セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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ドイツで感じた、日本の環境NPOの道標(みちしるべ) 連載-第12回- 日本とドイツの違い 〜街を歩いて感じた日本との違い〜

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 私、鳥羽和明と明賀美奈の二人で書き進めてきた本コラム「ドイツで感じた、日本の環境NPOの道標」も、いよいよ最終回のときが来た。今年3月に発生した東日本大震災の影響などもあり、決して順調な歩みではなかったが、こうして今、伝えたかったことのすべてを伝えきる時を迎えるにあたり、一抹のさみしさを感じていることも確かだ。
 最終回の今回は、私が実際にドイツの街を歩いて感じた「日本とドイツの違い」について書きたいと思う。研修期間中は本当にバタバタで、移動中などに写真を撮れる時間はほとんどなかったが、私が実際に撮った写真を見てもらいながら、日本とドイツの違いを少しでも感じてもらえたらと思う。
おもてなしの違い
 研修中にたくさんの機関やNPOなどを訪問した。その行く先々で驚かされたことがあった。それは、ドイツの方のおもてなしのすごさだ。下の写真にあるように、研修先では必ずと言っていいほど、ミネラルウォーター(ドイツではガス入り)やフルーツ、パン、コーヒーなどの軽食が人数分以上に用意されている。訪問前後には日本人には考えられないくらいの量の食事をいただいているというのに、こんなにもたくさんの飲食物が用意されているのだから、そのおもてなしの心たるや半端なものではない。痩せたドイツ人をほとんど見ないのもうなずける。彼らは毎日かなりの量を食べているのだろう。
 しかし、こうしてお客様を迎え入れる姿勢には学ぶべき点が多いと思うのだ。私たち日本のNPOはどうだろう? ただでさえお金がない状況の中、お客様用のお菓子などほとんど用意できていないのではないか? 飲み物と軽食を準備し、ゆっくりと過ごしてもらえるということは、自分たちの活動を広げていくことにもつながるのではないか? 私は早速帰国後に開いたドイツ研修の報告会の場で、いつもよりも多くのお菓子や飲み物などを用意して参加者に召し上がっていただいた。そうするとどうだろう。初対面の参加者たちもお菓子などを食べながら、楽しそうにコミュニケーションを取り始めているではないか。その後の報告会も和やかな雰囲気の中で終えることができたことは言うまでもない。それくらいの効果があるのだ。
 こうして出されたお菓子なども、私たち日本人の感覚で言うと、なかなか手をつけにくいもの。しかし、ドイツでは出されたものに手をつけないというのは「気に入らない」という意思表示にとられてしまうこともあるのだ。「どうぞ」と勧められる前に積極的にいただいたほうが喜ばれるらしい。そう聞いて私も、研修中は積極的に出されたものに手を伸ばしていた。
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研修先で用意していただいたおもてなしの数々
自転車で移動しやすいまちづくり
 地球温暖化防止のために、車ではなく自転車に乗ろうということは、日本でも随分と前から叫ばれている。しかし、日本の街は自転車で移動しにくい。その理由は主に、走行スペースと駐輪場にあるのではないだろうか。
 ドイツの街を歩いていると、自転車で行き来する姿を本当に多く見る。どっちを見ても自転車に乗っている人が目に入るといっても過言ではない。そんなドイツは日本と違い、下の写真にあるように、自転車が利用しやすいまちづくりがされているのだ。
 街のあちこちにちょっとした駐輪スペースがある。たまにあるのではなく、いたるところにあるのだ。ほんの数台しか駐輪できなくても、こういったスペースが多数あるというのは、自転車ユーザーにとってはありがたいことだ。
 また、走行スペースも確保されている。自転車が誰にもじゃまされずに走れるように、自転車専用レーンが整備されているのだ。ドイツでは、多くの道路で歩行者専用レーンと自転車専用レーンの両方が設けられている。そして、車道との段差がほんとに少ない。自転車でもスムーズに街を行き来できるように配慮されている。
 そして極めつけは、鉄道への持ち込みがOKなことではないだろうか。日本ではたいていの場合、折りたたんでバッグにしまい、荷物扱いでないと電車内に持ち込めない。しかしドイツは違う。自転車はそのまま持ち込めるし、車両内に自転車を置いておく専用のスペースも用意されているのだ。こうすれば、降り立った街でもそのまま自転車を活用できる。車の不要な生活も可能なわけだ。
 日本でもこのように自転車で移動をしやすいまちづくりをしてほしいと、ドイツの街の様子を見ながらそう思った。
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自転車ユーザーにうれしいまちづくりがされている

野菜や果物はばら売り・量り売りが基本
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スーパーではお客さん自身が値段シールを発行する
 研修中にスーパーも訪れてみた。右の写真にあるように、野菜や果物はばら売りが基本だ。2〜3個ずつ包装されているものはない。買い物に来た人は必要な個数だけ手に取り、右の写真の機械の前へと行く。その機械に1種類ずつ野菜や果物を載せて絵が書かれているボタンを押すと、グラム数から価格が計算されレジで必要なシールが発行されるのだ。それを品物に貼ってレジへと行けばよい。そう、すべて量り売りとなっている。
 日本ではどうだろう? 野菜も果物も、何個か一緒にパックされていることが多い。たとえ一人暮らしで1個だけで十分であっても、ばら売りされていないと多めに買ってしまうことになる。また、パックをいくつも手に取りながら、あれでもないこれでもないとどのパックにするか迷っている人も見かける。同じ値段なら少しでも大きいものをと考えているのだろう。ドイツでは「必要なものを必要なだけ」が基本なのだ。
街の表情を変えずに新しいまちづくりを
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広場に面した部分はそのままに、建物の奥はリノベーションされている
 左の写真を見てほしい。上の写真はどこにでもある広場に面した建物の外観だ。これは古くからの建物である。近年、こういった広場の光景を損なわずにリノベーションしている建物が増えているそうだ。
 下の写真を見てほしい。先ほどの広場に面した建物を横から見ると、こんなふうになっている。建物の前面だけそのままに、後ろ部分は近代的なテナントフロアに生まれ変わった様子だ。これには驚かされた。
 日本では当然、古い建物を壊して新しい建物を建設した場合、その建物の表情や街の表情は大きく変わる。ドイツのようにこうやって街の表情を変えずに新しい街づくりをする手法があること自体、私は初めて知り目からウロコだった。
こんな身近なところにも
 最後に、とても身近なところでの違いについて紹介したいと思う。ひとつ目はトイレだ。下の上の写真を見てほしい。これは様式便器の水を流すボタンの写真である。ボタンにしては大きいのがわかるだろうか。その大きなボタンは真ん中に横に切れ目が入っていて、上下2つに分かれていることがわかる。水を流すときは下半分の部分を押す。上半分に小さく刻印されている文字、それは「STOP」だ。そう、ドイツのトレイには水を流すボタンだけでなく、止めるボタンも用意されているのだ。必要に応じて自分で水量の調節ができるとは、なんとうれしいことだろう。
 そしてもうひとつ、街を歩いていてよく見かける光景。それはオフィスビルなどの窓に取り付けられているブラインドだ。下の写真を見てわかるだろうか。ブラインドは窓の外側に下がっている。そう、室内に太陽光線が入ってくる前にシャットアウトしようということだ。窓の内側にブラインドを設置しても、室内の空気の一部は太陽光線に触れ温度が上昇し、室内に広がる。それを防ぐための「外側」なのだ。これもドイツでは当たり前の光景だ。
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身近なところでもドイツと日本の違いが感じられる
 ドイツを訪れたのは今回が2回目だったが、訪れるたびに、街の仕組みだったり社会の仕組みだったり、完成された仕組みにすごく感心させられている。もちろん日本でも参考にして生かせる点もあるし、時間がかかりそうなこともある。こういった仕組み・社会の中で暮らしている人々は、私たちが思っているほど力んでエコに取り組んでいるわけではない。その仕組みの中で生活していることが、そのまま環境にやさしい生活につながっているのだ。
 私も自身の活動の中で「一人ひとりができることから始めていこう」と呼びかけているが、ドイツに来ると、一人ひとりだけではなく、やはり社会全体の仕組みから見直すことも必要だと感じさせられる。ドイツでやれていることを、私たち日本人がやれないわけがない。研修前から思っていたその思いは、研修を終えた今でも変わることはない。




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