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わが街の環境マイスター
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木村さんにとって琵琶湖はまさにマザーレイク。世界中どこよりも落ち着ける水辺だ
釣り人の聖地・琵琶湖でごみを拾う
木村建太さん
プロアングラー、淡海を守る釣り人の会代表

琵琶湖を愛する釣り人たちが自発的に始めた清掃活動。いまその活動は、琵琶湖の環境を守るために大きく広がっている。


釣り人の憧れの湖
 

日本最大の湖、琵琶湖は、約400万年の歴史をもつ世界で20ほどしかない古代湖の一つである。多くの固有種に恵まれた動植物の宝庫であり、琵琶湖・淀川水系にくらす人々にとって大切な水源でもある。

淡海を守る釣り人の会は、この琵琶湖畔で清掃を中心とした活動を展開している団体である。代表を務める木村建太さんは、プロの釣り人だ。1年のうち半分ぐらいを海外の、残りの半分を国内の水辺で過ごし、「年のうち300日はどこかしらの水辺にいる」という木村さんだが、琵琶湖への思いは格別だ。

 

「じつは琵琶湖は、日本中の釣り人にとっての最終目的地なんです。ぼくが琵琶湖に出会ったのは小学校4年生のとき。当時、住んでいた京都から、父が連れてきてくれて釣りをしました。それで釣りが大好きになり、電車で琵琶湖に通うようになりました」

初めて渡米したのは21歳のとき。以来、日米の各種トーナメントに挑み続けた。プロへの道は厳しかったが、琵琶湖は日本中から釣り客が訪れるだけにガイドの需要が多く、ここを拠点にすることで、やがて日本でも有数のバスプロとして知られる存在になり、ガイドだけでなく、釣り具のプロデュースやガイドブックの執筆も手がけている。


釣り人に苦言のSNS
 

琵琶湖の釣りに精通した木村さんは、釣り客のマナーに危機感を覚える。ごみを捨てたり、迷惑駐車をしたり、漁の邪魔になったり……地域の人々にとって釣り人は必ずしも歓迎される客とはいえないのが現実だ。

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清掃活動の中心は琵琶湖南岸。生活ごみがほとんど
 

淡海を守る釣り人の会の活動は、2015年、釣り人として琵琶湖に通っていた2つの家族が、琵琶湖岸でごみを拾い始めたことから始まった。徐々に仲間が増えたが、むろん当初は会の名もない。共通するのは、琵琶湖のために少しでも自分たちにできることをしたい、という思いだった。趣旨に賛同して、2年目には木村さんも活動に参加するようになった。

琵琶湖の水位や瀬田川洗堰の放流量を知るために、木村さんがいつもチェックしているものがある。国土交通省の「ウォーターステーション琵琶」から発信されるSNSだ。あるとき、木村さんはこのSNSで、釣り人のごみのひどさを訴える声を目にした。

木村さんからそれを教えられた会では、自分たちの活動のことを知ってもらおうと、ウォーターステーション琵琶に連絡をとった。ありがたいことに快く迎えられ、地域のボランティア団体と一緒に清掃活動をする機会を得た。2017年2月には、滋賀県主催の「淡海の川づくりフォーラム」に釣り人として初めて参加し、「マザーレイクフォーラム賞」を受賞した。それを機に、単に「釣り人による清掃活動」だった団体名を正式に「淡海を守る釣り人の会」と改め、昨年11月に木村さんが代表に就任した。


見えてきた“岸側”の景色
 

「さまざまな人たちと一緒に活動するようになって、自分自身も視野が大きく広がった」と木村さんはいう。

「それまで、琵琶湖で釣りをしているとき、釣り人以外の方の視点がわかりづらかったのですが、交流するうち、琵琶湖にかかわる多様な方々のの想いが見えてくるようになりました。たとえば、船を走らせていても、あそこでバードウォッチングをしている人の邪魔をしてはいけない……など。琵琶湖を大事に思っているのはみんな同じだと実感することができた。これは琵琶湖がみんなをつないでくれた結果だと思います」

水辺で長い時間を過ごす釣り人は、水辺に対するセンサーの感度が高い。琵琶湖で釣り人ができることはまだまだあると木村さんは考えている。今後は清掃だけでなく、湖畔の環境をよくする活動に手を広げていくつもりだ。

その一つが、「滋賀セブンの森」づくりだ。昨年11月、会は、滋賀県、守山市、セブン-イレブン記念財団と4者連携協定を結び、琵琶湖を取り巻く環境を少しでも良い状態で引き継ぐために10年間ともに活動することを決めた。第1回の活動には総勢350人が参加して清掃に汗を流し、今年6月の第2回活動は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため小規模にとどめたものの、清掃のあとに「水辺の小さな自然再生」を試みた。

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釣り人の清掃活動を多くの人に知らせるのが第一歩。「釣り人がいれば水辺がきれいになる」が常識になる日を目指す
 

「野洲(やす)川はもともと北流と南流に分かれていましたが、幾度となく水害が発生したため、改修工事がおこなわれて現在の放水路ができ、もともとあった南流と北流は廃川(はいせん)となりました。廃川になったあとも水の流れは残り、魚が産卵できるような場所になっていました。しかし手入れがされておらず、琵琶湖とのアクセスが悪くなっていたため、今回の水辺の小さな自然再生で水路の再生をしました。かつての琵琶湖には内湖がたくさんあり、そこにヨシが茂って魚のゆりかごの機能を果たしていました。滋賀セブンの森で10年かけ少しでも生き物の棲みやすい場所にしていきたいと思っています」

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第1回滋賀セブンの森の活動には、淡海を守る釣り人の会147人を含む350人が集結、湖辺の清掃をおこなった
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第2回の活動で取り組んだ水辺の小さな自然再生。旧野洲川と琵琶湖を結ぶ水路の障害物を除き、魚が通れるようにする
CONTENTS
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コンテンツ
・エコツーリズムで館山を元気に 竹内聖一さん NPO法人 たてやま・海辺の鑑定団 理事長
・竹林を舞台に地域の輪をつなぐ 豊田菜々子さん NPO法人 環境保全教育研究所 代表理事
・震災10年 子供たちの声が響く海を取り戻す 伊藤栄明さん 松島湾アマモ場再生会議 副会長
・都市のみどりを次世代へ 村田千尋さん 特定NPO法人 みどり環境ネットワーク! 事務局長
・釣り人の聖地・琵琶湖でごみを拾う 木村建太さん プロアングラー、淡海を守る釣り人の会 代表
・土木工学が出発点。海辺の環境保全に挑む「ハゼ博士」 古川恵太さん NPO法人 海辺つくり研究会 理事長
・故郷の廃村に新たなにぎわいを 松浦成夫さん NPO法人 時ノ寿の森クラブ 理事長
・荒れ果てた藪を、ホタルが舞い飛ぶ森に 伊藤 三男さん 学校法人田中学園 学校法人緑丘学園 監事
・美ら海への思いを大地に植える 西原 隆さん NPO法人 おきなわグリーンネットワーク 理事長
・都市の貴重な干潟を守るボランティアの力 橋爪 慶介さん DEXTE-K代表
・浜辺のごみ拾いを20年で大きな運動に 鈴木 吉春さん 環境ボランティアサークル 亀の子隊代表
・「美味しい」を手がかりに大阪湾を再生 岩井 克己さん NPO法人 大阪湾沿岸域環境創造研究センター 専務理事
・環境保全活動を通して、成長する若者たち 草野 竹史さん NPO法人 ezorock 代表理事
・主体性のある人間を自然の中で育てたい 山本 由加さん 認定NPO法人 しずおか環境教育研究会(エコエデュ) 副理事長兼事務局長
・付加価値の高い木材で山を元気に 藤﨑 昇さん NPO法人 もりずむ 代表理事長
・自然を大切にする人を育てる幼児教育 内田 幸一さん 信州型自然保育認定園「野あそび保育みっけ」 園長
・企業経営で培った組織のマネジメント 秋山 孝二さん 認定NPO法人 北海道市民環境ネットワーク 理事長
・移住者の視点で森の町の課題に挑む 麻生 翼さん NPO法人 森の生活 代表理事
・生ごみの堆肥化で循環社会を創る たいら由以子さん NPO法人 循環生活研究所 理事長
・「地球の消費者」から「地球の生産者」へ 加藤大吾さん NPO法人 都留環境フォーラム 代表理事
・干潟に子供たちの歓声を取り戻す 足利由紀子さん NPO法人 水辺に遊ぶ会 理事長
・日本型の環境教育を求めて 新田章伸さん NPO法人 里山倶楽部 副代表理事
・カメラに託した「水」への熱き思い 豊田直之さん 写真家
・「月に一度は山仕事!」のすすめ 山本 博さん NPO法人 日本森林ボランティア協会 事務局長
・奥能登の昔ながらの暮らしを“再発見” 萩野由紀さん まるやま組主宰
・北海道から広げる自然教育ネットワーク 髙木晴光さん NPO法人 ねおす 理事長
・「森のようちえん」は毎日が冒険 原淳一さん NPO法人 アキハロハスアクション 理事長
・東北に国産材のサイクルを築く 大場隆博さん NPO法人 日本の森バイオマスネットワーク 副理事長
・魚食復活をめざし、本日も全力疾走 上田勝彦さん 魚食復興集団 Re-Fish 代表
・「竹害」との戦いにかけた第二の人生 松原幸孝さん NPO法人 かいろう基山 事務局
・ニッポンバラタナゴの楽園を守る 加納義彦さん NPO法人 ニッポンバラタナゴ高安研究会 代表理事
・雁の里から発信「ふゆみずたんぼ」 岩渕成紀さん NPO法人 田んぼ 理事長
・「夢」は最高のエネルギー 杉浦嘉雄さん 日本文理大学 教授
・宮沢賢治に導かれて山村へ 吉成信夫さん NPO法人 岩手子ども環境研究所 理事長
・「海のゆりかご」再生にかける 工藤孝浩さん 神奈川県水産技術センター 主任研究員
・お金に換えられない価値を知る 澁澤寿一さん NPO法人「樹木・環境ネットワーク協会」理事長
・自然界に学ぶ最先端の技術 仲津英治さん 「地球に謙虚に運動」代表
・豊かな森を人づくりに活かす 萩原喜之さん NPO法人「地域の未来・支援センター」理事長
・自然が先生──生きる力を育てる 広瀬敏通さん NPO法人「日本エコツーリズムセンター」代表理事
・ホタルに託した鎮魂の思い 冨工妙子さん ながさきホタルの会・伊良林小学校ホタルの会 会長
・人とトキのかけはしになる 高野毅さん 生椿(はえつばき)の自然を守る会 会長
・民間の力で都立公園の緑を守る 佐藤留美さん NPO法人 NPO birth 事務局長
・花の湿原を守る肝っ玉かあさん 三膳時子さん 認定NPO法人 霧多布湿原トラスト 理事長
・干潟を拠点に人と自然をつなぐ 立山芳輝さん NPO法人 くすの木自然館 理事長
・子どもたちの冒険に寄り添う 佐々木豊志さん NPO法人 くりこま高原・地球の暮らしと自然教育研究所 理事長
・北海道にシマフクロウを呼び戻す 菅野正巳さん NPO法人 シマフクロウ・エイド
・ふるさと新城をもう一度桜の名所に 松井章泰さん 「100万本の桜」プロジェクト発起人
・1960年代の武蔵野の自然を取り戻す 佐藤方博さん NPO法人 生態工房
・緑ふたたび──三宅島に苗木と元気を! 宗村秀夫さん NPO法人 「園芸アグリセンター」 理事長
・冬の山中湖を彩るキャンドル 渡辺長敬さん NPO法人 富士山自然学校 代表
・年に10万匹のホタルを育てる 坂井弘司さん 旭川市西神楽ホタルの会 事務局長
・築230年の古民家に生きる 時松和宏さん 大分県九重町 農家民宿「おわて」 主人

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