活 動
自然共生型田んぼ

生きもののすみやすい環境を創り出す
 ~自然共生型田んぼ③~

具体的な取り組み

生きものがすみやすい田んぼであるためには、
農薬などの有害な物質があるかどうかという「化学的な環境」に加え、
行き来が可能かどうか、水場はあるかといったような
「物理的な環境」も整っていることが大切で、様々な例があります。
ここでは九重ふるさと自然学校が自然共生型田んぼにおいて大切だと考えている
物理的な環境に対する取り組みをご紹介します。

●コンクリートの壁には生きものが登れる綱を設置
 コンクリートの壁を登ることができない生きものにとって
 コンクリートの水路に落ちることは死活問題です。
 しかし、水路のところどころに生きものがよじ登るための綱などを
 付けてやることで、コンクリートの水路の使用(による農業の効率化)と
 生きものの移動の困難さの解消をある程度両立することができます。

生きものの非常階段

●中干し延期
 中干しはお米の生産性を上げるために重要な工程であり、
 省くわけにはいきません。
 そこで中干しを行う時期を生きものに合わせることで、
 中干しの実施と生きもののすみやすさの両立を狙います。
 具体的にはオタマジャクシやヤゴの多くがカエルやトンボに
 なったことを確認してから中干しを行う「中干し延期」の取り組みです。

ここまで成長すればもう大丈夫

 オタマジャクシの様子などを見守るというひと手間はかかりますが、
 こうすることで多くのオタマジャクシやヤゴが田んぼで成長することが
 できるようになります。

●ビオトープの整備
 現代の田んぼでは稲刈りの時などに完全に水が抜かれ、
 乾田化することは避けられません。
 乾田化は水環境を必要とする生きものにとって致命的ではありますが、
 田んぼの一部や隣接地に常に水がある状態を保つビオトープ
 (生きものの生息場所)を整備することで乾田化の影響を
 やわらげることができます。

田んぼ(左)とビオトープ(右)

 田んぼとビオトープが水路でつながっていれば、
 田んぼから水が抜かれても生きものはビオトープに避難することができます。

●魚道の整備
 水路と田んぼの間に高低差があっても、
 田んぼと水路をつなぐ魚道をつけてやれば、魚は魚道をさかのぼって
 田んぼに入ることができるようになります。
 水路が区画分けされており、水が階段状に流れ落ちていることがポイントです。

手作りの魚道

 魚道は市販されていたり、本格的な工事で造ったりすることもできますが、
 九重ふるさと自然学校では板とビニールで手作りしています。
 これでも十分機能することがわかりました。

●冬期湛水(とうきたんすい)
 冬期湛水とはお米を栽培していない冬の間も田んぼに水を張る農法です。
 冬期湛水には「イトミミズなどの微生物が活性化し、
 彼らが土を耕してくれる」、「水鳥が飛来し、彼らが種子を食べることにより
 雑草が抑制されると同時に糞が肥料になる」などの効果があると
 言われています。
 また、通常は冬期には水がないはずの田んぼが水で満たされるため、
 水環境を必要とする生きものがすみやすくなることは言うまでもありません。

冬期湛水実施中の田んぼ

 冬は水路に水が流せないなど、水利用の関係で冬期湛水の実施は
 ハードルが高くなる場合も多いですが、冬期湛水を適切に実施できれば、
 春には田んぼを耕すことなく、そのまま田植えを行う不耕起栽培も可能です。
 不耕起栽培まで実現できれば、田植え前に「カエルの卵もろとも田んぼを耕す」
 などということもなくなるので、生きものにとってはさらによさそうですね。

九重ふるさと自然学校では以上のような取り組みで自然共生型田んぼを
実現しようとしていますが、田んぼの置かれた条件によって
できることもあればできないこともあります。
また、その田んぼに暮らしている生きものの種類によっても
効果的な方法は変わってきます。しかし、物理的な環境の改善の基本は
「可能な限り水環境を確保すること」と「生きものがアクセスしやすい田んぼ」に
することです。
これらの点に配慮した田んぼであればすべてが自然共生型田んぼであると
考えています。興味のある方はぜひ簡単なこと、できる範囲のことで
始めてみてください。田んぼに生きものが帰ってきてくれるとかつての
ふるさとが戻ってきたようでうれしく感じることと思います。