セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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活動のご紹介

ドイツ研修奮闘記 連載-第5回- 市民が取り組む自然の保護と再生〜NABUの取り組み〜

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 連載第5回目となる今回は、第2回目の際に紹介したNABUという大きな市民団体の活動内容を取り上げようと思います。具体的には、NABUの主な活動項目として記されていた「1.すべての動植物の多様性の保全と、生息環境の保護活動。」に注目して紹介していきます。
 さて、連邦、州、地域と3段階制の敷かれたNABUですが、例えば、ラインラント・ファルツ州支部では、次のような自然保護プロジェクトに取り組んでいるようです。
  • NABUが大きな農地を購入し、自然に対して深い理解のある地域のエコな農家の方へ土地の貸し出し(*有機農業の推進)
  • 鷹狩り用に鷹が密猟されぬよう、巣の周りを交代で監視
  • フクロウ用の大きな巣箱の整備(*フクロウは巨木のムロに巣作りをするので、巨木が無いとフクロウが繁殖できないため)
  • 野生の馬や牛の復活を進めると同時に、放牧を通じた地域の歴史的な景観保護の実施
  • コウモリの保護プロジェクトの実施
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コウモリの保護プロジェクトを
訴えるポストカード
(NABUの資料より)

 ここで、コウモリの保護プロジェクトについて、少し補足しておきます。
 ラインラント・ファルツ州のマイエンというところに17〜18世紀の石切り場が残されています。この石切り場にはなんと約10万匹、16種類ものコウモリが生息しています。ドイツでは、コウモリの生息できる場所が限られており、この洞窟はドイツ最大の生息地となっていました(洞窟内で越冬している)。そのため、NABUラインラント・ファルツ州支部によってこの土地の購入(約500万ユーロ)するプロジェクトが始められていました。費用については、連邦政府が60%、州政府が33%、残る7%をNABUラインラント・ファルツ州支部が負担する予定だそうです(約35万ユーロ:5600万円、年間の全会費に相当)。現在は、寄付によって20万ユーロが集められており、残金については今後4年間で活動費の中から捻出していくとのことでした。
 なお、このコウモリの保護プロジェクトは、州支部に属する1グループの提案を、州支部としてまとめ、連邦政府、州政府に対し、自然環境の保護と歴史的遺産の保護の両面から訴えかけ、2年間の歳月を経て実現にこぎつけることができたのだそうです。このような大きなプロジェクトでも、トップダウンではなくボトムアップであることに、その強さを垣間見ることができました。


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NABU自然保護センターでの見学の様子
(写真提供:小野さん)



  州支部の活動に引き続いて、次は、地域で活動を展開しているNABU自然保護センターの様子を紹介していきます。
NABU自然保護センターには、1,800人の会員がおり、そのうちの70名ほどが活動的な会員となっていました。NABU全体でみると、積極的な会員が5%ほどで、残り95%はサポート会員とのことでしたが、地域のグループでもその割合は概ね同じのようでした。この70名ほどの活動的な会員が、ビオトープの管理、野鳥観察、コウノトリ保護、幼稚園児たちへの環境教育などの活動に取り組んでいました。各活動のイベントを合わせると年間で350回にもなり、のべ8,000人ほどの方がこのセンターを訪問されるのだそうです。


 ここで必要とされる経費のうち、5%程度が会費(年間24ユーロ)によって補われていました。ただし、1,800人分の年会費については、一度NABUの連邦組織に集められ、そのうちの12%がこのNABU自然保護センターの活動資金として戻されるのだそうです。私は思わず「え!残りの88%は搾取されているのでは…」と要らぬ考えを巡らせてしまいましたが、連邦組織では、連邦全体に係る事業や政治活動に多くの資金が必要となるため、そのような配分で良いとのことでした。必要経費の残り95%については、企業からの出資が15%、個人の寄付が5%(税金の控除の対象になる)、RP州からの援助が5%、その他70%はイベントやセミナーなどのプロジェクト等から得ているそうです。

 企業からの出資について伺ってみると、フロッシュという会社(本社:マインツ市)が大きな割合を占めていました。この会社は、環境負荷の低い家庭用洗剤を手がけており、出資金を活用し、水辺のカエルを保護するプロジェクトなどに取り組んでいるとのことでした。良きパートナーという印象を受けました。その他、コウノトリ保護活動には、RWEという電力会社が出資していました。これは、電信柱の上にコウノトリが巣を作ったところから、連携が生まれたのだそうです。もちろん、NABU全体には連携する企業に関する規定があるようですが、NABU自然保護センターはあくまでも地域のグループなので、企業の選定条件は明確ではないようです。ただ、企業が出資してくれるからといって、企業の言いなりになるわけではなく、お互いに地域を守るという目的を確認し合った上で、支援を受けているようでした。

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左:フロッシュとの連携が伺えるNABU自然保護センター内の展示(写真提供:仲津さん)
右:フィールド内に設置されたコウノトリの巣(NABUの資料より)

 また、今回は、NABU自然保護センターが取り組んでいるライン川の生態系保全のプロジェクトも見せてもらうことができました。これは、1986年にライン川の上流(スイス)で起きた化学工場の火災事故に端を発した、ラインをきれいにしようという運動が原点となって、オランダ・スイス・ドイツの3カ国によって立ち上げられた共同のプロジェクトでした。NABU自然保護センターが管理しているマインツ市の区間では、保護区域建てられた別荘などの違法建築の撤去、保護区を示す柵の設置、案内板の設置、人工物を除去し植生の回復を促すなどの取り組みが行われていました。
 日常の見回りをNABU自然保護センターが担い、案内板の破損など事故が生じた場合には行政が対応するという、見事な連携プレーがここにはありました。

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左:生態系保全プロジェクト前のライン川  右:生態系保全プロジェクトを実施した後のライン川
(NABUの資料より)




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