セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

※こちらはアーカイブ記事です。

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日本の国立公園
樹海・富士山麓に広がる木々の海原 富士箱根伊豆国立公園
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暗黙と静寂の中、五感で感じる生命の営み〜ナイトソロ
清掃活動しながら行われたエコツアー特定非営利活動法人富士山クラブは、全国の学校や企業、自治体等を対象に、樹海の自然そしてその自然と非常に深い係りがある地元の生活、文化、歴史等々を語り、また考えるエコツアーを企画、開催しています。そのエコツアーの一つに、「ナイトソロ」と呼ばれるものがあります。ナイトソロとは、その言葉のとおり「暗闇にたった一人でいること」です。きっと長い人生の中で暗闇の森の中たった一人でいることなど経験したことのある人の方が少ないことでしょう。

まず、インタープリターを先頭に縦に一列に並び、前の人の肩に手をのせ、人間のつながりを頼りに前に進みます。暗闇を感じるため余分な明かりをつけることは決してしません。そして、2〜3メートル間隔で列の後方から1人ずつその場所に留まるのです。暗闇に1人でいるのは、たった数十分という時間ですが、体験する人によって時間を感じる速度は様々なようです。時には、暗闇が怖くて泣き出してしまう子どももいます。

様相を変える雨上がりの樹海このエコツアーのルールはただ一つ、人と話をしてはいけないということです。視覚と言葉を封じられた私たちは、次第に五感を研ぎ澄ますようになります。そしてそこには騒音に囲まれた日常では決して出会うことのない時間が待っているのです。しだいに月明かりに照らされた暗闇に目が慣れ、風の音が聞こえ、夜行性動物の気配を感じ、土の匂いが自然に体の中にすっと入ってきます。自然が繰り出す様々な息吹〜まさに生命の営みです。

このように、「一度入ったら出てこられない」と恐れられていた青木ヶ原樹海が、現在は子どもたちの自然体験学習のフィールドとして利用されるようになったのです。樹海をゆっくりと歩きながら感じる“生活のリズム”、いままで見たこともないような動植物への出会いに対する“感動や好奇心”、そして樹海を歩くという未体験を通して体感する“人生のドラマ”…。樹海は、本当にいろいろなことを私達に問いかけ、また教えてくれます。

 
生命の息吹を感じて
豊かな森の象徴「ギンリョウソウ」樹海の出口へ向かう途中、密やかですが精一杯光輝いている、ギンリョウソウ別名「ユウレイダケ」に出会いました。青木ヶ原樹海は、決して自殺者や死といったイメージのみが先行すべき“暗い森”ではありません。樹海に入り、倒木更新や動植物たちの力強い営みを感じることが出来れば“生命力溢れる森”であると気が付くはずです。
 
樹海の森へと近づく「鬼押し出し」
 
多種多様な動植物が息づくブナの森「白神山地」

1137年前の噴火後、まるで火山火口で鬼が暴れ岩を押し出したような印象を与える長野県、群馬県にまたがる浅間山の“鬼押し出し”の光景にも似た、灰色一色の荒涼とした世界から、やがて現在の青木ヶ原樹海へと成長しました。そしてこれからまた何千年というはるかな時を経て、白神山地のような豊かな広葉樹の森へと変遷しようとしているのです。火山列島日本にとってこの青木ヶ原樹海の光景は、豊かな森へと成長する一過程であり、まだまだ若い森の象徴であるかもしれません。この樹海の成長をこれからもずっと見守っていたいものです。


協力
富士山クラブ・エコツアーセンター

写真協力
環境省 白神山地世界遺産センター(西目屋館)

参考図書
『日本の名山 13 富士山part1』(串田孫一/今井通子/今福龍太編 博品社 1997)
『富士山よもやま話』(遠藤秀男 静岡新聞社 1989)

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