セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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環境ボランティアリーダー海外研修

2005年(平成17年)第7回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 特定非営利活動法人 水環境ネット東北
菅原 正徳さん

はじめに
幼少時代から釣りが好きで、川や海に関連する仕事につきたいと考えていました。特に、建築学科でも環境系の研究室に所属していたことから、土木事業に関わるコンサルタント会社を選び面接を受けました。「自分の幼少時代の釣りを通した体験から、小さな地区を流れる川ですら、コンクリートによる護岸がされ川の流れが変わり、よく魚の釣れた淵がどんどん浅くなってしまった。工事の現場からそういった環境問題について関わっていきたい。」という思いを伝えたところ、担当者の回答はあまり納得のいくものではありませんでした。

このことをきっかけに、独自に環境に関する勉強をはじめNPOという組織の存在を知りました。そして、幸運なことにほぼ同時期に今の職場の当時の事務局次長に会う機会にめぐり合ったのです。私はこれまでのなかで感じた、環境に対する企業の取り組みへの疑問とNPOへの興味を話したところ、親子を対象としたプログラムにボランティアスタッフとして参加する機会をもらいました。ここでの体験が非常に楽しく、そして新鮮だったのでその後も様々なプログラムにかかわるようになりました。約半年間、生活費を稼ぐアルバイトをしながら、特に川での自然体験のボランティアスタッフとしての活動に参加してきました。その後、NPOを就業の場として希望していた私の意志が受け入れられ、晴れて職員として水環境ネット東北の一員となりました。

フルタイムの正職員となって驚いたことは、そのデスクワークの多さでした。東北地方において川や水環境に関わる市民や行政、教育機関、企業がそれぞれの取り組みを発表し意見交換を行うワークショップの開催や行政からの受託事業を行っていることから、その企画や打合せ、様々な手配、そして報告書の作成などが仕事の大部分を占めています。月に数回だけ川でのイベントだけを手伝っていたボランティアスタッフだった頃は、まったく想像もつかないNPOの活動というものがそこにはありました。

ほとんど何も知らずに入っていったこのNPOでの活動は、これまでの少ない年数ながらも、大きな経験を与えてくれました。今後もますます可能性が広がってくると信じています。そして可能性を追求していくためには、会を継続していかなければなりません。今回の研修では、特に会を継続して運営していくために必要となるマネジメント方法を学びたいと思います。

ニュージーランドの環境の変化
ニュージーランドの環境は、生態系の特異性がまずあげられます。肉食の哺乳類がいなかったため、昆虫や鳥類にとっては外敵が一切いない土地、まさに楽園となっていました。また、カウリのように現在では考えられないような巨木が成長できる恵まれた条件もそろっていました。

しかし、この土地に1000年前から人間の移住がはじまりました。そのなかでも初期の移住民族マオリの人々が、恵みを与えてくれる自然を空の神、山の神、大地の神などとして畏敬の念を持って生活していたのに対して、1600年代に移住してきたイギリス人は、野を焼き、木を切り倒し、外来の動物を持ち込み、牧場を広げました。その結果、外敵から身を守るすべを知らないニュージーランド在来の動植物が絶滅やその直前まで追い込まれることになりました。

ニュージーランドの環境への取り組み
今回の研修を通して、ニュージーランドの環境への取り組みは、それら絶滅の危機に瀕した動植物を保護することが最大の目標であることが分かりました。訪れた多くの団体の活動もそれに特化していました。また、行政サイドの取り組みも多くの民意を反映する形で、それらの活動をサポートしていく体制が前面に打ち出されていました。

日本の取り組み
日本における環境への取り組みは、ニュージーランドの環境保護に対して環境保全という言葉で表せるのではないかと思います。多くの市民団体は、自然環境を非常に広い視野で捉え、多岐にわたる活動を展開しています。また、環境に関わる行政も多くあり、いまだに連携は取れていない現状です。

ニュージーランドと日本の取り組みを比較して
・外来種の駆除について
ニュージーランドにおける外来種の駆除は、在来の動植物を守るという目標に対する誰もが納得する明確な目的であるのに対して、日本ではそこまで結論付けられていない気がします。しかし、外来種の増殖を抑えるために天敵となる外来種をいくつか移入しているニュージーランドの現状は、かつて日本が行い現在になって問題になっている点だと思うので、今後の対応は注意して行って欲しいと思います。

・ボランティアと行政の協働
日本におけるボランティアと行政の協働は、単に助成金によるつながりが非常に大きいことと、NPOへの事業発注や指定管理業者としての認定こそ増えてきているものの、まだ模索段階にあると考えられます。それゆえに、活動資金の調達がうまくできず、活動を継続してできない、または、思うような活動をできない団体が増えてきているのだと思います。しかし、ニュージーランドのボランティアの多くは、自分たちが自然を保護するための活動資金は、自分たちで捻出するという考え方のところが多く、ある意味でこれまでの考えを覆された感じがあり大変参考にありました。ティリティリマタンギ・サポーターズのように、企業への働きかけを積極的に行っている点も今後さらに日本での活動を活発化させる為には重要なポイントだと思います。また、行政の方針にも、環境に関わる行政の統合や環境マネジメント法の整備など、環境保護を行っていくボランティアをマネジメントしたり積極的にサポートする姿勢が十分に感じられました。

・会の継続的な運営にについて
NZの活動の多くは、前述したとおりそれぞれが捻出しているケースが多かったのですが、やはり会を継続的に運営していく場合には、助成金や会費、行政からの事業の受託など安定した収入源が必要になってくると思います。
ティリティリマタンギ島に向かう船の運賃の一部が会の収入につながること、そこでのパンフレットの販売、また、海外の基金からの助成というのは、NZならではだと思いました。発展(観光)と環境保護のバランスがうまくとれていることと、世界有数の美しい環境を持つ国であることが、広く普及している証拠ではないかと思います。

また、会を継続的に運営する要素として、活動に参加する若者があげられると思います。そしてこの問題は共通の課題になっています。カフレラワ・バック・トラックのイアンさんに後継者の話を伺ったとき、「まだ考えていない」と返答されたこともありますが、EMNマナワツのどの団体も年配者がほとんどで運営しているようでした。老人が亡くなった場合に遺産の一部が会に寄付されるというシステムが紹介されましたが、全体的に会員現象の傾向のなか、これに頼ることは非常に危険であると思います。会員が別の会員を加入してくるノルマ性も合わせて紹介されていましたが、ボランティアの本来の意味からすると、少し疑問が残る気がします。こういった意味でも若い世代を会の活動に関わってもらうようにする明確な工夫は、今回の研修では得られなかった気がします。

・環境行政の統合
日本では環境に関する省庁が国土交通省、農林水産省、環境省などのように複数にそして複雑に分かれています。そしてこれにはそれぞれの利権が大きく生じてくることから、環境問題に取り組む我々にとって障害となることがたびたび発生しています。ニュージーランドこれらを環境保護省としてひとつに集約しました。まだ、予算の割り当てや下部組織との連携など、行政内での問題は数多くあると思いますが、このことにより政府の方針がより明確化し、環境保護への取り組みがますます広がるのは間違いないと思います。

・法体系について
ニュージーランドのリソース・マネジメント・アクトは、日本には例を見ない環境に関する法律であると思います。その柱は (1)中央政府の管理を少なくする (2)継続的な運営を可能にする (3)手法(ゾーニング・地域住民が意見することができる・同意が必要) の3つになります。中央政府の管理を少なくし、地方自治体がその法律内でその地域にあった方針をとることは、環境にとっても、地域にとってもとても有効に働くのではないかと思います。日本にもこのような法律ができたならば、これまで中央省庁の合図で取り組んできた地方行政に、自らの意思で環境問題に取り組んでいくという姿勢が生まれ、様々な形で地方を活性化させていくことでしょう。また、市民が環境活動や地方の自治にこれまで以上に取り組むきっかけとなることでしょう。

これからの目標
NZ取り組みを学び、そして体験し、これからの日本の活動に必要なものは” 共通認識”なのだと思います。誰もが強く「美しいNZを取り戻したい、守っていきたいと」心から願い、信念を持ってしていました。日本でも多くの市民がそのような信念を持ち活動を行っていますが、社会を動かしそして環境を守っていくためにはもっと多くの個人がその信念を持ち活動していかなければないと思います。

そのためには、これまでのワークショップや交流事業をさらに効果的なものに押し上げ、産業界、行政、市民団体、教育機関などさまざまな人たちと意見交換を繰り返し共通の意識を持つことで、さらに多くの人たちが関わることのできる明確な目標を見つけ出すこと。また、そのような意見交換をするために、各セクションをボトムアップするための働きかけ。そしてそういった取り組みの中から、さらに社会と環境を改善していくための政策提言をしてきたいと思います。

最後に
今回のNZ研修に参加して、あらためてこの活動に入ってきた自分の気持ちを思い出すことができました。本来なら常に明確に人に伝えることができなければいけない立場であったはずが、いつの間にかそういったことを省き、仕事としての活動にのめりこんでいた気がします。様々な機会を提供していただき、本当にありがとうございました。



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