NPO基盤強化助成報告会
NPO基盤強化助成は、人件費などの財政基盤を強化し、安定的に活動を継続できるような自主事業の構築・確立の支援を原則3年間行う制度です。 NPO基盤強化助成では、「活動団体が一堂に会し、成功事例・失敗事例を共有し、今後の事業に活かす」ことを目的に、助成先団体が前年度の活動報告を行う報告会を2008年より毎年5月に開催しています。
2022年5月19日(木)に、2019~2020年度のNPO自立強化助成、2021~2022年度のNPO基盤強化助成の報告会を開催しました。
今回は、3年間の助成を終了した2団体と助成継続の7団体による報告、2022年度NPO基盤強化助成先4団体の発表をオンラインにて行いました。セブン‐イレブン記念財団の理事長、理事、評議員、社会貢献推進委員も聴講し、助成先団体の活動内容と積み上げてこられた努力や得られた成果を知ることで、改めて助成金(セブン‐イレブン店頭募金や寄付金)の使われ方を学ぶ良い機会になりました。
審査員(敬称略)
審査員長
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成蹊大学 名誉教授
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廣野 良吉
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審査員
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環境省 大臣官房総合政策課 民間活動支援室 民間活動支援企画官
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浅原 堅祐 (けんすけ)
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審査員
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IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者
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川北 秀人
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審査員
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東京農業大学 地域環境科学部 教授
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入江 彰昭 (てるあき)
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発表団体
都道府県 | 団体名 | 事業名 |
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岐阜県
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NPO法人 泉京・垂井
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SDGsと地域をつなぐ「非営利コンサルタント事業」基盤強化
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三重県
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NPO法人 大杉谷自然学校
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野外体験保育の推進
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- 審査員コメント
- 今後SDGs専門として事業を広げていくと、知識のない現地の人材を育成するという踏み込みが求められる。そこで、団体・事業者の垣根を越えて現場の人材同士を結びつけるネットワーク形成が重要になってくるのではないか。
- コンサルティング機能が地域にあるのは良いことだ。SDGsを自分事としてとらえて行動できる自治体や事業者は少ない。これから行動を起こしたい人たちが何をすればいいか尋ねられる先として、その役割に期待したい。
- コンサルティング事業は樹木と同じ。成長につれて幹が太くなる一方、枝葉が増え、太陽が当たる部分とそうでない部分が出てくる。太陽が当たらない部分の枝葉はだんだんと枯れていってしまう。大局を見て、社会・事業内容・理念の変化を感じ取りながら続けることが重要だ。
- 団体コメント
- 今後社会が変容していく中で、SDGs自体が注目されなくなるということもあるだろう。しかし、SDGsの中に盛り込まれた理念は2030年を超えても社会に必要とされ続けていく。社会にその理念を浸透させる一助となるような活動を続けていきたい。
- 審査員コメント
- 日本社会そのものの問題が森のようちえんや自然学校の中でも課題となっている。保育士たちは自然の中で起こる様々な危険に注意を払わなければならない。もちろん子供たちの安全を守るためだが、それと同等に、子供たちの保護者がリスクやケガに対して非常に神経質になっているからだ。それは結果的に子供たちの遊び心や行動・気持ちを押さえつけてしまっているのではないだろうか。頭ごなしに”あれはだめ、これはだめ”と制限するばかりでは、子供にとって不親切だ。どんな理由でやってはいけないことなのかをきちんと説明し、安全を確保しつつも子供の自主性を重んじる指導をしてもらいたい。今後は、子供たちが溌溂(はつらつ)と遊び心を発揮できる社会環境を大人が作っていくことが重要になってくる。これからも子供たちの自然な遊び心を大切にして、活動していってほしい。
- 既存の保育園の基盤にどのように森のようちえんの要素を取り込めるのか、どのように指導者を育成すればよいかというノウハウを蓄積できたことが大きな成果の一つだ。そのノウハウは他の地域、他の保育園でも展開できる上、子育てをしているすべての大人に有用なものになっているはずだ。これを保育園に留まらず地域の大人たちに伝えていくことで、自然教育の重要性が地域社会に伝わっていくのではないか。
- 団体コメント
- 森のようちえんの本質的に重要な点の一つは、子供が人間関係の作り方を学べる場であることだと捉えている。それは助成前にイベント型森のようちえんのみを実施していた頃には気付けなかった。
- この活動は、自治体、保育士をはじめ、保育事業にかかわるアクターが野外体験活動の重要性を理解していることが極めて大切だ。たくさんの偶発的な発見が得られる自然教育の重要性が社会に伝わり、子供たちが自然の中でのびのびと学べる社会環境へと変わっていくよう、情報発信を強化していきたい。
都道府県
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団体名
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活動
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福島県
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NPO法人 ザ・ピープル
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衣と食の無駄をなくすフード&クロージングバンク推進事業
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都道府県
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団体名
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活動
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東京都 |
NPO法人 銀座ミツバチプロジェクト |
持続可能な循環型社会・地域共生の構築 |
東京都 |
NPO法人 くにたち 農園の会 |
都市農地・里山環境を活用した野外放課後児童クラブモデル事業 |
大阪府 |
NPO法人 大阪湾沿岸域環境創造研究センター |
漁業と福祉との連携(漁福連携)による地域自然・文化の継承 |
徳島県 |
NPO法人 吉野川に生きる会 |
休耕地や荒れ地にバイオ桐を植え脱炭素社会の実現 |
大分県 |
NPO法人 笑顔 |
里山自然を生かし野草薬草の再生と廃校整備による野草事業の創設 |
鹿児島県 |
NPO法人 喜界島サンゴ礁科学研究所 |
サンゴ礁総合科学を通じた次世代国際リーダー育成拠点の形成 |
都道府県
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団体名
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活動
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東京都
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NPO法人 森のようちえん全国ネットワーク連盟
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自然の中で育む環境教育、保育指導者養成活動
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北海道
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NPO法人 いぶり自然学校
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森のようちえんと、生きづらさを感じている若者による里山畜養
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広島県
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認定NPO法人 西中国山地自然史研究会
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現代版の「里山コモンズ」を構築して、放棄される里山を保全する
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岐阜県
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NPO法人 活エネルギーアカデミー
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森林保全・間伐材の利活用と定期物流システム・地域通貨の発行等
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新規助成先4団体には目録を贈呈しました。




審査員長総評
今年も各発表者の明白かつ意欲に富んだご報告から多くを学びました。
発表を聞く中で感じたことを3点に絞って申し上げたいと思います。
一点目は、環境保全は地域で行うことが最も重要だということです。各地域は多様性に富んでおり、人口動態や経済活動など、様々に状況が異なります。多様性に富んでいるということは、国が一つの基準を作り、これで行きなさいと言っても無理が生じてしまうということです。国はあくまでも各地域社会に共通な最低基準だけを設け、地域の特性に合わせてカスタマイズできる遊びを作ることが大切です。そして地域の特性を最大限に活かして、それぞれの環境保全活動に繋げていただきたいと思います。
二点目は、環境の持続性と経済の持続性はコインの表裏であるということです。今回の発表も、事業化することで持続可能な環境保全活動を実現させるというのが共通のテーマでした。事業化がもたらす影響は組織の基盤整備だけに留まりません。国による法制化、制度化、そして国、地方自治体による予算化に繋がっていき、一体となって活動を盛り上げ、より大きなインパクトをもたらします。仮に地域の特性を活かしたとしても、この三者の複合的な連携がなければ持続可能な活動とはなりません。
三点目は、地域の文化の特性もまた、併せて重要になってくるということです。環境の持続性と経済社会の持続性に加えて、各地域の文化や伝統の持続性を考えた包括的な活動が求められています。日本の地域社会の多様性を活かし、インクルーシブに支援するのが当財団の意義であり、また、必要とされている役割なのだとつくづく感じました。
今日は皆様のご報告から私共も新鮮な刺激を受けて大いに勉強になりました。ありがとうございました。
最終審査会審査員長 廣野 良吉 (成蹊大学 名誉教授)