る努力、俳優を使う広報戦略、事業を展開するためにあらゆる手段を使ったスポンサー探しを実行しています。そして、意義ある活動を周りが支えるという構造があります。
 環境NGOを公聴会に必ず参加させないといけないという法律も自分たちで勝ち取っていくなど、NGOの存在感の大きさは日本とは比べ物になりません。活動においては自己責任という概念を常に持っていて、眉間にしわを寄せてするのではなく、楽しむというスタンスも多くのNGOで感じました。

 「森のようちえん」では、人間教育のルールを自然のなかで学んでいるのがすばらしいと感じたし、遊びもみんなで公平に投票して決めるというスタイルが最も印象深かったです。民主主義の基礎、そして法整備を進めるために積極的に政策に関わっていくドイツの社会システムの基礎を感じました。
 制度の後押しもあります。例えば、何らかの裁判において、企業等が環境に付加した罰金は、環境団体に寄付しなければいけないという法律もあります。

 環境教育に取り組んでいる講師の教え方は、まさに目から鱗でした。感覚トレーニングでは、まず、小さな虫まで見るようにじっくり観察します。次に目をつぶって耳をすまします。そこで「何種類の声が聞こえますか?」と先生が聞きます。このことによりまず集中力を学ぶということでした。
 次に手をこすり合わせて、そして「両手のひらを近づけてください」と言います。私も体験しましたが、熱を感じて、引っ張り合うのも感じました。これは、ペットを扱う時にやさしくなるような肌の感覚の教育だと教えられました。聞いたことや書面で見たことは消えやすいが、触ったりしたことは長く感覚で残ります。
 また、環境教育は、環境に関する知識の持ち主ではなく、必ず教育のノウハウの持った教育者が行うということも勉強させられました。


研修を終えて

 今回の研修では町のいたるところでもさまざまな発見がありました。町を歩くと日本のよう張り巡らされた電線は一本もありません。全て地中に埋められています。又自転車専用道路の専用レーンが歩道にありますし、いたるところで自転車のパーキングがあります。駅においても自転車が自由に出入りすることができ、多くの方がエレベーターやエスカレーターも自転車と一緒に利用しています。
 また、歩道と車道の区別については、歩道が優先的に作られていますし、再生の取り組みが進んでいるペットボトルは再生品なので傷が多いに気づきます。また、オーガニック食品のコーナーには表示と説明がされていますし、ボトルのデポジットの機械も目に付きます。本屋にはエコ食品の評価や成分の月刊誌が目立つ場所におかれています。

 確かに、環境に関する意識の高い国といえるのは間違いありません。しかしながら日本との一番大きな違いは、国民性、あるいは国民の意識の高さではなく、制度作りにNGOが参画していることと制度が機能していることであると思いました。




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