セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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ドイツ環境街道をゆく 連載-第11回- 競い合い協力する環境NPO−BUNDとNABU

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海外研修
NABUの会員についての分析
(写真提供:小野 弘人)

ドイツで約39万人の会員数を有するBUNDの規模にも驚きだが、それと同じ規模の環境NPOが他にもあるのだからもっと驚きだ。
NABU (Naturschutzbund Deutschland e.V.)である。NABUの歴史は、BUNDよりも少し古い。1899年に野鳥保護団体として発足したので、100年以上の歴史があることになる。発足当初の会員数は3,500人、1914年には約41,000人まで増加したが、1924年には約30,000人に減少した。第一次世界大戦の影響である。100年の間には世界大戦が二度もあったが、それでも組織の歴史が途切れなかった。これは、NABUの誇りである。
現在、NABUは、16の州支部、1500の市町村支部、40万人の会員、5000の自然保護地域、100の自然保護センターを有するまでに成長した。連邦レベル−州レベル−市町村レベルという階層構造と、役員の選出のしくみは、基本的にBUNDと同じである(バックナンバー4参照)。
NABU・ラインラント・ファルツ州支部は、1953年に設立され、現在、25,000人の会員と60の市町村支部、3つの自然保護センターを有している。
NABUでは、やはり野鳥保護の活動に力が注がれている。220匹にまで減少してしまったフクロウの保全には、10の市町村支部が協力して取り組んでいる。
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NABU事務所での集合写真
(写真提供:小野 弘人)

断崖に巣をかけるハヤブサも個体数が少なくなってしまった種の一つである。しかし、ハヤブサの生息地でロック・クライミングが行われるようになり、ハヤブサが警戒して巣に近づけなくなった。そこで、NABUの会員は、3ヶ月間、1週間交代でキャンピング・カーに泊まり込んで、ロック・クライミングを行わないように監視を続けたりしている。
ただ、以前に比べてNABUの活動もひろがりを見せている。ビオトープの管理、人工的な河川を自然な状態に戻すための提案・協力、環境教育、そしてポジション・ペーパーの作成、等々である。国土が住宅に埋め尽くされないように、今後10年で住宅の増加率をゼロにしようという面白いキャンペーンも展開している。組織が大きくなれば、活動の幅も拡がるし、逆に、会員数を増やそうと思えば、多様な問題意識を有する人々と取り込むために、活動の幅を拡げなければならないということであろう。
NABUの説明を受けて一つ感心したことは、会員についての分析をしっかりと行っていることだ。説明によると、会員は、積極的な会員と受動的な会員に分けられるという。前者は、自主的に、しかも繰り返し活動に参加し、報酬を求めず、自らの価値観や信念をもっているタイプだ。その割合は5%。その他の95%は後者で、会の目的や活動に賛同はするが、活動には参加せず、会費や寄付などの形で支援をするようなタイプだ。こうした分析は、新たな会員獲得戦略、ファンドレージング(資金調達)戦略、イベントやキャンペーンを組み立てる際の基礎となる。
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NABUにも青年部(ユーゲント)がある。
その連邦代表のアンドレア・ルーカス君。
(写真提供:小野 弘人)

そして、様々な支部が、多様な活動を展開することも重要だ。会員にとっては参加できる活動の選択肢が生まれるからである。会員は、興味関心、価値観、能力、時間の制限に適した活動を選択できる。ボランティア団体なので、「自由」「自主」「楽しむこと」が基本なのである。
こうしてNABUは戦略的に組織や活動を展開してきた。BUNDと競い合うように。「NABUはBUNDより、少しだけ歴史があって、少しだけ大きい」。そんな言葉の中に、NABUとBUNDの関係が伺える。
一方で、NABUとBUNDは協力関係にもある。それは、ポジション・ペーパーの作成時であり、環境ボランティア研修制度においてである。環境ボランティア研修制度については、次回紹介しよう。




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