セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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「ドイツ環境なるほど紀行」 連載-第7回- 森のようちえん2 〜ドイツの子どもたち〜

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海外研修
大人は道に沿って歩くが、
子どもたちにはすべてが道
(写真提供:重栖さん)

森の幼稚園に入学するにあたって、約束ごとがいくつかある。
●先生の見えない場所へ行かない。
●他の子どもに暴力をふるったり、森の中のものを壊してはいけない。
●先生に聞かずに、実や葉を口にいれてはいけない。
子どもたちは入園前に、家でお母さんやお父さんと一緒に、約束を覚えてくる。特に危険な動植物はこの森にはないが、吸血ダニがいるので子どもたちはできるだけ肌をださない格好をしている。帰宅後、両親は子どもの体にダニがついていないか確認をして、ついている場合は専用のピンセットで対応するそうだ。
安全面が気になるかもしれないが、森のようちえんといっても他の幼稚園と同じように保育士の資格を持った先生がしっかりとついている。ここの森のようちえんでは、専従2名とインターン生2名がいた。急なお休みの場合は当番の父母が参加することもあるそうだが、保育士の資格を持つスタッフを含む合計3名のスタッフがいないと、開園されない。

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森にあるもの、すべてが遊び道具
(写真提供:阪本)

ドイツの公共の幼稚園は無料なので、「森のようちえん」は多少高く感じる人もいるらしいが、それでもとても人気があるそうだ。ここの森のようちえんは定員は15名だが、現在も入園希望者がたくさん待っていて、どの子どもを受け入れるか、年齢や男女のバランスはいいかなど、決定は月1回の父母会で行われる。この幼稚園は、できてまだ1年半ということもあり、熱心な家庭ばかりで父母会へは毎回全員出席。なにか相談するべきことがある場合は、とことん議論して解決するので、特に問題はないそうだ。「特に問題がない」と父母がいい切れること自体が素晴らしい。

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コンテナの中。内装も手作り
(写真提供:重栖さん)

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子どもたちの人気の遊び場所
(写真提供:重栖さん)

「森のようちえん」の定義はいろいろあるだろうが、現地で保育士の方から聞いたのは、園舎をもたず、毎日森ですごす幼稚園をさすという。大きな建物も、そのための火災保険も、清掃スタッフも、そのための人件費も、なにもいらない。必要な物は父母の持ち寄りでほとんどまかなわれている。子どもたちの荷物を置いたり、時には緊急避難用として使われるコンテナも、子どもの保護者からの寄付。なにかが必要となると、父母会で相談される。

森のようちえんと一般の幼稚園の子どもたちの違いを聞いたところ、運動神経の発達、暴力性が少ない、子どもたちと協力しあえる、創造性や自主性、集中力が養われるなど、森のようちえんの良さが、確認されているそうだ。「普通の小学校に入ってから、ついていけるかしら?」と心配されるお母さんもおられるだろうが、さまざまな研究によると、学習意欲や自主性、社会性の面でも、平均以上だそうだ。

毎日が森・・・といっても、もちろんドイツだって晴れの日ばかりではない。「ものすごい大雨になったら、コンテナに入ることもありますが、今まで天候のために子ども達が早く帰宅したのは1回のみ。雨でも雪でも、正しい服装をしていれば、問題なく遊べるのです」とのこと。なるほど・・・。3歳の子が雨の中でも野外で活動すること自体、私には驚きだった。ヴェールシュタットの「みどりの教室」を訪問したときにも感じたが、ドイツでは子どもは「大人が何かを教えるべき相手」ではなく、「限りない可能性と能力と自分の意見を持った存在である」ということだ。
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木の洞でお料理中
(写真提供:宇都さん)
「3歳でリーダーは無理だろう」とか、「自分のしたいことはまだわからないだろう」なんて過小評価せず、子どもたちが自分の能力を発揮し、意見を表せる場をちゃんと用意している。そこには、子どもたちに対する信頼と、子どもたちが持っている素晴らしい感性や力への尊敬が感じられた。

※参考文献:「森の幼稚園 シュテルンバルトがくれたすてきなお話」今泉みね子・アンネッテ・マイザー著 合同出版




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