ヤスリを持つ植物


地面からぴょこんと出た耳のような葉。
触るとなんだか肉厚…。
そして葉の付け根から伸びた棒状の物体。
奇妙な植物ではありますが、れっきとしたシダ植物の一つです。

その名は「ヒロハハナヤスリ」。
草原の湿った場所を好み、春にだけ葉を地上に出します。
夏には枯れてしまい、その後は地下茎で過ごすので、お目にかかれるのは今の時期だけ。

等間隔のきれいな縞模様

この短い期間に、棒状の物体である「胞子葉」にある胞子のうから胞子を飛ばして子孫を残します。
この花のような胞子葉が、名前の由来でもあるヤスリ状になっているのです。

気になったそこのアナタ!
自然学校の草原でぜひご鑑賞ください。
4月28日(日)開催の体験プログラム「くじゅうの生きもの観察会」でもご紹介予定です。
お楽しみに!(指原)

地獄の釜の蓋(ジゴクノカマノフタ)


「地獄の釜の蓋(ジゴクノカマノフタ)」
これはとある植物の別名です。
なにやら恐ろしい響きですが、どんな植物を想像されますか?
答えは、こちら。

キランソウ(シソ科)花期は3月~5月

正式名をキランソウといいます。春に小さな紫色の花を咲かせます。
昔から薬草として利用されてきました。
地面に這いつくばって広がる様子を釜の蓋に見立て、
その薬効が「地獄の釜に蓋をして病人をこの世に送り返すほどである」、
というのが別名の由来だそうです。

地獄の釜のフタに見えますか?

ユニークな名前の生きものに出会うたびに、
先人たちの遊び心や観察眼に脱帽してしまいます。

キジムシロ(バラ科)花期は4月~5月

こちらはキジムシロ。「むしろ(筵)」とはわらなどで編んだ敷物のことです。
確かに、生えている場所や丸く広がる形・サイズが鳥のキジの敷物に最適かもしれません。
この植物を敷物代わりにしてちょこんと座っているキジを想像すると、
なんとも可愛らしく感じてしまいます。

夜空の星から神話が生まれたように、自然は私たちの想像力をかき立ててくれます。
風や陽射しが心地よいこの季節、目に映る自然からあなたの物語を見出してみませんか。
(川野)

巣作り


まだまだ春らしい景色は少ない飯田高原ですが、
早くもシジュウカラの子育てが始まろうとしています。
巣箱にせっせと巣材を運び込んでいました。
コケをくわえて巣箱の屋根に止まり・・・

くるっと宙返りして・・・

見事、巣箱の入口に着地

巣箱の中をのぞくわけにもいかないので、
巣作りの進み具合はわかりませんが、
順調に進んだとしてもヒナが巣立つのは1カ月以上先になります。
安心して子育てができるよう、そっと見守りたいと思います。 (阿部)
 ※巣箱への不必要な接近はお控え下さい。
  警戒のあまり、子育てを放棄する場合があります。

早春のヤゴ調査


自然学校のフィールド「さとばる」には池や田んぼ、小川といった様々な水辺環境があります。

そのため、幼虫が水中で暮らすトンボ類が数多く生息しています。

そんな早春のさとばるで、トンボの幼虫である「ヤゴ」の調査をしました。

捕まえたヤゴたち

調査の結果、小川、田んぼ、みいれが池にて4種類のヤゴを発見しました!

小川で捕まったひと際大きなヤゴ。
正体はオニヤンマです。
角ばった頭部が見分けるポイントです。
田んぼにいたシオカラトンボのヤゴ。
全身に短い毛を持っています。早いもので4月~5月には羽化し、草原などを飛んでいます。
小川で捕まえた比較的脚の長いヤゴ。
特徴からして、エゾトンボの仲間です。
周辺にはエゾトンボ科のタカネトンボが生息しているので、可能性が高そうです。 
みいれが池で見つけた平べったいヤゴ。
へら状の触角を持つこのヤゴはサナエトンボの仲間。春の園内でよく出会うダビドサナエではないかとにらんでいます。

一見似たような姿のヤゴたちですが、よく観察すると少しずつ違いが見られます。

体の形、大きさ、足の長さ、触角、トゲトゲの有無などなど。

とはいえ、種の同定となるとなかなか難しいものです…。(宮本)

野焼き進行中


「春は黒」と表現される九重。
冬枯れの景色から衣替えを行う、野焼きのシーズンを迎えました。
野焼きは枯野に火を入れる行事です。野焼きによって森林への環境変化が止まり、草原の環境を維持できます。
草資源の活用や草原をすみかとする生物や景観を守り、また地下水の涵養、害虫の駆除など、草原がもたらす恵みは様々あります。

先日、自然学校をはじめとする飯田高原内の3か所、そして日本百名山・九重山をおりなす名峰に囲まれた坊ガツル湿原で野焼きが行われました。

伝統的な火入れは「火をつける」のではなく、火種となる草の束を使い「火を引く」手法で行われてきました。今ではこのような風景もあまり見られなくなっています

どちらも開催日前に小雪に見舞われましたが、当日はパチパチと乾いた音を奏でながら、時折、ゴォーーーーー!っと勢いよく燃え上がりました。
焼け終えた黒い大地から立ち上る香りは、すこ~し甘いようで香ばしく、個人的には気持ちがいい匂いです。

防火帯へ延焼する火やくすぶった火は、はたき棒や水で鎮火
野焼き後の坊ガツル湿原。奥にそびえるのは、雪を冠した大船山

毎年、すべての野焼きが終わると、無事に終了したことへの安堵と、新しい季節のスイッチが入る感じがして胸が躍ります。
地域の皆さんといつもと変わらない春を迎えるのが楽しみであり、いつまでもそうであって欲しいと願っています。(指原)