セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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環境ボランティアリーダー海外研修

2007年(平成19年)第10回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 NPO法人 環境カウンセリング協会長崎
矢野 博巳 さん

 今回の研修での私の課題は次の5点だった。
  • 会員の獲得手法(特に若者)
  • 資金調達の手法
  • 中間支援組織の考え方、手法
  • 環境教育の手法
  • 行政の環境NPOとのかかわり、環境NPOの行政とのかかわり
 しかし、今回の研修では「環境教育の手法」に直接触れる機会がなかったので、他の4点に沿って今回の研修結果を報告したいと思う。


訪問団体の活動やマネジメントなど、どの部分を日本のボランティアリーダーとして生かせるか。

(1)会員の獲得手法
 会員の獲得手法や悩みについては、国の違い・組織の大小にかかわらずほぼ同じであることが分かった。その中で、あながちないがしろになりがちなか会員へのアフターケアの大事さについて、再認識した。それは会費を払っていただいている会員のみなさんに対する「説明責任」でもある。このアフターケアの重要さを再認識し、会員一人ひとりとのつながりを大切にしていくことこそが、これからの環境NPOの会員拡大や実活動会員の増加につながっていくものだと考える。
 このことをこれからの地域の活動の中で、広く他の環境NPO等にもお知らせしていきたいと思う。具体的な方法としては、地域での研修会の開催、HPでの広報を考えている。
 市内のいたる所に置かれていた環境NPOのチラシ、これも会員獲得のための一手法である。チラシにはその内容に興味を持った人がそのNPOに連絡するためのハガキが刷り込まれており、NPOはその情報により会員勧誘の情報を得ることができる仕組みになっていた。日本ではまだ多く見られる方法ではなく、私の所属するNPOから始めてみたいと考えている。

(2)資金調達
 安定した収入の確保先としてはドイツでも「会費」が大きなウエイトを占めていることがわかった。そして、そのためには会員の確保が必要であり、その方法については前述のとおりである。
 また、ドイツでは資金の調達先として「遺産」があると聞いていたが、日本ではなじまないだろう、日本では無理だろうという先入観で考えてしまっていた。今回、話を伺うことができたが、その基本は会員のケアであり、会員個人との信頼が構築されたうえでの「遺産の譲渡」であることが分かり、それならば、日本でも可能ではないかとの考えに変わった。
 お葬式の香典返しを社会福祉協議会に寄付する行為は日本においてごく自然に行われている行為であり、それが故人や遺族の意思であれば、我々環境NPOに寄付していただくことが十分に可能だと考える。そこで重要になるのは「説明責任」であり、会員個人との信頼関係であるのは言うまでもない。
 企業スポンサーの獲得も大事な資金調達方法である。しかし近年ドイツでは、企業は年間をとおしてNPOの活動に支援を行うのではなく、企業に興味やメリットのあるイベントやプロジェクトに限って支援を行うように変わってきたとの事であった。このことは日本においてもいえることであり、そこにターゲットを絞った戦略が環境NPOにも求められていると思う。そのためには環境NPOにはニーズにあった企画力と事業実施後の説明責任が求められていると思う。
 そのことを広く地域の環境NPOなどに伝えていくことが日本の環境NPOな活性化につながっていくと思う。

(3)中間支援
 地域の環境NPOの活動を支援する中間支援組織については日本にも活躍する団体が出てきている。今回ドイツで地域の環境NPO活動の支援を行っている組織や、ファンドレージングなどの専門的な分野で支援を行っている組織の活動に触れることができた。そして、それらは母体となるNPOの一組織であったり、利益を上げる企業であったり、ちゃんと自立している組織であった。
 今回私が学んで帰りたいと思っていた中間支援組織のイメージは、人・物・金・専門知識等で困っているNPOの援助(助言)機関であり、政策提言の取りまとめ機関であった。特に政策提言を取りまとめる組織については「政治」との付き合いをどのように整理していくか、一朝一夕に結論が出るとは思わないが、これからの環境NPOの活動において必ず必要となってくる分野であり、これからかかわっていく九州地区での中間支援組織の設立の中で結論をさぐっていきたいと思う。

(4)NPOと行政
 ドイツの環境NPOは行政の開発計画や開発行為に意見を述べる権限が法律で定められているということは知られているが、今回直接その制度に触れることができ、その背景にはドイツの民主主義の歴史や環境市民活動の長年にわたる努力というものがあるということが分かった。
 そしてドイツの環境NPOはその制度を十分に活用し、自分達の意見を行政に反映させていることも分かった。
 ドイツの制度の“ツボ”は意見を聞くべき団体を法律の中で規定しているところだと思う。環境団体に意見を述べる権利を与えると共に、意見を述べなくてはならない責任をも感じさせているところにあると考える。
 日本の行政が行っている「市民の環境行政に対する意見の聴取」については、内容と期間が限られた「パブリックコメント」という手法がとられていることが殆どであり、「市民からの意見⇒行政からの(四角四面の)回答」という一回きりの意見交換に留まっている。意見のキャッチボールができるようなシステム作りが望まれる。
 また、不完全とはいえ市民の意見を聞く機会が作られているにもかかわらず、環境NPOからあまり意見が出てこないという現状もある。せっかく与えられた機会を積極的に利用する姿勢も環境NPOに求められているように思う。
 行政の中にいる私にとって、組織の理解を得ながら市民の意見をもっと取り入れやすい制度に変えていくことは大きなテーマであり、その様な制度を作っていくよう努力していく。
 また、環境NPOから行政への働きかけとしては、いわゆる「ロビー活動」がある。今回そのロビー活動についても研修を受ける機会をいただいたが、単に「政治活動」だけではなく、各地域の活動グループからの意見や要望を吸い上げるシステムが整っており、その意見を制度的・技術的に検討する組織・人材がそろっており、そこで出来上がったプランを政治的に・中立性を持って提案するシステムを持っているということであった。そして、その背景には何十万人という会員の数の力があるということも分かった。
 日本では、まだまだ政治活動と社会貢献活動(ボランティア、NPO)を結びつけることを嫌がる人蛾多く、なかなか難しいと思うが、私たちの考える政策を実現していくためにはドイツ風の方法も必要なのではないかと考える。今後の中間支援組織の課題だと思う。


研修を通して、日本の環境ボランティアリーダーを支援するために、どのような仕組みが考えられるか。

 私たちが今回研修してきた成果を反映し、環境ボランティアリーダーを支援するための「仕組み」として(もう検討が始まっていることではあるが)2つの仕組み作りが有効だと考える。

(1)各地域(ブロック)における中間支援組織の設立
 日本の環境NPOはまだまだ脆弱であり、資金的基盤・人的基盤も整理されていないのが現状である。各々の環境NPOがそれぞれの人材をそろえ活躍するのが一番の姿であろうが、各NPOの不足するところを補っていける中間支援組織は必要な存在だと考える。
 今回、ドイツでその中間支援組織について研修してきた私たちがそのノウハウと各個人の知識を集めれば、各地区の中間支援組織として十分に機能できると考える。
 既に北海道、近畿ではセブン-イレブンみどりの基金の援助で組織ができ、九州でもその設立に向けて話し合いが行われている。しかし、私たちが欲しているのは「組織」ではなく、実際に多くの環境NPOに利用していただく「システム」作りである。その為に必要なのは「利便性のいい事務所」でもなければ「優秀な事務員」でもない。この海外研修に参加した私たち研修生の協力だと思う。

(2)環境ボランティアリーダーのデーターベース化と組織化
 環境ボランティアリーダーのデーターベース化については、環境省が行っている「環境カウンセラー制度」や各地域で行われている「環境アドバイザー制度」などで行われている。
 しかし、これらのデータは(HP等で開示されているが)行政が握っており、殆ど活用されていないのが実情だと考えられる。
 これらのデータを中間支援組織で管理し、各地域の環境活動団体に人材派遣できるようなシステムが望まれる。
 また、行政の施策に対する意見を述べるためのプロジェクトチームを作るなど、環境政策の実現に向けた組織化も重要なことだと思う。


全体を通しての感想

 第一の印象は、「環境先進国といわれるドイツでも我々と同じ悩みを抱えており、組織やシステムの違いはあるが、環境面で我々(日本)は決してドイツに負けていない。」ということだ。
 会員や資金調達に悩んでいること、会員数が何十万人いるといっても実際に活動しているのはその5%程度しかおらず、全く環境問題に理解を示さない市民への働きかけに苦労していることなど、実情は日本と殆ど同じである。
 国民全体の環境意識という面では、(几帳面、綺麗好きという)国民意識からかドイツより日本のほうが勝っていると思われる点も多いと感じた。今後は、この「国民意識」を利用して、環境立国日本を造っていけるのではないかと思う。
 しかし、ドイツに明らかに劣っているのが「制度」の面である。民主主義が作られてきた過程の違いはあるが、ドイツに学ぶ点は多くあると考える。この様な「制度」を整備するのは「政治」であり、そこへのアタックは今後避けて通れない課題であると考えている。その実現に向けて努力していきたい。
 一方、現在ある「制度」をより環境に配慮したシステムに変更していくのは「行政」の仕事である。幸い(?)、その「行政」の畑の中にいる私にとって、既存システムの変革は大きな課題である。環境NPOと一緒に知恵を出し、より活用しやすいシステムに変更することができるよう努力したい。
 そのためには組織内の意識改革が必要であり、また私のよきパートナーとしてNPOと行政の橋渡しが出来る人材の育成が急務だと感じた。現在のNPOの活動、中間支援組織の組織化に併せて、大きな私の課題の一つとして取り組んで行きたい。


最後に

 今回の8泊9日のドイツへの研修旅行は(事前に聞いてはいたが)とても厳しいものだった。しかし、事務局の小野さんが何度も何度もおっしゃっていたように「善意の募金」を使っての研修であればこうあるべきものだとも思う。
 今回のメンバーを見て、若い人が(思っていたより)多かったことに、日本の環境の未来に安心をすると共に、たくましさを感じ、私ももっと頑張らねばと気合を入れ直した次第です。
今回研修に参加した6人のメンバーとセブン-イレブンみどりの基金のみなさんに、今後も一緒に手を取り合って日本の(世界の)環境をよりよい状態で次世代に引き継いでいけるよう活動を続けていくことを約束し、個人的には「地球に謙虚に」暮らして生きたいと思っています。
 そして最後に、今回の研修にかかわっていただいた全てのみなさんに「ありがとう」をお伝えしたいと思います。
 ダンケシェーン、シェニョール、シェニョリータ



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