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わが街の環境マイスター 都市のみどりを次世代へ
村田千尋さん (特定NPO法人 みどり環境ネットワーク! 事務局長)

都市の公園は自然を学ぶ最適空間。ここを舞台に、緑あふれる未来を子供たちに残すためのささやかにして遠大な計画が進行中だ。

 

悩みながら突っ走る
 

東京・練馬区の光が丘公園は、高層団地の足元に広大な緑地が広がる都民の憩いの場所だ。この公園を中心に、地域住民を対象にしたさまざまなイベントや環境学習をおこなうことで、地元の公園や緑地、街路樹などの身近な自然環境に対する関心や知識を深めてもらい、それを環境の保全や活用につなげようという目的で設立されたのが、NPO法人「みどり環境ネットワーク!」である。

「家のすぐそばに公園や街路樹があると緑豊かでいいと思う人ばかりとは限りません。落ち葉や虫が嫌だとか、桜の花びらが車に付くから近くの枝を伐ってくれという人もいます。桜は大きな切り口をつくると腐りやすくなるので、結局弱って伐採することになりかねない。それは木のせいではなく、人間の都合で伐るはめになっただけなんですが……」

と、事務局長を務める村田千尋さんは苦笑する。「みどり環境ネットワーク!」が設立された2002年当時、村田さんは大学の園芸学部の学生だった。先輩に誘われて学生ボランティアとして活動に参加するようになったのが、現在にいたる発端である。

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拠点となっている光が丘公園でセンダンの木と。植物の成長力にはいつも驚かされる
 

「環境問題に関心があり、漠然としたイメージで緑地環境学科に入学したところ、実際は公園や庭の設計をする造園学が主体でした。それでも都市の環境を学び、考えるうちに、新しいハードをつくるだけでなく、いまある公園の使い方を考えたり、イベントを提案したりといったソフトのほうにも興味が広がっていきました。人に関心があったんですね」

 

都市公園法の制定から約60年、これまで東京では大小数々の公園が整備されてきた。新しい公園を次々につくる時代はもはや終わり、これからはいまあるストックとしての公園や緑地を、そこに住む市民の力も巻き込んで、どう活用していくかが課題だと村田さんは語る。

卒業後、村田さんは造園会社に勤務しながら、出向という形でNPOの仕事も兼務することになった。新人で右も左もわからないのに偶然事務局長になっただけで、会計もやれば機関誌もつくる、なんでも屋だと笑う。しかも、現在3児の母で子育て真っ盛り。その一方、6年前には取得に2週間の研修が必要な樹木医の資格を取り、3年前にはセブン-イレブン記念財団のNPOリーダー海外研修にも応募してドイツに行っている。そのパワーはどこから湧いてくるのか。

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まだ生後1カ月半の3人目、美沙ちゃんを連れて取材に応じてくれた
 

「新入りでわけもわからないまま突っ走ってきたけど、これからどうしようかと悩んでいた時期もありました。そういうとき、私はきっとその悶々としているエネルギーを何かにぶつけようとするんです。そこで素晴らしい仲間と出会い、新たな一歩を踏み出すことができました」

この3年間は「森のようちえん」の名のもとに、光が丘公園で週末におこなう幼児向けの自然体験プログラムに力を入れてきた。夜の森で活動する動物や昆虫を観察したり、アウトドアクッキングをしたりと、親子で楽しめるプログラムが満載だ。村田さんによれば、いまや都市の環境を保全するには、未来を担う子どもたちの感性を育つのを悠長に待っている場合でなく、大人の啓蒙が直近の課題であるため、じつは子供に連れられてやってくる親にこそ学んでほしいと思って始めた事業だという。

「子供と一緒に参加することで、木の名前がわかるようになると、家の周りの公園や街路樹にも興味が出てくる。桜に付く毛虫は無害だから、いちいち大騒ぎしてつぶさなくてもいいんだとわかる。そういう積み重ねが地域に浸透していけば、街の身近な緑を子供たちに残していけるんじゃないかと思います」

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森のようちえんのシンボルツリー、クヌギの木の下で。ドングリから最初に出るのは根(円内)。必ず樹種も教えるのが村田流だ

愛着はまず「知る」ことから
 

昨年は新たに親子農業体験教室「ぶどう畑のミツオさん」も開催した。たまたま自宅の近所に子供の同級生の実家が営むぶどう園があり、その園の協力で半年間計6回にわたり、摘粒や袋がけといった作業を体験、最後は収穫祭で締めくくることができた。この体験教室は練馬区が主催する「世界都市農業サミット」の入賞事業にも選ばれている。

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親子農業体験教室「ぶどう畑のミツオさん」の様子。右はぶどう園主の宮部光夫さん
 

練馬区は23区内で最も広い農地面積を有し、緑が多く、産直の野菜も味わえる。長年畑を耕し、守ってきた地権者への感謝の木本が感じられる場をつくることも事業の目標だった。区では現在、農業ボランティアの育成事業をおこなっているため、リタイア後の世代だけでなく、子育て中の若い世代にもこの体験教室を通じて農作業に興味を持ってもらい、将来、農業ボランティアが増える足がかりになればと村田さんは考えている。

「都市部の農地はただ農作物をつくる場というだけではなく、町中に緑があることで心が豊かになったり、親子が体験できる教育の場になったり、災害時には逃げ込める防災公園や食べ物の供給地としても活用できるという、いろんな価値があります。そういうことを広く地域の皆さんに発信していきたいですね」

 

ただ自然はいいという感覚だけでは環境は守れない、地元の緑に愛着を持つには「学ぶ」「知る」ことが大切だと村田さんは繰り返す。

「だから、うちではドングリを拾ったら何の木の実なのかを教えますし、幼児に対してもドングリから最初に出るのは芽じゃなくて根だよといった植物の生育についても話をします。学ぶことで、科学の目も養えます。そうやって学んだ人たちが樹木や花に親しみを感じ、地域の緑を守ろうという気持ちが生まれてくれば、それがいつか国や世界を変えることにもつながるのではないかと思っています」

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江東区立亀高小学校で出前授業。虫眼鏡でカリンの花芽と葉芽を観察する子供たち
CONTENTS
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コンテンツ
・エコツーリズムで館山を元気に 竹内聖一さん NPO法人 たてやま・海辺の鑑定団 理事長
・竹林を舞台に地域の輪をつなぐ 豊田菜々子さん NPO法人 環境保全教育研究所 代表理事
・震災10年 子供たちの声が響く海を取り戻す 伊藤栄明さん 松島湾アマモ場再生会議 副会長
・都市のみどりを次世代へ 村田千尋さん 特定NPO法人 みどり環境ネットワーク! 事務局長
・釣り人の聖地・琵琶湖でごみを拾う 木村建太さん プロアングラー、淡海を守る釣り人の会 代表
・土木工学が出発点。海辺の環境保全に挑む「ハゼ博士」 古川恵太さん NPO法人 海辺つくり研究会 理事長
・故郷の廃村に新たなにぎわいを 松浦成夫さん NPO法人 時ノ寿の森クラブ 理事長
・荒れ果てた藪を、ホタルが舞い飛ぶ森に 伊藤 三男さん 学校法人田中学園 学校法人緑丘学園 監事
・美ら海への思いを大地に植える 西原 隆さん NPO法人 おきなわグリーンネットワーク 理事長
・都市の貴重な干潟を守るボランティアの力 橋爪 慶介さん DEXTE-K代表
・浜辺のごみ拾いを20年で大きな運動に 鈴木 吉春さん 環境ボランティアサークル 亀の子隊代表
・「美味しい」を手がかりに大阪湾を再生 岩井 克己さん NPO法人 大阪湾沿岸域環境創造研究センター 専務理事
・環境保全活動を通して、成長する若者たち 草野 竹史さん NPO法人 ezorock 代表理事
・主体性のある人間を自然の中で育てたい 山本 由加さん 認定NPO法人 しずおか環境教育研究会(エコエデュ) 副理事長兼事務局長
・付加価値の高い木材で山を元気に 藤﨑 昇さん NPO法人 もりずむ 代表理事長
・自然を大切にする人を育てる幼児教育 内田 幸一さん 信州型自然保育認定園「野あそび保育みっけ」 園長
・企業経営で培った組織のマネジメント 秋山 孝二さん 認定NPO法人 北海道市民環境ネットワーク 理事長
・移住者の視点で森の町の課題に挑む 麻生 翼さん NPO法人 森の生活 代表理事
・生ごみの堆肥化で循環社会を創る たいら由以子さん NPO法人 循環生活研究所 理事長
・「地球の消費者」から「地球の生産者」へ 加藤大吾さん NPO法人 都留環境フォーラム 代表理事
・干潟に子供たちの歓声を取り戻す 足利由紀子さん NPO法人 水辺に遊ぶ会 理事長
・日本型の環境教育を求めて 新田章伸さん NPO法人 里山倶楽部 副代表理事
・カメラに託した「水」への熱き思い 豊田直之さん 写真家
・「月に一度は山仕事!」のすすめ 山本 博さん NPO法人 日本森林ボランティア協会 事務局長
・奥能登の昔ながらの暮らしを“再発見” 萩野由紀さん まるやま組主宰
・北海道から広げる自然教育ネットワーク 髙木晴光さん NPO法人 ねおす 理事長
・「森のようちえん」は毎日が冒険 原淳一さん NPO法人 アキハロハスアクション 理事長
・東北に国産材のサイクルを築く 大場隆博さん NPO法人 日本の森バイオマスネットワーク 副理事長
・魚食復活をめざし、本日も全力疾走 上田勝彦さん 魚食復興集団 Re-Fish 代表
・「竹害」との戦いにかけた第二の人生 松原幸孝さん NPO法人 かいろう基山 事務局
・ニッポンバラタナゴの楽園を守る 加納義彦さん NPO法人 ニッポンバラタナゴ高安研究会 代表理事
・雁の里から発信「ふゆみずたんぼ」 岩渕成紀さん NPO法人 田んぼ 理事長
・「夢」は最高のエネルギー 杉浦嘉雄さん 日本文理大学 教授
・宮沢賢治に導かれて山村へ 吉成信夫さん NPO法人 岩手子ども環境研究所 理事長
・「海のゆりかご」再生にかける 工藤孝浩さん 神奈川県水産技術センター 主任研究員
・お金に換えられない価値を知る 澁澤寿一さん NPO法人「樹木・環境ネットワーク協会」理事長
・自然界に学ぶ最先端の技術 仲津英治さん 「地球に謙虚に運動」代表
・豊かな森を人づくりに活かす 萩原喜之さん NPO法人「地域の未来・支援センター」理事長
・自然が先生──生きる力を育てる 広瀬敏通さん NPO法人「日本エコツーリズムセンター」代表理事
・ホタルに託した鎮魂の思い 冨工妙子さん ながさきホタルの会・伊良林小学校ホタルの会 会長
・人とトキのかけはしになる 高野毅さん 生椿(はえつばき)の自然を守る会 会長
・民間の力で都立公園の緑を守る 佐藤留美さん NPO法人 NPO birth 事務局長
・花の湿原を守る肝っ玉かあさん 三膳時子さん 認定NPO法人 霧多布湿原トラスト 理事長
・干潟を拠点に人と自然をつなぐ 立山芳輝さん NPO法人 くすの木自然館 理事長
・子どもたちの冒険に寄り添う 佐々木豊志さん NPO法人 くりこま高原・地球の暮らしと自然教育研究所 理事長
・北海道にシマフクロウを呼び戻す 菅野正巳さん NPO法人 シマフクロウ・エイド
・ふるさと新城をもう一度桜の名所に 松井章泰さん 「100万本の桜」プロジェクト発起人
・1960年代の武蔵野の自然を取り戻す 佐藤方博さん NPO法人 生態工房
・緑ふたたび──三宅島に苗木と元気を! 宗村秀夫さん NPO法人 「園芸アグリセンター」 理事長
・冬の山中湖を彩るキャンドル 渡辺長敬さん NPO法人 富士山自然学校 代表
・年に10万匹のホタルを育てる 坂井弘司さん 旭川市西神楽ホタルの会 事務局長
・築230年の古民家に生きる 時松和宏さん 大分県九重町 農家民宿「おわて」 主人

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