セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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環境ボランティアリーダー海外研修

2008年(平成20年)第11回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 NPO法人 北九州ビオトープ・ネットワーク研究会
デワンカー・バート・ジュリエン さん

 秋のドイツは、春と並びに個人的に一番好きな季節である。春の新緑そして秋の紅葉は、街中に散在してある自然の美しさを感じさせている国である。今回の研修は秋季最中で、比較的に穏やかな天気で晴れの日が多く、時々雨の日もあった。


徹底的に環境問題を解決しようとしている組織団体

 今回の研修の主な目的は環境先進国と言われているドイツの環境政策について、最大の環境団体BUNDとNABU、また幾つかの草の根運動グループや行政との連携など、多方面からドイツの環境政策について調査を行うことだった。現在、ドイツの環境取り組みは全て上手くいっているとは言い難いが、チャレンジの精神から学ぶことが非常に多い。日本でもドイツでも地域特有の環境問題以外、同じような環境問題(温暖化、生物多様性の喪失等)が生じている。水俣やライン川汚染事故等が、社会全体一般市民までが環境へ関心を持つ出発点と言える。
 日本と同様、多くの地域密着グループが環境活動を行い、また殆どの活動員が一般市民であり、ボランティアの立場として協力している。ドイツで感じたのは、環境活動家の個人の熱心さが、周辺の人や地域へ非常に大きく影響することだ。
 10日間の研修はハードなスケジュールだったが、毎日2〜3カ所を訪問し、各環境団体の活動を説明してもらい、さらに私たち研修生5名からの多くの質問に対してドイツ人らしくて丁寧に回答してもらった。不思議な気分だったが、最終日にはドイツの環境政策や長年環境団体が取り組んでいる活動の全体構造図が少しではあるが見えて来た。
 ドイツでは、運営仕組みの面から環境団体を詳しく見ると、大きく分けて二つの環境団体種類が存在している。一つのグループは地域密着の小さな団体であり、もう一つのグループは全国的に組織されている環境団体である。日本に類似する環境団体は前者のような割合が小さな地域密着で活動している団体が多いといえる。これら類似している団体は日本の環境団体と似ている面も多く、異なっている面も当然あると思う。以前から地域レベルで環境問題を解決するにあたって密着して活動することはより効果的だと信じていたが、今回の研修を受けて大きく変わって来た。ドイツの環境制度の改善と環境政策への働きかけはBUNDやNABUのような組織的に活動している大きなグループよりやりやすいと感じている。
 日本で全国的に組織されている環境団体は幾つかあるが主流ではない。もちろん歴史的と社会的な背景の違いから学んで、日本にとっては今のような地域密着型で活動している多くの小さな団体が環境問題を解決するに当たって良いのか、あるいはドイツで見られる組織的なあり方のほうが良いのか、ヒントとなるものを今回の研修で得た。
 近年、日本でも浸透しつつある広域なエコロジカル・ネットワークの概念に基づいて徹底的に自然保全活動を目指すため、ドイツではBUNDとNABUのような全国的に組織を持つ団体は、トップダウンとボットムアップの在り方を本部(連邦)で決めている。地域からの情報をボットムアップで本部にあげ、本部がトップダウンで全体の方針やガイドライン、そして政策を支持し、各州でこれらの方針を受け、さらに地域特性の方針を加え、下層の各地区(KREISとORT)で実行部隊としてこれらの方針に沿って活動している多くの小さな自然保全団体が存在している。
 BUNDは全般の環境問題を扱っているドイツの最大級環境NPOであり、NABUはドイツの最大な自然保護団体であり、両団体とも組織的に活動し、長い歴史を持つNPOで、設立当初は会員が少なく、今日まで驚くほど会員数を増やし続けてきた。両団体を合わせて100万人の会員を占めている。BUNDは環境団体としての主な目的はもちろん環境問題ではありますが、社会に根付くため、密接的に各レベルで行政と連携を図りつつ、国の政策への影響力を持つ団体である。全国組織的に活動を行っている環境団体(BUND、NABU等)が政治ツールとして社会に浸透し、重要な役割を果たしている。
 ベルリンで全国をカバーする組織としてBUND連邦が拠点を持ち、さらに各州に、ドイツでは16州があり、独立で活動を行っているNPOの拠点を持つ。これらの17NPO(連邦と各州の16NPO)は大まかな方針を決める。戦略的に行政区域である州(Lander)と合わせて州支部局を設け、州政府との連携を緊密的に行う。例えば、州政府が道路の建設計画と自然に影響を及ぼすプロジェクトを企画する際に公聴会を開き、最大級の環境団体を招き、それらの計画に対して意見を述べる場を提供する。また、場合によって環境団体がそれらの計画に対して裁判訴訟を起こすことも可能である。
 行政区域(州:Lander、郡:Kreis、村:Ort、Gemeinde)と同じ区域に組織を設けることによって、政界との連携が図りやすくなり、そして会員を増やすにあたって、同じく行政区域に行う、選挙にも影響力を持つ。また各レベルで政治ロビー活動も頻繁に行い、下層の個々の団体が地域性を保ちつつ地道に活動を取り組んでいる。このように緩やかなネットワーク構想を持つことによって、トップダウンの政策やBUND全体の方針を上手に整理でき、また各地域(Kreis、Ort)の団体が独自の方針でボトムアップ活動をできる仕組みとなっている。一番下層(村)の団体会員は、会費を連邦に払い、連邦が運営でき、一部の会費は活動費として州支部局そして下層のレベルまで再びおりる。村の環境団体はこの予算を使って独自の活動を取り組む。
 各レベルでBUND、NABU、産業界、行政、市民ボランティア団体の連携が非常に重要で、また個々の環境団体が行っているプロジェクトや活動にこれらの異なっている参画者の立場を十分に考量し、バランスの良い連携ネットワークを構築している。行政、産業界、他団体との密接な連携が不可欠であり、例えば訪問先であるNaturnaheGrunのような地域型自然団体が日本では支流である。BUNDとNABUのようなあり方をどう日本で活かせるか大きな活動である。ドイツの最大級環境団体は環境保護の目的を達成するため自然度の高い土地を買収し、全国的な自然ネットワークを構築していることは普通の在りかたである。日本では土地の買収は非常に困難で、自然保護を実現するため検討する価値がある。しかし、何処が所有権を持つかによって長期的に土地利用をある程度決めることができる。土地利用の用途を変えることによって自然保護地区を開発行為から守り、開発抑制が可能になり、最終的な結果として広域的に自然保全につながる。
 財政的に厳しい日本の自治体にとって、これ以上の土地買収は不可能であり、今後、企業CSRの一環で土地買収に取り組んでいる自然保護団体を支援することが考えられる。同様のCSRの取り組みの一環で人材育成、金銭的な支援を上手に活用し、日本でも徹底的な自然保全活動が可能である。
 BUNDとNABUのような団体は日本に存在しないため、BUNDの在り方をそのまま日本に持っていくことは効率的ではない。同じようなあり方をこれから日本で築くのも考えにくい。むしろ日本の風土に合う取り組みを提案することが必要である。例えば、既存の団体が多く存在し、これらを上手くネットワーク化する価値がある。環境団体の主な目的は誰かが活動を行っていることが大事なのではなく、各環境団体が設定している目標を達成するための努力が最優先の課題であり、他団体と同様の目標を持つ団体がいれば、できるだけ連携を図ることで目指す目標をより早く達成できる、ということがドイツの環境団体から学んだ大きなポイントである。民族性そして歴史的な背景から見ても、既存の団体のネットワーク化を図ることは、簡単ではない。


他団体との連携、環境問題を解決する新たな手法

 環境団体の連携ネットワークは複層で存在し、環境リーダーとしてこれらのネットワークを区別できる能力、そしてこれらをさらにうまく活用する力を身につけることが大事で、ネットワークに所属している各団体そして各団体に所属しているメンバーの役割を明確する必要があり、メンバー同士の柔軟な連携も不可欠である。
 研修を受ける前、他団体とのネットワークまたは連携について多くの疑問点があった。しかし、今回の研修で出会ったNABU所属のケルン氏との意見交換を通して、ネットワーク化の重要性を再認識することができた。ドイツでも環境団体の代表者の多くはボランティアの立場として活動しているが、非常に高い専門性を持っていた。ネットワークづくりは多様な形態を持つ、日本でもどのような形態で連携を図れるかを再検討したいと思っている。組織的な団体はドイツ国内だけではなく隣接しているフランスまた日本の環境団体との連携も深めている。ドイツの環境政策はヨーロッパ連合にも大いに影響を与えていると分かってきた。BUNDとNABUは、環境活動を通じて得られた知識や経験を連邦政府の環境政策に反映させている。
 環境保護団体を支援するため、面白い社会的な取り組みもドイツにある。例えば、環境汚染者が裁判所から出た判決に従い、環境団体に対して罰金を支払う制度は、ドイツの独特なシステムであり、日本で考えられない。また、今後も同様な制度を日本に導入することは考えにくい。


ドイツからのお土産、日本に展開するべく課題

 身近な環境問題を解決する段階でいくつの手法があり、これらを視察していったプロジェクトを通じて発見することが重要であって、文化の違い、各々のプロジェクトの複雑さ、そして関係者の個性的なアプローチはさまざまであり、直ちにメインとサブを明確に理解する能力が非常に重要である。日本では環境問題を「問題」として扱っているが、ドイツでは「社会の一面」として取り上げている。日本に展開するべき課題を土産として持ち帰り、今回の研修で行政、企業、環境団体、市民との連携とそれらの仕組みづくりや生じている問題点について多いに参考できるものとなった。マインツ市が運営している環境情報センターを見学し、ごみ分別の考えは徹底的に実行していることが理解できた。




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