セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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環境ボランティアリーダー海外研修

2007年(平成19年)第10回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 NPO法人 しずおか環境教育研究会
今永 正文 さん

【はじめに】
 今回の研修の最終日となった6日目の午後。これまでのメイン会場であったラインランド・ファルツ(RP)州の首都マインツのビルが立ち並ぶ市街地から抜け出し、アウトバーンを車で走ること約1時間半。山に視界を遮られるということなく、だだっぴろく広がった丘陵地帯の一角に、ドイツ最大の自然保護団体の一つであるドイツ自然保護連盟(NABU)の地域センターがありました。教会の尖塔が所々の建物の間にのぞく中世の村に迷い込んだかのようなLADAUの集落。路傍に横付けされていたワインを運ぶトレーラーからの発酵した葡萄の香りが当たり一面に漂う中、私達一行は古民家造りセンター内に、現地スタッフの笑顔で迎え入れられました。これまで研修を受けてきたオフィス街の整然としたビルの一室とはまるで違った雰囲気に戸惑いながら、「こんな小さな村の中にも、活動拠点があるのか」と驚きました。また、それと同時に、“この”地域のスタッフが、“あの”市街地で説明を受けてきた訪問先のスタッフと、同じ組織や同じ想いで活動していることが思い返されて、地域と街とがお互いに網の目のようにつながっているドイツの環境保護活動の広さと深さを改めて感じた場面でした。
 今回の研修に参加するにあたって、当初「地方都市における環境NPO及び環境学習施設のマネジメント」について学ぶことをテーマとして掲げました。実際に参加してみて、ドイツの現状とテーマ設定についてズレを感じながら、以下の設問に答えていきたいと思います。


訪問団体の活動やマネジメントなど、どの部分を日本のボランティアリーダーとして生かせるか?

【会員獲得について】
  これまで私が活動するNPOで、会員獲得について意識していなかった訳ではありませんでしたが、会員管理に手間がかかること等を理由に、積極的な会員の勧誘を行ってはきませんでした。それは事業運営に意識が回るあまりに、会員獲得の意義を見失っていたように思います。今回の研修で素直に感じたのは「数は力」ということです。今回NABUやドイツ環境保護連盟(BUND)などの大きな環境保護団体を視察しましたが、それぞれ40万ほどの会員数を背景に、社会的影響力を保持しているということが分かりました。また、会の活動を保持するためには、当然安定した資金を確保しなければなりませんが、NABUもBUNDも会費が収入に占める割合がいずれも約4割に達し、そのことが会の運営を安定化のみならず、自らの活動の独立性を裏付けることになっていることに気がつきました。
 子ども達に対して、より多くの自然環境と触れ合える場を提供することを中心に、私の会はこれまで活動を続け、それなりの成果は挙げてきました。けれども、その成果を広く社会に伝え、活動の意義を理解してくれる賛同者を増やしていかなければ、より環境に配慮した社会づくりに向けて、その仕組みを変えていくことはできません。その辺り、自らの組織の目標があいまいであったこと等から、事業の運営だけにコストを費やし、手ごたえのない事業を繰り返してきたのではないかと強く反省しました。
 BONDでは、ロビー活動として州の環境大臣と直接面会して、自らの政策について訴える機会を持ち、テレビ討論や公聴会等でその主張を公にする場を持っていると聞いた時には、隔世の感がありました。ドイツとの政治形態が異なることを差し引くとしても、このような機会を持つことができるのは、連邦全体で40数万人、また州でも約1万2千人の会員がバックにあることが、他のセクターとの平等な立場を保障すると共に、専門家とも連携した質の高い企画力が、同じ土俵の上で、お互いの政策論争を可能にしていることが分かりました。
 私たちの会でも、社会の仕組みをよりよいものにしていくため、行政が開催する各種委員会などへ参加をし、地域の基本計画などに対して自らの意見を述べてきましたが、そのことが具体的な仕組みづくりや制度の改変に具体的につながってきたという実感をもてないでいました。
 この辺り地道な活動ではありながら、もう一度会の中で会員の意義を確認し、これまでの実績を明らかにしながら、より多くの市民に私たちの活動に賛同してもらえるような仕組みづくりを行っていきたいと思います。
 また、この会員獲得については、資金調達の考え方とも重なってくるところがありますが、どうやら王道はないようです。けれども、今回訪問した先のスタッフからは、一様に「人と人との信頼関係を醸成すること」が基本であることを繰り返し指摘されました。また、ドイツでの全体的な傾向として、これまで会自体の活動に賛同して、会員になったり寄付をしたりという状況から、その会が実施するプロジェクトに興味をもって関わってくる場面が増えているそうです。会員獲得の工夫としては、事務所に立ち寄った市民にお茶を振る舞い、まずはじっくり話をするということに始まって、地域のお祭りやイベントなどにインフォメーションスタンドという自らの活動を紹介するブースを設ける方法や、主催イベントを会員獲得の場として積極的に活用すること、連絡先を把握した場合はダイレクトメールを送信し、誕生日にはメッセージを送り継続的なコミュニケーションを行っていくなどの手法があることが分かりました。私達の会でも、「誰が」「誰に」「何をしてほしいのか」ターゲットや参加メニューを絞り込み、まずはホームページのトップに会員募集の項目を明示することや、配布している事業紹介パフレットを補う形で入会案内を挿入すること、行事に参加した家族を対象に家族会員制の検討など、まずは手につけられるところから、作業を始めてみたいと思います。

【資金調達について】
 
現在、私達の会では、委託事業の収入が全体の8割を占め、会費による収入は約1%、寄付による収入はほとんどないというのが現状です。今後、継続的に事業を行っていくためには、財政基盤の安定化が求められており、その点でも、上記会員獲得に加え、資金調達方法の開拓も急務になっており、今回NPOの資金確保への取り組みを推進し、その人材の育成をはかっている「ファンドレージングアカデミー」を訪問し、資金調達についての基本的な考え方を学びました。
 ドイツ国内でのNPOの資金調達の現状が実証的に説明され、現在では“遺産”が新たな資金源として注目されている現状を知りました。また、資金調達といっても「人と人との信頼関係の醸成」が基本にあり、そのような視点からのメニューを開発や継続したコミュニケーションの必要性が確認されました。
 これまで、私達の会では寄付という形での資金調達は実施されてきておらず、この分野は地域の環境NPOの動向からも、まだ十分に資金調達法として未開拓であることから、まずは寄付についての<誰が><誰に><何に対して>という寄付を募るためのコンセプトの部分を整理し、どのような方法が可能か検討していきたいと思います。


研修を通して、日本の環境ボランティアリーダーを支援するために、どのような仕組みが考えられるか?

 ドイツでは、義務教育を終えた16〜26歳の青年に対して、環境や自然保護に関わる様々な団体や農家で、1年間の野外作業などの実習を行う「環境ボランティア研修制度(FOJ)」が行われています。今回、実際にこの研修制度に参加して、地方の「森の幼稚園」で実習されている菅沼倫代さんとお会いし、直接お話しを伺うことができました。
 今後、彼女のような環境の分野で次の世代のリーダーとなる人材が国内でも輩出できるよういするためには、日本においても各年代において、継続的に参加・体験の場を確保し、技能のレベルアップを図れるような支援制度を考える必要があります。

  • 幼児〜少年少女期
    「森の幼稚園」は、幼児を半日森に連れて行き、森の中で自然と触れ合いながら心身をはぐくむプログラムで、菅沼氏によるとドイツ国内ではすでに市民権を得て久しく、約400の場所でこのような取り組みが行われているとのことでした。このような幼児期からの自然に触れさせる機会を与えることはもちろんのこと、当日の行き先を決定する際も多数決でその場所を決めるという話も別の機会に聞き、ドイツにおける民主主義教育の徹底した一面をのぞかせるエピソードです。また、今回の研修1日目に、マインツの中心街に市が運営している環境情報センターを訪れました。ここは、市内の環境情報を集約し情報発信する機能を目指し、季節ごとの企画展示や学校に対するプログラム提供、先生へのプログラム運営へのアドバイスなどを行っているということでした。そこで「森の幼稚園」に続き、地域の環境学習施設を有効に活用する中で、児童への環境学習プログラムの場の提供を継続することが必要です。

  • 青年期
    続いて青年期には、ドイツでは義務教育の最終年の16歳になると2週間のボランティア実習というものがあるそうです。また先ほど紹介した「環境ボランティア研修制度」も16〜26歳までを対象としており、環境に関心を持っている層だけではなく自分の将来の方向性を定めるために参加してくる若者も少なくないそうです。このような取り組みが、連邦及び州政府の取り決めと予算によって公的な形で行われていることは、小さな環境NPOでは実施できない教育部分の機能を補完するばかりではなく、ボランティア活動そのものの土壌をつくることであり、青年期以後の活動に対する敷居を下げる大きな要素になると思います。また、NABUでもBUNDでも、会の中に青年による活動があり、その活動を支援するアドバイザーやコーディネーターが活動されていました。現在JCなどで行われているような青年活動を、環境NPOの中にも内在できれば、若年層の活動現場の確保と、それを目当てとした参加者の獲得ができると感じました。

  • 成人期
     様々な環境NPOの運営側になるためには、マネジメントの視点を得ることが必要です。その中でもこの度学んだ「ファンドレージング」という考え方は、単に資金調達にとどまらず、自ら所属する会の活動を客観的に評価し、それを社会のニーズとマッチングさせるという視点から、非常にベーシックで必須の研修ではないかと感じました。また、今回の海外研修の地域版のような、そのエリアのリーダー層が集まり、一定期間の間寝食を共にし、地域の環境問題の課題発見とその解決法について講義と実習で学ぶような講座が実現できれば、ネットワークの形成と地域のビジョン作りに寄与できるのではないかと思います。


全体を通しての感想

 今回の研修に参加する直前に、今年度受託した協働の取り組みを普及するために民間と行政担当者を招いた意見交換会を開催したところ、ある参加者から言われた意見が突き刺さった。「この会合は、結局点数稼ぎに飢えた行政と自ら地域課題を発見できない稼ぎに飢えたNPOが結託した場に過ぎない」。何故このような批判にさらされたのか、当時は驚き、今もその答えを考え続けています。そして、今回の研修の最終日の反省会の時に、その答えを一部が見えた気がしました。
 「地域の問題って、結局地域で解決するしかない。それがドイツにはあった」(三枝氏)。「ドイツの活動がそれほどすごいとは思わない。けれども課題を認識して、それを主張し、実施しようとしているところがすごい」(山本氏)という言葉であった。このような具体的な地域での課題解決の取り組みがない限り、何ができて、何ができないのか、地域やそのグループが学習することができず、その手応えのない限り、大きなビジョンは生まれ得ないではないか、そのような議論に話が進んだ。小さくても良いから、私もまた自分が関心をもった環境をテーマとした地域の課題を見つけ、企画書をつくり、仲間を募って、他のセクターに働きかけることをしながら課題解決をはかってみたいと思いました。そしてそこで得た手応えから、私の会でできることできないこと、などを整理してみたいと思いました。「BONDやNOBUを超える次のビジョンを描きたい」(草野氏)、「これを機会に海外とのコミュニケーションを続けてみたらいかがですか」(河津氏)「行政職員として共感できるビジョンを描きたい」(三浦氏)という6日間寝食を共にした仲間の声に背中を押されながら、「今回の研修で自信をもった。日本でもできる!」(矢野氏)という意志と希望をもって、また活動を再スタートさせていこうと思います。
 最後になりましたが、この研修でお会いすることができた三枝さん、矢野さん、山本さん、草野さん、仲津さん、三浦さんには、とても有意義(プリマ)な時間をご一緒させていただきました。また、日本旅行の滝上さん、通訳の信子さんと相原さん、事務局の小野さん、そしてこのような貴重な機会を与えてくださった皆様に心より感謝いたします。ありがとうございました。




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