セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

※こちらはアーカイブ記事です。

 ホームへ戻る

 

文字サイズ
活動のご紹介

ドイツで感じた、日本の環境NPOの道標(みちしるべ) 連載-第7回- 森のようちえん 〜自然の中で生きるを学ぶ〜

→バックナンバー

 今回のテーマは、研修で私が楽しみにしていたものの一つの「森のようちえん」です。森のようちえんは日本でも少しずつ取り入れ始めていて、環境NPO団体などが行う体験イベントを私も耳にすることがあります。森のようちえんは、普通のようちえんとは少し違い、子どもたちが自由に自然の中で育つようちえんである。といったイメージを持っていますが、実際にはどうなっているんだろう?という期待を胸に森のようちえんに向かいました。

 私たちが訪れたのは、「ボイムリンゲ森のようちえん」です。ようちえんがまだ始まる前に到着しました。到着してまず驚いたことは、その建物の小ささです。「ここが森のようちえんです」と案内されたところには、バスのような形をしたコンテナが一つあるだけでした。中に入ってみると、園児20名がやっと入れるくらいの広さで、私たち大人が入ると、もうぎゅうぎゅうです。普通のようちえんを想像していた私はびっくり。森のようちえんでは基本的に外で活動をするので、屋内での活動はほとんどなく、建物はほとんど必要ないそうです。必要最小限の建物の大きさでようちえんを運営しています。
森のようちえん1日のはじまり
 そうこうしているうちに、続々と子どもたちがお父さんやお母さんに連れられてやってきました。子どもたちはみんな毛糸の帽子にジャンパーに長靴と外で遊ぶ準備は万全です。まるでスキーにでも行くような格好です。その格好から、どんなに寒くても、雨が降っても外で一日の大半を過ごしていることが分かります。
 みんなが揃ったら、広場に円になり朝の会なるものが始まりました。私たちは円の外から見ています。「今日いないのはだーれ?」とみんなで出欠を取り合い、お休みの子の名前を言い合います。もし思い出せなかったら、ヒントを先生がくれます。ヒントを元に「えっとあの子の名前はなんだっけ?」とみんな考えます。後で先生に伺うと、これは仲間を大切にする気持ちを育むのが狙いだそうです。ここでは、3歳から6歳までの子どもたちが通い、皆で一緒に学んでいます。年齢が違う子どもたちの仲間意識を育むことが大切にされているようです。確かに子どもたちを見ていると、少し大きい子が小さい子をサポートし、一緒に活動を行っています。まず名前を覚え、その人のことを気にすること。これは大人も子どもも同じで大切なことです。
海外研修
朝の会の様子
 朝の会の次はようやく活動が始まります。私たちが見ていると、子どもたちの話し合いがはじまりました。今日の遊びについて、いくつか案をあげます。この日はスムーズに決まりましたが、時には選挙をして遊びを決めることもあるようです。「ようちえんで選挙!?」と私は耳を疑いましたが、本当にしているようです。疑問がいっぱいでしたが、先生から説明を聞いて納得しました。先生の説明の中には、「デモクラシー教育」という言葉が出てきました。子どもたちはここで民主主義について学んでいます。遊びを決めるために投じた自分の一票が今日一日の活動にどう影響をするのかを実感しています。それは、私たちが行っている選挙と何ら変わりはありません。自分の選択が社会全体に与えるということ、投票する権利を持つということを学ぶためです。

 そして、鬼ごっこのような遊びが始まりました。私たちも一緒です。転んでも泣く子はいません。そして子どもたちは森の中へ元気に遊びに出かけていきました。
森のようちえんの先生
 私たちの訪問中、お話を伺った森のようちえんの先生は、私たちを案内し、話をしながらもずっと横目で子どもたちをちらちらと見ています。いけないことをしている子を見つけると、すかさず注意をしに行きます。来客に対応しながらも、これこそプロの仕事!といった感じを受けました。というのも日本で森のようちえんをされている方は、どちらかといえば保育の専門家よりも環境や自然分野の方という印象があります。しかし、ドイツでは保育の専門家が森のようちえんの先生です。森や自然が子どもたちの教育に効果があるという意識の広がりを感じました。
地域と運営の関わり
 この森のようちえんは、運営費は市が全て出しています。土地は日本でいう市有林であり、ようちえんに隣接して営林署があります。営林署で働いているフォレスター(森林官)が子どもたちに森について教える機会もあるようです。ようちえんが地域や他の機関と連携して運営していることが分かりました。

 噂の森のようちえん、それは子どもたちがのびのびと自然の中で生きていくのに必要なことを学んでいるところでした。ただ、自然のことを学ぶだけでなく、仲間を大切に思いやること、民主主義のこと、投票のこと、生きることを学べるところでした。これは、森のようちえんだけでなく、幼児教育に必要な要素であると感じました。




このページの先頭へ
ご利用にあたってプライバシーポリシー
Copyright(C) 2000-2019 Seven-Eleven Foundation All Rights Reserved.