セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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日本の国立公園
生命の歴史を今に伝える日本の地中海 瀬戸内海国立公園
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『古代からの使者』スナメリクジラ
好奇心旺盛なスナメリクジラ ワンポイント スナメリクジラは、瀬戸内海の生態系ピラミッドの頂点となる生物です。イルカの一種で、体長約1.5メートル、銀白色の体をしています。スナメリクジラは、瀬戸内海だけではなく、東京湾〜仙台湾、伊勢湾〜三河湾、瀬戸内海〜響灘、有明海〜橘湾、大村湾付近にも生息しています。日本列島の各地に生息している理由は、日本列島が昔、中国大陸と一体となっており、その後分断されたことを示しています。
瀬戸内海一帯には、20年前、約4,900頭いましたが、現在では、約1,000頭にまで減少してしまいました。今では、広島県竹原市沖にて国の天然記念物に指定されています。
減少した主な原因としては、イカナゴなどのエサが減ったこと、海洋汚染、誤ってビニールを飲み込んだ誤飲事故などが考えられています。昔は、このスナメリクジラを利用した漁もありました。スナメリクジラが追うイカナゴをねらって集まるタイ、これを漁師の人たちが捕ったのです。ところが、このイカナゴがすっかりいなくなってしまい、漁獲量も随分減少しました。
どうしてこのように減少してしまったのでしょうか。イカナゴと同様、荒い砂地を好む「ナメクジウオ」という生き物を通して考えてみましょう。


『古代のタイムカプセル』ナメクジウオ
長さ2〜3センチほどのナメクジウオ ワンポイント ナメクジウオは、スナメリとは逆に、瀬戸内海の生態系ピラミッドの底辺に属する生き物です。
脊索動物門頭索動物亜門に属する動物で、脊椎動物に変わる前の脊椎があり、生物の進化の道筋を示していることから「進化の生き証人」と呼ばれています。その道筋はまだ解き明かされておらず、ナメクジウオの減少は、進化のしくみを知る上でも科学的に問題となっています。房総半島から九州までの太平洋岸(瀬戸内海を含む)と丹後半島以南の日本海側に分布しており、1928年(昭和3年)には広島県三原市有龍島で国の天然記念物に指定されました。
ナメクジウオは、水深約75メートルほどの浅海の荒い砂でできた海底に潜って生息します。有龍島周辺が天然記念物に指定されたのは、ナメクジウオがたくさんいるという理由からでしたが、現在ではナメクジウオを見ることは大変難しくなりました。

調査は、大干潮時に能地堆が現れるわずかな時間で行われる 原因としては、昭和60年代以降盛んに行われた海砂の採取などが挙げられています。砂の採取は、ポンプで砂ごと吸い上げ、泥だけ海水とともに捨てるという方法で行われました。当然、砂は減少し、泥と混じってしまいます。ナメクジウオは、砂地でしか生息できないため、泥が混じったりすると口や腸につまり、生きることができないと考えられています。
三原市のナメクジウオ生息地は大潮干潮時にだけ現れる、能地堆(のうじたい)という広大な砂地です。きれいな砂地は、絶好の砂採取地でもあったため、盛んに砂採取が行われました。これにより、潮流も変わったため一帯の生態系も変わりました。
ナメクジウオの生息地は、イカナゴの生息地でもありました。そのため、イカナゴが激減してしまった理由も同じ理由と考えられています。こうして、スナメリクジラの減少にもつながっていったのです。現在では、砂の採取も制限され、地元では、環境の回復に向けての調査活動が続けられています。



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