セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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ドイツで感じた、日本の環境NPOの道標(みちしるべ) 連載-第1回- 環境の歴史と政策 〜ライン川で魚が跳ねたことから始まった〜

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 私たち環境ボランティアリーダー海外研修生5人は、2010年10月12日から21日までの期間、環境先進国と言われているドイツに滞在し、州環境省や環境NPOなどを訪問する中で、組織運営や資金調達、人材育成、広報など多岐にわたり学んできた。
 研修中に滞在したのはマインツという都市。同じホテルに8泊しながら、そこを拠点に毎日徒歩やバス、電車で移動し、合計12カ所に訪問した。毎朝7時半から8時半にはホテルのロビーに集合し、移動途中の時間も研修生5人はミーティングをしながら、次の訪問先での質問事項を検討したり、直前の訪問先の振り返りなどの時間にあてた。ホテルに戻るのは夕方6時前後。それから1日の振り返りを行い、そして夕食へ。ドイツ滞在中はずっとそんな感じだった。
海外研修
州環境情報センターでの研修の様子
 これだけ強行スケジュールで訪問しても、研修先ではあっという間に時間が過ぎていく。講義を聞いたり活動の現場を見させていただいたり、とにかく聞きたいことの全部を聞くには時間がなさすぎた。しかし、そんな中でもドイツがなぜ環境先進国と言われているのかがだいぶ見えてきたような気がする。事務局の小野さんがドイツに着いた日の研修オリエンテーションでこう話していた。「日本のNPOに足りないものがドイツのNPOにはある」と。日本のNPOに足りないものとは一体何なのか? それを探る研修がスタートした。
 ドイツが環境先進国と言われているのは、現在の環境政策やNPOの活動などが他国と比較し進んでいるからだろう。そして、すでに大きな成果を上げていることもその理由のひとつだ。そんなドイツだが、何をきっかけにここまで取り組みが行われるようになったのか。それを紹介したいと思う。

海外研修
ゆっくりとわかりやすく話して
くれるローランド=ホーン氏
 訪問初日となった13日。この日1件目の訪問先として、ラインランド・ファルツ州の州環境情報センターを訪れた。そこで「ドイツの環境保護」をテーマにローランド=ホーン氏にお話を伺い、ラインランド・ファルツ州が環境保護に取り組み始めたきっかけとなる出来事について話を聞くことができた。
 きっかけは今から40年前の1970年の暑い夏の日のことだった。ドイツの工業化、産業化に伴い、工業廃水がライン川に多く流されたことにより水中の酸素が減り、ライン川で魚が跳ねた。苦しくなった魚は酸素を求めて水上に出てきたのだ。このままではライン川は魚の棲めない川になってしまうと、誰もが危機感を感じた。
 生物学者はこれよりもずっと前から、「ライン川はこのままではまずい」と警告していたのに、放置し続けてきた結果がこれだ。「この状態を何とかしなければ」と、みんなが感じた。「人は何かが起こって初めて何とかしようと動くものだ」。ローランド=ホーン氏はそう語った。
 この出来事を境に、環境保護の政策も進み、環境保護の市民活動も活発化していくことになる。そして40年経った今ではラインランド・ファルツ州の99%が、いい川の状態になっているという。河川環境の保護活動も「それをやって当たり前」という感覚だそうだ。

 ライン川で魚が跳ねた1970年以来、ドイツではさまざまな環境政策が行われてきた。一言で「環境政策」と言っても、実は政策を決定すること、そして実行すること、この点でドイツと日本に大きな違いがあったのだ。日本でも、環境省がさまざまな環境政策を決定している。しかしそれが地域でしっかりと動いているだろうか? 実行できていないのだとすると、どんなにすばらしい政策であっても意味がない。
 ドイツには日本とは異なる政治システムが存在する。たとえばドイツ全土に有効な国の法律を作ろうとしたら、国民に選ばれた800人の代議士からなる「連邦議会」と、日本で言うところの県知事会のような「州代表審議会」、これら両者の賛成があって初めて法が作られるのだ。法律の内容が州にも関係するものは審議会も入った上で決定されるし、環境に関する法律も重要なものは両者で決定している。決定までに時間がかかるデメリットもあるが、日本のように環境省からのトップダウンではないため、連邦で決めたことがきちんと州で実行されているのだ。これが日本とドイツでの大きな違いだと感じた。
 ドイツの素晴らしい点は日本でも取り入れていけばよいと思う。地域で必ず実行される生きた政策を作っていくために、環境政策を環境省だけで決めるのではなく、県知事をはじめとする地域の代表者を含む審議会でも審議するような仕組みを作るように政策提言をしていく。これも環境NPOの果たすべき役割ではないだろうか?

海外研修
ローランド=ホーン氏を囲んで記念撮影
 日本でも過去にいくつかの大公害が発生し、そのたびに人々は環境保護に目を向けてきた。人は確かに目に見える異変が起きてからでないと本気で動かない。今私たちが直面している地球温暖化や気候変動と言われている問題は、目に見える異変が起きた時には手遅れな状況かもしれない。好きなだけ化石燃料を使い続ける時代に終止符を打たないと、持続可能な未来はやってこないのではないだろうか。ローランド=ホーン氏の話を聴きながら、そのように感じた。




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