セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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日本の国立公園
生命を育む水の大地“釧路湿原” 釧路湿原国立公園
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日本の原風景をもつ最大の湿原風景
昔の日本の風景はこんなヨシ原が秋の湿原の風景 釧路湿原を一面に覆う「ヨシ原」は、かつて日本が「豊葦原(とよあしはら)の国」や「秋津島(秋津はトンボの古名)」と歌われたことからも、日本の原風景を形づくっているともいえます。このヨシやスゲを中心とした低層湿原がほぼ全域を占める一方、蛇行する川沿いに点在するハンノキ林を見ることができます。ツルコケモモやヤチヤナギを主とする中間湿原はわずか点在するのみで道もなく、容易には近付けません。ミズゴケを主とする高層湿原もごく一部でしか見られませんが、ここでは春から夏にかけてイソツツジやヒメシャクナゲなどの草花が咲き揃い、山岳地の「高山植物のお花畑」を彷彿とさせる景観を目にすることができます。また、モウセンゴケやタヌキモなどの食虫植物も分布しており、約600種の植物がこの湿原には生育しています。


スゲの株からできるヤチボウズ高層湿原の夏を彩るトキソウ低層湿原で夏風にそよぐサギスゲの実


多様な生き物たちの命を支える釧路湿原
ヒマワリの種をほおばるエゾシマリス 恩根内のビジターセンターから窓の外を眺めると、アカゲラやハシブトガラ、時にはエゾシマリスの姿を見ることができます。この他にも湿原を代表する野生生物にはタンチョウがいる他、北海道に100羽程しかおらず絶滅の恐れがあるシマフクロウなども生息しています。北海道全域で見られるエゾシカやキタキツネも湿原内に食料を求めて現れ、川には日本最大の淡水魚で幻の魚とも呼ばれるイトウなども生息しています。釧路湿原だけにしか生息しない氷河時代の遺存種とも呼ばれるキタサンショウウオやエゾカオジロトンボなども見られます。昆虫は確認されているだけでも1150種がおり、湿原は、水辺で繁殖活動を行なうトンボ類の宝庫です。絶滅の危機にある生き物を始め、湿原は今後も新たな種が発見される可能性を秘めています。

釧路湿原へ3月下旬に渡ってくるアオサギ保護のため「シマフクロウ基金」も創設されている産卵中のキタサンショウウオ

豊富な水を蓄える湿原の特徴として、このように実に多様な生き物の命の営みがあげられます。そしてタンチョウに代表される水鳥のように、現在の釧路湿原の自然環境だからこそ生息が可能となる種も少なくありません。これは、湿原の環境が自然的・人為的に関わらず変化することで影響を受け、時には絶滅が危惧されるといった動植物が多いことも表しています。

湿原の保護と利用
ヨシ、シゲが美しく広がるコッタロ湿原 釧路湿原の特徴は生物の多様性だけではありません。水の浄化作用や保水機能、大気の二酸化炭素を吸収・貯蔵する機能、さらに地域の気温を調節する機能ももっています。湿原の蓄えた水はそこに生きる生き物だけでなく人々の生活も潤し、湖や川の魚は生活の糧として人々を時には守り支えてきました。あらゆる形で、そこに暮らす人々は湿原と密接に関わってきたのです。

そして地元の人々が未来に向けて選択した方向が、釧路湿原の「保護と利用の両立」でした。日本は1980年(昭和55年)6月、釧路湿原をラムサール登録湿地に指定し、同条約に加盟しましたが、このような国際的な認知を目指す動きになったのも、大切な湿原を守っていくための保護の一手段として、地域の人々からあがった声に支えられたものだったのです。同様に、人々の間では自然公園への指定を求める動きも高まり、ワンポイント ラムサール条約第1号登録湿地となった7年後に国立公園に指定されました。


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