セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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ドイツ研修奮闘記 連載-第11回- ファンドレージング お金を集めるあの手、この手

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環境保護活動のためのお金を集めるのは難しい。言うまでもないが、ある人がどこかの環境を守るためにお金を出したとしても、お金を出した人が得をしたと感じられない。また、今お金を出したからといって、その効果(利益)がすぐに目に見える形で現れないし、その効果が絶対出るとは限らない。『誰がどのように利益を得るのか』『いつ・何が・どう変わるのか』があいまいなために環境にお金は集まらない。そんな中、環境保護のためにお金を出すのは、ある一部の環境に関心が高い人と公的機関、CSRを掲げる大企業など…だと思う。
今言った「得」「利益」「効果」という言葉が適切かどうかはさておき、誰しもが今ある自然環境を守らなければ、と思っている一方で、「じゃぁ、誰が活動する?誰が活動資金を出す?」となった時に一歩下がってしまう現状があるのではないだろうか。

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ファンドレイザーのハンズさん
(写真提供:口井さん)

ドイツでは環境問題に関心が高い人もそうでない人も、環境保護活動と様々な関わり方がある。日々活動をしている人、会費や寄付によって資金的に援助する人、絶滅危惧種の里親になる人、お金ではなくデザインのスキルやモノを寄付する人…など。日本では、一緒に活動をする仲間を増やすというケースが比較的多いのに対して、ドイツでは、全く環境に興味のない人に対して会員になってもらうためのアプローチを積極的にしていたように感じる。自分たちの活動に興味を持ってもらうきっかけとして会員になり、理解が得られれば里親になったり寄付をし、深く興味を持てば実際に活動をする、というように関わり方に段階がある。
この、団体の活動資金となる会員を集めて会費収入を増やすためにあらゆる手段を使っている。また、お金を集めるだけではなく、費用対効果を検証し、マーケティングをおこなう、これが「ファンドレイジング」。

私たちは最終日、宿泊先のホテルで一日中みっちり「ファンドレイジング」について実践的な手法を学んだ。個々の活動に対するカウンセリングも受けることが出来た。カウンセリングでは、プロファンドレイザーのハンズさんはその日始めて私たちの活動を聞いたにも関わらず、また、全てを説明でききれていないにもかかわらず、「なるほどなるほど」と思うようなコメントや、質問者も自分でわかっている弱点を的確に指摘され、プロのファンドレイザーとはこういうことか、と納得した。

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カウンセリングの様子
(写真提供:佐藤さん)

 
話の中で印象的だったのは、ダイレクトメール一つをとっても、受け取る側の心理をついた工夫がなされている。日本では、不特定多数の人に環境保護団体のDMが届くことはほとんどないと思うが…。
例えば、環境保護団体の郵送物で「10秒で封筒を開けるデザイン」なんて考えている人はいるだろうか?おそらく、ファンドレイザーはコンペみたいなものをして、それを何度も調査、実験をして、うまくいくと確信して送るのだろう。また、今回訪問した団体はどこも「ロゴ」をとても大事にしているように感じた。もちろんどの印刷物にもついているし、実際団体の外でもよく見かける。この国に住んでいたら一生で一度も見ない人はいないんではないだろうか、というくらい。また、「1㎡守るためにたったの30円!」など、非常に具体的に守るために必要な金額が書かれている。最後に、活動している人がどういう思いでそれに取り組んでいるのかを綴り、最後に直筆のサインは欠かせない。
このほかにも、振り込みを簡易化するなど会員になる人の手間をなるべく減らす、DMそのものをポスターにして捨てられにくい工夫をする(他と違うことをする)。よくある失敗が、ついでにあれもこれも宣伝しちゃえっ!というような情報量が多すぎるものである。

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レクチャーの様子
(写真提供:事務局)

また、ドイツでは遺産を家族や子供に使い、一部を社会貢献のために寄付するケースが多いようだ。団体はこの遺産や富裕層からの寄付を淡々と集める。寄付の集め方にもいろいろなミソがある。日本ではあまり積極的に集められていないが、これまでの文化や体質によるのかもしれないので難しいかもしれない。

寄付のメリットは「イイコトをした」「名前がのこる」などだそうで、なんとなく想像どおりだった。工夫としては、遺産の寄付を訴えるものは富裕層の高齢者であることを意識し、わかりやすく見やすくデザインする、昔と今を見比べられるものを出す、孫たちが成長した時の自然を思わせるものを載せる、遺産を寄付した後の税金対策などをしっかりするなど。やはりここでも、会費を納めようという気持ちにさせる心理的な仕掛けと振り込む際の手間の仕掛けがあるようだ。

大型寄付をしてくれる人には特別プログラムとして一般会員とは差をつける、というねらいで、現場のツアーを企画し、なぜ寄付が必要かを訴え、寄付を継続してもらう。費用は参加者(特別会員)持ち、ツアー中に写真を撮り、ツアーの請求書とともに送るなど。これはちょっとやりすぎじゃないの?っと思ったが、寄付の80%は、寄付をしている20%の人達でしめる、というのだから成功なのだろう。

日本ではまだまだなじめなさそうな「寄付」だが、ドイツでは「寄付は積極的に活動に関わるチャンス」と捉えている。また、地域の活動のほうが、フレキシブルで実行までが早く、活動している人の思いが強い、また、Face to Faceが容易、変化が目に見えやすいなどの理由から寄付は集めやすい、とも言っていた。複数の小さな団体で一人のファンドレイザーを雇うことはよくあるそうだ。

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なぜ人は寄付をするのか
(写真提供:平山)

 
お金がないお金がない、といっているだけではなく、出来そうなことだけでもチャレンジしてみてもいいかもしれない。

「ファンドレイジング」について初めて詳しく知ったが印象に残っていることとして、活動そのものではなく、活動の見せ方、応援団の集め方、というところに多くの時間や手間、お金をかけている。また、一般企業では当たり前のようになされている、市場のニーズ把握やお金をどのように運用するかをきめ細かく行なっていることに、当たり前のことだが、出来ていないことに気づいた。

まずは、「何が求められているのか」なのかもしれない。




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